夫婦になった兄弟 | ナノ


▼ 51 試み ※

「兄ちゃん? 入っていいー?」
「おっ? いつでも入れ優太。こっちこっち」

部屋の扉を開けると、机に向かっていた兄が振り向き、嬉しそうに手招きした。
もう夜十時を過ぎているが、復学を控え勉強に勤しむ兄にエナジードリンクを渡す。

「差し入れしてくれるなんて優しいなぁ。こんなの飲んだら俺寝れなくなるぞ。あ、もしかしてそれが狙い?」
「はは。何意味不明なこと言ってんだよ兄ちゃん。俺は応援のつもりで……ってなんで鍵閉めてんだよっ」
「ふっふっふ。罠にかかったな優太。お前を俺の部屋におびき寄せたぜ」

悪い笑みで兄はベッドに座った俺の隣にどかっと腰を下ろし、長い腕を巻きつけてきた。
こんな図体のでかい屈強な男に捕まったら逃げられない。

「んっ……ん、ぅ…」

速攻でキスをして舌を入れてくる。口をこじ開けられて何度も吸われ、兄の腕の中で脱力する。

「にいちゃ……勉強は…?」
「勉強にならねえだろこんなの。優太が来ちゃったら」
「ごめん……」
「ははっ。嘘だよ。俺頭いいから余裕だしーーでもこっちの余裕はねえわ」

息が上がった様子で唇を求めてきて、それからしばらくずっとキスをされた。
俺は慌てるものの、段々と嬉しさを隠しきれないでいた。
腕を首に回すと、驚いて瞬きする兄に見つめられ、また口を塞がれて半分体を押し倒された。

兄ちゃん、またするのかな。
この前、元の世界に帰ってきてから初めてのセックスで、あの刻印が浮き出てしまった。
俺達はまさかケージャの念のようなものかと思い、一瞬緊張が走った。

だから兄は人格交代のトラウマにより、俺とこうするのも怖くなったのではと思ったのだ。でもそんな様子はなく、密かに俺は安心していた。

兄の体の行方はまだちょっと心配だが、離れるのはもう嫌だ。
この気持ちがどこから来るのか完全には分かってなかったものの、俺は兄が好きな思いに最近さらに占められていた。

「えっちなこと、してるからかなぁ……」
「え? なに?」

つい独り言をこぼすと、上の服を脱がされていて、なぜか足の間に兄の顔があった。

「ちょっ、何やろうとしてんだよ! ばか兄ぃ!」
「だめ? よくねえか口でするぐらい。もう兄ちゃん我慢できねえ。……はいっ、見せてね優太くん」

俺のをパンツごと脱がしてさらけ出し、「可愛すぎ」とか何とか言いながら指で優しく撫でてくる。
部屋も明るいし恥ずかしさに叫ぼうとするが今は夜で音もあまり出せない。

「やっ、やだあ、やめて兄ちゃん、ちんこ舐めないでっ」
「どーしよっかなぁ、いや無理、ぜってー舐めるわ今日は」

真面目な顔を作り俺のを大きな口にくわえてしまった。
ぬるっと温かい口内で、兄が舌をやらしくからませてくる。
どうしてこんなことが出来るのか、混乱しながらも俺は腹をびくびくさせて感じてしまった。

「んっんんっ、だめっ、や、やぁ」

抵抗しても太ももの付け根を手でがっちりと押さえられ、兄がしゃぶって頭を上下に動かす。
兄ちゃんにされているということが、全身羞恥にまみれておかしくなりそうだった。

「にいちゃん、出ちゃうよ、もう離して、お願い…っ」
「……んっ? 出す? いいよ、口に出して優太。全部飲んでやる」

にっと上機嫌に笑って頭のおかしい事を普通に言う。
でも気持ち良すぎて俺は本能に従うしかなかった。

「あ、ああ、んっ、い、イキそう、イク、イク」

腰を揺らして下半身裸のままベッドに倒れこみそうになる。
兄が腰を後ろから抱きかかえ、ごくごくと喉を鳴らして俺のペニスから搾り取ってしまった。

「はあ……優太の飲んじゃった。最高、これ」

色めいた瞳の瞬きに目が奪われる。放心状態だった俺だが、むくりと起き上がって兄を見下ろした。

「兄ちゃん……なんで男のちんこしゃぶったあげく飲めるんだよ……」
「……お前な、兄貴が幸福に浸ってる時に、もう少しムードのある言い方をーーっつうかお前のだからに決まってんだろ。優太のだから愛おしいんだよ」

笑う兄が頬にちゅっとキスをする。
ここだけの話、島にいる時もやられたが、あれはケージャだったし勿論俺は秘密にしてきた。
でも兄ちゃんまで、ここに帰ってきてからもそういう事をするということは、本当に俺のこと好きなのかな。

きっと兄は、俺なんかよりものすごい経験があるんだろうけど。
自分は何かと比べようがないから頭がこんがらがった。

ケージャのことを思い返す。
あの時、俺はあの兄の願いを突っぱねてしまった。それも、相当強く。

ガキだったのもあると思うが、何気に今も引っかかっていることだった。
あの後しばらくしてケージャは消えてしまうと知ったからだ。
そのぐらいのこと、やってあげればよかったなと思う一方で、いや兄ちゃんに悪いしと思う気持ち。

でも今は、一番近くにある温もりに、もっともっと近づきたい思いがした。
……だから、たぶん魔が差した。

「俺がしたら、……嬉しい?」

尋ねると一瞬兄は何を言ってるのか分からなかったようで、俺を二度見して驚愕の面持ちで停止した。

「え……? 何を? マジで?」

さすがに自分でも何を言ってるのかと思い、頭をかく。
いつも余裕しゃくしゃくの兄が顔を変に紅潮させたため、意図が伝わったようだ。

別にケージャへの罪滅ぼしというわけじゃない。
兄ちゃんを喜ばせたかった。もしかしたら、不安が残っているであろう兄を安心させたかったのかもしれない。

「えっと……全部出来ないかもしれないけど、その、ちょっとだけ……舐めるぐらいなら……」
「そっ……いいの? 優太、その可愛いお口にお兄ちゃんのちんぽ突っ込んでもいいの? 嫌いにならねえ?」
「馬鹿野郎っ、もっと言い方考えろよっ」

吠えるとすぐに抱きしめられた。
どうやら喜んでいるようだ。そんなに嬉しいのか、フェラって。

自分で言い出したくせに後に引けない空気になってきて、俺は一世一代の勇気と根性を要した。

ベッドの端に足を大きく開いて座る兄の前に、膝をついてしゃがむ。
現れた大きなペニスを前にやっぱり怯んだ。

「うっ……大きいよ……」

まじまじと見て触るとビクっと大げさに動いてくる。
本当に兄弟なのかと言うぐらい、長さも太さも立派なペニスだ。

これは女にモテるんだろうなぁ……そんなことをどの意味の嫉妬なのかよく分からないまま考えてると、段々と体が熱くなってきた。

「はっ……ん……っ」

舌を出して亀頭の部分を舐める。思ったより平気で、舐めているうちに夢中になってきて、俺は一生懸命唇を当てたりちゅっ、ちゅっと吸ったりした。

「ああっ……優太……? お前、ちょっと、うまくない? なんで?」

腹筋を出し悶えながら兄が俺にちらりと疑いの目を向ける。
かなり心外だ。集中力も途切れる。

「くっ、……ああぁ……優太ぁ……口えろい……」

兄が赤くなった顔で制御できない風なのは面白い。
俺はただ先端とか筋とか舐めてるだけなのだが、もう参ってる様子だ。

「ははっ。兄ちゃん、顔赤いよ。俺初めてなのに、おかしいなぁ」
「マジ? ほんとに初めて? あいつにやってねえの?」
「やってねえよ!」

かっとなって吠えると頭にふんわり手のひらが乗り、そっと押さえられた。

「んむっ」
「ああ、嬉しすぎるぞ……っ! あれ、優太くん。お口が止まってるね。もっとお兄ちゃんの咥えて」

興奮気味の兄に命令口調で言われ、ドキッと鼓動が跳ねる。
仕方なく続けると、兄が先を促してきた。「口あーんして」とか「舌で兄ちゃんの気持ちよくして」とか注文が増えてきたため、俺は腰をもじもじさせながら躊躇する。

「やだ……出来ないよ……兄ちゃんの大きい」
「じゃあ、俺が手伝ってあげような。ほら、口開いて…優太」

やけに優しく言い、そろりと口の中に指を突っ込んできた。二本の指が俺の舌を触り、上下にこすってくる。
どうしてこんなエロいことをするんだろう、この男は。

一瞬めまいがしたが、体の熱もぼわっと燃え上がった。

「ん、んん」
「おぉ〜上手だぞぉ。優太ぁ、このまま俺のちんぽ、吸ってみる?」

耳を疑う言葉が降り注ぎ、再び現れたペニスに誘導された。
もうしょうがないという気持ちでぱくりと咥える。本当にでかくて口がいっぱいになってしまった。

「んっ、んむ、っふ、う」

一生懸命兄のをしゃぶりながら出来るだけ動かそうとする。
入っちゃったのだから気持ちよくなってほしい。覚悟を決めて兄の真似をするように顔全体を動かした。

すると兄の様子が、だんだん変化してきた。

「あー……まっ、優太……ああッ、それ、やべえって……っ」

声がかすれ、筋肉の張った胸を上下させ、男らしい腹筋をしならせている。
俺はそんな兄の色っぽい姿を見て、ドキドキしてさらに興奮した。

「にいちゃん、気持ちいい?」
「……ええっ? あぁ、見て分かんねえか優太、……くっ……ああぁ……お前の口、よすぎるっ…」

息をつきながら兄が俺の頭を両手で持った。弱い力ではあるが固定したままゆっくり腰を揺らされる。

「ん、んんっ」

馬鹿兄貴っ!と内心叫んでいたが口の中を大きなものでぐちゅぐちゅやられると、段々気持ちが変になってくる。中を突かれてるわけじゃないのに、目の焦点が合わなくなっていき、兄のペニスに犯されてる気分になってくる。

「んう、う、むっ、ふぁ……ん、ま、待って、にい……っ」

一瞬口から抜け出たが、また自然に挿入されて口の中をいっぱいにされる。
どうしよう。このままじゃ、出されてしまうかもしれない。
体の奥とは違う興奮にも似たものが沸き上ってきて、全身がゾクゾクする。

「優太、口の中でイっていい? もう我慢できねえ、全部出したい、お前ん中っ」

激しく息をつき腰を揺らす興奮状態の兄は止められず、俺はようやく頷いた。
もういいや。兄ちゃんの、出されても。俺、兄ちゃんのなら……。

さっき達したのに、下着の中がじわっとしながら、俺は口内で兄の射精を受け止めた。
だが驚愕が襲う。想像以上の量の液体がどぴゅぅっっっと出され、俺は微動だにできなくなってしまった。

「あっ、あ、ああ〜〜〜、やべえ……ッ、イクっ、まだ出る…ッ」

腰を最後まで振って存分に出してくる兄の精液は、瞬く間に俺を満たす。

「……はあ……はあ……優太……あっ!」

兄はのろりと後ろに倒れそうだった背を起こし、俺に手を伸ばした。
異変に気付いたのか、すぐに近くのティッシュを取り出して俺の口の前に出す。

「すまん! 興奮しすぎて出過ぎた、お前があまりにも可愛くて……!! ほら出せ、っぺって!」

我に返ったのか必死に言ってくるが、俺は涙目になりながら兄を見つめた。
そして出すことはせず飲み込んだ。こんなに凄いことをしたのは人生で初めてのことかもしれないと、大げさじゃなく考える。

「え、ええッ。何飲んでんのお前、いいの兄ちゃんの!?」
「…………うん。いいよ。兄ちゃんのなら、俺……。兄ちゃんも、飲んでくれたし……」

正直本気でクソまずかったが、達成感はすごい。
俺はまだガキだから、これで兄への愛が証明できた気もした。

「うっ……兄ちゃん……俺すごい? これで分かった? 俺が兄ちゃんのこと、一番好きで大事だってこと……」
「−−優太あぁッッッ」

今までで一番強く抱きしめられる。
俺たちは兄弟で舐め合い、一体何をやっているのかと思ったが、体の芯から満たされていったのは本当だった。

両頬を手で覆われてキラキラした褐色の瞳で見つめられ、すぐさま唇を重ねられる。
ねっとりしたキスを何度も与えられ、兄からの愛情も受け取った気がした。

「優太。お前すげえ。俺もお前のこと一番愛してるぞ。こんなちんぽしゃぶり合った後で言っていいのか分からんが……この気持ちは唯一のものだ。ああ……どうすりゃもっと伝わるんだ? 分かんねえ……優太ぁ……好き。好きだぜ!!」
「うんっ。俺も……兄ちゃん、あ、……あいしてる」

かなり聞こえないような小声で伝えた。
だが兄は当然聞き取り、「おっしゃー!!」と爆発しそうなほど有頂天になっていた。

俺はやっとこの言葉を兄ちゃんに言えたなぁ、と感慨深く感じていた。
やっぱり、触れ合ったりして得られる温もりは、俺達の思いをより強くするのかもしれない。




「兄ちゃん、大丈夫? 眠いの」
「……おう。なんか体の力が……抜けちまった。……もっとしてえのに」

俺に申し訳なさそうに言い、密着して抱き寄せてくる。
俺が口でした後、それほど刺激が強かったのか、兄はだらんと寝そべり休息していた。

少し心配になったけど、珍しく抱きつかれ甘えられてるみたいで、ちょっと嬉しくなって髪を撫でる。

「はは。なんかかわいいー」
「そう? …やべ、弟に言われるの萌える。もっと言って」
「なんか元気そうだなぁ。じゃあそろそろ寝よっか。俺ここで寝ても平気かな?」
「当たり前だろ。どこにも行くなよ」

眠そうな兄を見ているとなんだか既視感が漂う。
だが俺よりもそう感じていたのは、兄のほうだったらしい。

一言二言お喋りをして、こんな事を言ってきた。

「優太……もし俺が変わってもさ……」
「えっ?」
「お前は気にしたりすんなよ。それだけが、俺……嫌なんだわ」

話の核心をいきなり突かれて、俺は目が冴えてきた。
兄は切なさが混じったような目つきだったが、ほっぺたを指の腹で撫でる仕草が優しい。

「だからな、その……お前にはいつも笑っててほしい。……そのためだったら、俺だって、少しぐらい……忍耐を……」

言っている途中で兄はすうっと眠ってしまった。

「兄ちゃん? ちょっと、おい。もう……」

寝息が聞こえてきて妙な感覚に陥る。
今、兄の気持ちを教えてくれたけど……やっぱり人格のことを気にしているみたいだ。
それに俺のことも考えてくれて。

「優しいな、兄ちゃん。なんか……好き」

聞こえないのに呟いて、兄のおでこにキスをした。
起きない寝顔が愛しく感じてくる。

大丈夫だよ。俺はどっちになったって、一緒にいるし、兄ちゃんが大好きなんだから。島にいた時みたいに。……いや、それ以上にもっと。

そうこっそり伝えたあと、俺も次第に目を閉じた。





そして朝になる。
その日は世間で言う休日で、俺も兄も一応用事があった。
母は仕事だったが、父は朝早く起きていた。

突然兄の部屋の扉がコンコンと叩かれ、俺はばちっと目を覚ます。

「啓司? 起きてるのか?」

やばい。恐れていた事が起こったか。
兄は昨日知らない内にトイレにでも行ったのか、もう鍵はかかってなかったが、父は勝手にドアを開けたりしない人だ。

息をひそめながら布団の中でぐいぐい兄の腕を押すと、あろうことか奴は「ん〜優太……痛気持ちいい…」とか言い寝ぼけていた。

愛してるはずの兄なのに一瞬殺意がわく。
同時に人格が兄のままであることには安心した。

「おい、啓司。君が朝練一緒にやろうって言ったんだろう? というか、優太もいるのかい?」
「あー……いるよ、父ちゃん……入っていいよ」
「……ちょ、ばかっ」

腕をつねったら笑ってふざける兄に、父も笑い声をこぼす。
そっと扉が開けられ、俺は速攻起きたがベッドに座ってるところを見られてしまった。

「おはよう、二人とも。啓司の口調が昔のままだったから寝ぼけてるんだとは思ったけど……優太もここで寝てたんだね?」
「そ、そそそそうなんだ。ええと、昨日遅くまで兄ちゃんと話しててーー」
「……んー、そうそう。……俺が勉強教えてやっててさ、こいつ途中で寝ちゃって、ベッドに寝かせてやったんだ。可愛くない?」

それはほぼあんただろと思ったが、父はまるで変に思っておらず「可愛い」と頷かれたので黙るしかなかった。
一番年下の俺は、昔から大人達の前では甘やかし&からかわれ対象なのだ。

「仲がいいな、啓司も優太も。僕がちょっと羨ましくなるぐらいにね。ーーじゃあ、皆で朝御飯を食べようか。その後に鍛練の開始だよ、啓司」
「よしっ。そうしよう親父。優太は今日何すんの? 俺の格好いい練習姿見る?」

上機嫌に服を着替えながら尋ねてくる。兄と父はきっと以前のように、格闘や剣術の訓練をするのだろう。
それにしても昨日あんなことをしたのに、普通な様子の兄の心臓がすごいと思う。

「うん。ちょっと見ようかなぁ。でもあとで友達来るんだ。一緒に宿題やろうと思って」
「へえ〜。なるほど。それは兄ちゃんも楽しみだな」

なんで兄ちゃんもなんだよと突っ込みたくなったが、瞳をギラつかせて俺の周囲もチェックする気満々の様子だった。

なんだかそんな所は、島での長の姿を思い出したのだった。



prev / list / next


back to top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -