『ふふ、日が経つのって早いですね。ねぇ、久々知さん?』
「名前、目が死んでる。」
兵助の言葉に、知ってる。と無造作に返して目の前に聳え立つ立海大付属中学校を見上げる。中々大きい。けれど全寮制で、校舎にだだっ広い校庭、寮など、様々な建物が建ててある大川学園の方が何だか威圧感があると思う。
「で、何。職員室に行けばいい訳?」
「さぁ…そうなんじゃないか?」
「でも僕等、今来たばかりだし…皆職員室の場所なんて知らないよね?」
『知らないね。』
「同じく。」
「いや、こういうのって前日くらいに打ち合わせとかするだろ!職員室の場所以前にそこに疑問持とうぜ!?てか俺ら学園長に立海に行ってこいって言われただけで何も目的とか聞いてねぇじゃねぇか!」
『うるさいなぁ、それくらい理解してるよ。』
鬱陶しい、と耳を手で塞いでハチをじとーってした目で見つめてみる。相変わらずハチは元気だ。
「取りあえず中に入ろう。廊下を歩いていれば誰かしら出くわすだろ。」
グダグダと続いていく会話を兵助が終わらせた。そうだねー。と非常にダルそうな勘ちゃんが言うと立ち止まっていた脚を昇降口へと動かした。
持参してきた上履きを履き、廊下を歩き回る。
「結構綺麗だな。」
何か特別可笑しいこともなく、普通に綺麗だなー。としか感想が出てこない校舎内。大川と違うところといえばやはり人数かな?廊下の幅は広い。時折すれ違う生徒達に何だコイツら、みたいな目で見られたりやたら顔の良い男達に頬を染める女子生徒の私を見る嫉妬に似た視線に気まずさを感じながら職員室を探す。
誰かに聞いた方が早いんだろうけど、いかせん気まずい。
「あ、あれじゃない?職員室。」
雷蔵が指差す先は、確かに職員室とゴシック体で書かれたプレートがぶら下がっていた。