夫婦になった兄弟 | ナノ


▼ 50 再び ※

翌週になると、俺はさっそく父の所属する発掘調査会社の研究室に向かった。職員が減った夜の時間帯に訪れ、長い廊下を歩く父についていく。

「ごめんね、優太。こんなに夜遅くなってしまって」
「ううん、大丈夫だよ。お父さんの職場来るの初めてだからワクワクするなー」
「そうかい? 僕の部屋はあまり綺麗じゃないから恥ずかしいんだが」

謙遜する父の個人オフィスに行くと確かに思ったより乱雑に本や書類、写真などが至るところに積まれていた。
父は普段のんびりした性格だが、研究となると過集中しがちでご飯を食べるのも忘れてしまうらしい。

兄は今日久しぶりに昔の仲間たちと会っていて、お帰りパーティーを開いてもらってるそうだ。
碧の石を調べるにあたり、ケージャからの贈り物だしあまりいい気はしないかと思った俺は、なんとなく黙ってここに来ていた。 

オフィスから調査表を持ち二人で分析室へ向かう。
普段着の俺は首から一応ゲスト用のカードを下げていたが、建物内は薄暗くほとんど人を見ない。

石の調査も父が個人的に行うもので、外部には漏らさないと言ってくれたため有りがたかった。

「うっわぁ、すごい色んな装置があるね。お父さん本当に自分で出来るの?」
「うん。さっそく宝石顕微鏡で見てみようか。優太にもすぐに代わるよ」

父は丁寧に俺からブツを受け取り、宝石部分を装置に乗せると慎重に観察を始めた。

「大きさも十分で3カラット以上あって、中に濁りもない。とても綺麗だ。……ん? なんだこれは……。やっぱり、こんな光彩は見たことがないな。ほら、君も覗いてごらん」

感嘆の声に引き寄せられ俺もレンズ越しに覗いた。

「おお! なんかよく分かんないけどいろんな色の光がキラキラしてる。細かいね〜」

まったく詳しくない素人の自分にも特別なものだというオーラを感じた。父によれば見た目は青いサファイアに似ているらしいのだが。

俺達はそれからX線の分析装置などを使い、硬度や細かい成分などを調べた。
だが次第に父が結果にのめり込み、興奮状態に陥っていく。

「信じられない。何が起こっているんだ? 硬度はダイヤモンド以上の最高レベルだ。成分には火山性物質が含まれている様だが、とても複雑な構造になっている。産地も出てこないし、内部的にはまったくサファイアの系統ではない。一体これはーー」

ぶつぶつと独り言を言い俺は若干置いてきぼりになる。
でも父はこれで俺達の異世界転移を確信したようだった。

一通りの検査が終わり、俺はひとまず腕にはめようと石に触れた。
すると突然、一瞬だけ青い光がぼうっと光った。

見逃さなかった父が眼鏡の中の瞳を大きく見張る。

「優太、今光らなかったか?」
「う、うん。まさか壊れた?」

心配になった俺達はまた気を付けて石をチェックする。
しかしどこにも異常はなく、表面にも傷などはなかった。

光ったのは初めて見た……いや、あの時、ケージャが俺に贈ってくれた時にもっとまばゆい光を放ったっけ。

父にはこの石の効能がどうだったとか、口が裂けても言えないため、俺はお茶を濁してひとまず調査を終えようと言った。

帰り道、一緒に車に乗って帰宅をする。
気になってちらちらと腕輪を確認したが、何も起こらなかった。

もしかしてあれは、ケージャの最後の挨拶みたいなものだったのかな。はは。

「優太。今日はありがとう。僕も研究者として、碧の島にぜひ行ってみたくなったよ。異世界への門はもう開かれないんだろうか」
「……ええっ! ちょ、何言っちゃってるのお父さん。気持ちは分かるけどもう無理だよ。俺達が召喚されたのも運命の者達だったからなわけでーー」
「ああ。そうだよね……。それに二人はたくさん大変なことがあったと思うし、気安くこんな事を言うべきじゃないって分かってるんだ。ただ……」

いやそれは大丈夫だ。今となっては、全部良い思い出だからと伝えた。
ラドさんじゃないけど、冒険好きで少年のような熱い心をもつ父は、きっと未知の島に惹かれているのだろう。

「そうだなぁ、お父さんを特に先生に会わせたいよ。あっちは医者だけど学者同士話が合うかも。異国の人で結構天然というか、基本失礼なんだけどね。俺も兄ちゃんもすごい世話になってさぁ」
「……えっ? お医者さんかい? 二人とも、怪我とかしていたのか、大丈夫だったのか?」

途端に心配して助手席を振り向く父を見て口を閉じた。
あぶない、医者に何度も世話になったのは産科の内診と二重人格のことがあったからだ。

俺は「全然、ピンピンしてたよ。メンタル面でちょっとね」と取り繕った。
父は納得してくれたがやはり少し気を病ませてしまったようだ。

本当はケージャの存在も教えたい気持ちはある。たしかに存在した一人の長として。俺の大事なもう一人の兄として。

でも内容的に大丈夫なのか分からないし、何より当事者である兄の思いを尊重したかった。そんな風にぼんやり考えながら、俺は車に揺られていた。





家に帰ると、母が迎えてくれた。もう夜も遅いからと俺達はそれぞれの寝室に向かう。
玄関に兄の靴はなく、まだ仲間と楽しんでいるのだろう。

嬉しいけれど少し寂しい。今は夏休みで二人とも学校は始まっていないけど、親と住んでいる為まだ深い関係にはなってなかった。

そもそも、またそういうことが出来るんだろうか?
一人で悶々としながらベッドの布団に潜り込んだ。

少し眠ってしまってからだろうか。廊下から物音がし、俺は静かに目を覚ます。するとドアがそーっと開けられ、外から大柄な人影が入ってきた。

「……うぅ……誰?」
「誰って、俺しかいないだろ優太。いたらぶっとばす」

物騒なことを小声で言いベッド脇に来た兄を見上げると、速攻服を首にくぐらせガッチリした上半身が露になった。
俺は驚いたが兄はそのままズボンも脱ぎ捨て下着一枚になり、同じベッドに潜り込んできた。

「うあぁ、なにやってんだよ兄ちゃん、まずいって皆いるのに…!」
「しーっ。大丈夫だよもう寝てんだろ。部屋すげえ遠いから聞こえないって」

強引に俺のことを抱きしめ、「はぁー最高」とか言って温もりを噛み締めている。
文句は言ったが本当はどきどきして嬉しかった。

「……キスしていい? 優太」
「えっ……う、うん」

頷くと顔が近づいてきて唇が重なった。頭の後ろに大きな手が這わさり、熱く求めるような口づけになってきてぼうっとする。

「は、はぁ…っ」

息継ぎをしてまた唇を塞がれる。反対の手はいつの間にか俺の腰を持ってきて、脇腹から胸のほうに滑ってくる。

乳首をいじられて胸が敏感になっていると、兄の上体が下りていき、俺は寝間着のシャツをたくしあげられて直接舐められてしまった。

「あ、あぁ、兄ちゃん、そこだめ」
「……んー……おいしい、お前のおっぱい…」

揉んでは吸ってを繰り返し、卑猥なことを言ってくる。
酔っぱらってるのだろうか。かなり性急な動きだ。

「いや、飲んでないよ。今日こそお前と一緒に寝たかったから。…まあ、寝るかはわかんねーけど」

小さい明かりの下、色っぽく笑う表情に目を奪われる。
俺も色々なことが我慢できなくなり、思わずぎゅっと抱きついた。

「俺もちょっと寂しかった。もっとして、兄ちゃん」

細々と頼むと兄が驚きに見つめてくる。
その顔は珍しくさあっと赤らみ、笑みが抑えきれないように俺の頭を撫でた。

「お、おう。じゃあもっとしよう。続きな。……ええっと、一秒待て。取ってくるから」

兄は素早く姿を消し向かいの自室に戻る。
すぐに戻ってきたかと思うと、手にはあるものを持っていた。

「なにこれ? あっ、ローションってやつ? ゴムもある! 授業以外で見たの初めてだよ〜」

準備しましたという雰囲気の商品を見てはしゃぐと、兄はごくりと喉を鳴らした。なんだか緊張したような面持ちだ。もう島では何度もしてたのに。

「ほんとにいいの? 優太。兄ちゃんとえっちなことしちゃっても。もう戻れねえぞ? 一生兄ちゃんに捕まっちゃうんだぞ」
「はは。いいよ。俺と一緒にいてよ兄ちゃん。離さないで…」

この時の俺はやけに素直だった。真剣に考えて聞いてくる兄がやたらと愛しく感じた。
それに早く前みたいに、兄の腕に抱かれたかった。

そうして俺達は、家に戻ってきてからも愛情を確かめあったのだったーー。




「ん、んぅ、……あぁっ」
「……大丈夫か? 痛くない?」
「へいき、だよ……動いて、もっと」

兄が正常位で覆い被さり、太ももを開いた俺の間でゆっくり腰を動かす。
勝手に濡らしてくる精霊魔法の力はもうないため、初めてこの兄としたときのように潤滑液を使ってのセックスだった。

もう体が慣れてしまっていたのか、兄のものを入れられても痛みはなく、だんだんと気持ちよさを思い出していた。

「はぁ、はぁ、……優太…ッ」

互いの息が上がり、見つめ合いながら体を重ね深くを感じる。

「にい、ちゃっ、んぁっ、……すき、好き…っ」

熱に浮かれて口にすると、兄の腰がぴたりと止まる。

「それは……優太くん、俺のちんぽのことかな? それとも俺自身…?」
「……ばかっ」

恥ずかしくて答えをはぐらかすと兄は嬉しそうに体重をかけてきた。
鍛えられた腕と胸に抱かれ、隙間なく密着して腰をズプズプと入れてくる。

「ひゃあっ、あぁっ、んんっ、やぁ、それ、だめ、気持ちいいよぉ」
「ああ、優太、かわいい、優太のなか良すぎ…」

興奮した兄の腰は止まらず、奥を勢いよく何度も突いてきて俺はガクガクと全身が痙攣する。

「あ、あー、出る、出る……優太……っ」

兄のペニスからも大量の精液が出され、俺の中を満たしていく。
前もってゴムをつけるかどうか話したが、俺はそのままがよかった。
兄のことを全部感じたくなっていたのだ。以前と同じように。

「はあ、あ、あ……すっげえ出た……」

兄が離れようとするため俺は腕と足で阻止した。
ん?という喜びと驚きの表情で見下ろされる。

「優太? もしかして抜かずのもう一発? よしっ、お兄ちゃん頑張っちゃうぞー! つうか何発でも余裕だわ、お前エロ可愛すぎて」

わけの分からない事を言う兄を無視したが、俺の羞恥にまみれた顔に気づいたのだろう。
ゆっくり互いの腹の部分を見て納得をされた。

「あっ。お前また出しちゃったか? そんなに気持ちよかったんだなー俺の。嬉しいぞ優太」
「……ううっ。兄ちゃんのせいだぞっ」
「いいじゃねえかトコロテンぐらい。っていうかもっとして、見たい優太のえろいとこ」

自分のを抜いて、俺が腹に出してしまったやつをやらしい手つきで撫でる。敏感になり文句を言ったが兄は嬉しそうにティッシュで拭いてくれた。

二人の行為は一回で終わらず、兄の終わりなき精力を思い知る。
我慢が爆発したらしいが、体格の違う少年体型の俺を抱っこしたり後ろから際限なく突いてきたり、俺は完全にめくるめく快感と増幅する感情に支配されていった。

「あ、あぅ、またするの兄ちゃん、もう変になっちゃうよ」
「なっていいよ、俺しかいないんだし、優太は俺のなんだからな」

優しく言って俺を寝そべる自分の腰の上にまたがらせ、独占欲を表しながら下から揺らしてくる。
こんな格好までしてしまうとは。
俺は未経験だったのに、もうあらゆる快楽を兄に教えてもらった気がする。

「ん、んぁ、恥ずかしいよ、見ちゃだめ、あぁぁんっ」
「おー見える見える、優太のえっちな部分丸見えだぞぉ、腰をもうちょい浮かしてーーそうそう」

不安定な体勢で足を開かせられ、下から大きなものがリズムよく打ち付けてくる。俺が上のはずなのに、完全に主導権は兄だ。

気持ちよさが突き抜けて体の力が抜け、またイってしまった。
俺がイクのを兄も感じるのか、喜びようが半端ない。
……俺も兄ちゃんがいくのはなんでか嬉しいけど。

「あ、あっ、俺の触んないでっ」
「いや触るだろ、こんなびくびく可愛い弟のちんこ」

兄の武骨な手が俺のをそっと握り上下にしごいてくる。
前と後ろ、同時に攻められてはすぐに降参状態だった。

「いく、いくっ、もうイクよぉっ、にいちゃんっ」
「……くっ、俺もまた一緒にいくぞ、優太……っ!」

後ろにのけぞりそうになりながら達すると、眉根を寄せた兄が射精するのも感じた。
兄のお腹にもまた俺は出してしまい、息をついてなんとか上に乗ったままにする。

だがその時、視線がある箇所に奪われる。
兄の逞しく割れた小麦肌の腹筋が、ぼうっと黒いインクに滲んだのだ。

それはまるで入れ墨か何かのように浮き出て、唖然とする。

「……えっ? うそ! や、やばいよ兄ちゃん!」
「んっ? なに? 俺また勃ってる?」

とぼけた声でうつろな目を開け、汗に濡れた短髪をかきあげる兄。その視線は俺が指差した先へと向けられ、すぐに呆然となった。

「お、おい。なんだよこれ。……あいつの、変な入れ墨…じゃねえよな?」

震える声が室内に響く。
俺も腹を見てみたが、兄のよりも薄かったものの確かにあの見覚えのあるタトゥーが浮き出ていた。

これは碧の石による効能で、俺達が行為により気持ちよくなったら刻印が出るというものだ。

「うそ、うそうそうそ。ありえねえ。あいつ消えたんだよな? 確かに滅びたよな? なんでまた存在感現してんの? 嘘だと言ってくれよおい!」
「落ち着いて兄ちゃんっ」

二人で甘いムードだったのも束の間、兄がまた発作を起こし必死になだめる。
だが俺も強く混乱していた。
まさか、今日の石の調査のせいで? それとも今、兄と愛し合ったことが原因なのだろうか。

石のことは内緒にしているつもりだったが、俺は正直にすべて話すことにした。

「おい。そういうことは先に言え、優太。別に気にしねえから。というか俺は今気が気じゃない。またあいつが甦ったらどうする? やっぱ今俺がお前に手出したことが原因か? これはあの野郎の怨念なんじゃないか。まさかな、ははっ」

ぶつぶつと喋る兄をかなり心配した。
もしかして、ケージャがどこかにいるのか?
まったく分からないけど、消えたと思っていた精霊力は残ってたのだろうか。

少なくとも、石にはわずかにあったのかもしれない。
儀式のせいで全部失わずにすんだとか?

「いや、たぶん違うよ兄ちゃん。ケージャの最後の灯火というか、そんな感じなんじゃないかな。俺達に挨拶しに来てくれたのかも」

穏やかに肩をぽんと叩き、兄に伝える。
しかし意に反して、心配そうな表情が返ってきた。

「……なあ、無理すんなよ優太。別に喜んでもいいから。嬉しいんじゃないか、お前は」
「ええっ。どうしたの兄ちゃん、そんな顔しないでよ」

ドキリとしながら俺の肩にもたれかかってくる兄を支えた。
もし本当にケージャが消えてなかったら、そう考えるのは嬉しさも怖さもある。

期待してそうじゃなかったらやっぱり悲しいし、なにより兄の気持ちが今みたいに落ち着かないのは可哀想だしこちらもつらい。

やっぱり複雑だ。
兄もケージャのことも俺はいつまでも大事だから。

「優太ぁ……お前は俺のだぞ。しつこいがもう約束したから。それは何者にも変えようがねえからな」
「うん。そうだよ。元気だして。大丈夫だから。俺はずーっと兄ちゃんのだよ」

なんだか変な感じがする。
途端に自信を失い俺にすがってくる兄が愛しく、守りたい気分になる。

ひとつだけ言えるのは、こうして約束した通り俺は兄ちゃんのものだっていうことだ。
これから先もずっと。



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