夫婦になった兄弟 | ナノ


▼ 28 弟がいるから ※ (兄視点)

俺が決闘を決めたのは、必然に迫られたからというだけじゃない。
あのチンピラをぶちのめしてやりたかったし、優太にも見せてやりたかった。

俺が戦えるところを。あいつだけではなく、この俺だって出来るというところを。
でも結局は、優太を泣かせてしまった。


「あっ、部族長だ! 決闘がんばってください!」
「オレもオレも! ケージャ様、ガイゼルをこてんぱんにやっつけてください!」
「ん? ありがとね、頑張るよ。なに君、ガイゼルのアンチなの? やっぱ悪い奴は子供にも分かるんだなー」
「悪いやつ? か知らないけど、怖いし顔も怒ってるし、お母さんがあんな風になっちゃだめだって。それで部族長を目指しなさいっていうんだ、強いし優しいからって!」

幼い男子達が木の棒を振り回し、戦いごっこをしながら騒いでいる。
俺は彼らの夢を壊さないように頭を撫で、しばらくの間遊んでやった。

やがて広場に現れた親に礼を言われ、彼らを見送ったあとその場にしゃがみこんだ。

「お疲れ、ケイジ。子供たちの相手をして優しいな」

馴れ馴れしく名前を呼んできたのは、南地区のリーダーであるラドだ。派手な色の着物を着崩し、金色の長いドレッドヘアを結んだ異国風の男はよく目立つ。

「まあ、これも長の仕事のうちだからな」

差し出された水を遠慮なく飲み干し、二人で広場の椅子に座った。
台風から三日が過ぎ、片付けを終えようやく島の日常がもどってきた頃だ。
奴も報告がてらこの東地区に滞在していた。

「お前のこと、見直したよ。というか、俺はお前もそのぐらいの男だとは思っていたが、自ら決闘を受けるとはな。勇敢な男だ」
「……はっ。褒めるのは勝ってからにしてくれ」

正面を向きながら吐き出すと、奴は気にしてない様子で笑っていた。
そもそも長が部下に負けるわけにはいかない。

その重大さはこいつらが一番よく分かってると思うのだが、誰一人反対しないことから、俺が信じられているのか、または島の伝統通り、「真に強い男」にしか皆興味がないのか。俺はひとり考えていた。

「そうだ、ケイジ。今日はな、お前に発破をかけるためだけに来たんじゃないんだ。奥方殿にあるものを頼まれてな。ほら」
「あ? なんだよこれ」
「異国の下着だ。……ええと、奥方殿はパンツと言っていたな」

ぱ、ぱぱぱパンツ?
なんでそんなものをこいつが優太に。

「どういうことだ? いつからそんなもん送り合う中になってんだこの破廉恥野郎ッ! 外国人風だからって何しても許されると思ってんじゃねえぞてめえッ」
「いや彼のお願いだから応えたくてな。俺は物資担当で商品も手広いんだよ。とにかく、きちんと渡してーーああそんなに怒るなよ。お前はケージャより導火線が短いな、ははっ」

楽しそうに笑まれて怒りが削げていく。
まあきっと優太も日本の現代っ子であるから、島の暮らしで不便な点もあったのだろうと、かさばる袋を押しつけられ自分を納得させた。



それからは朝に続き、また夕飯まで特訓をする。
場所は野外の訓練場で、同じく裸体に腰巻き姿の男エルハンと対峙した。

こいつは普段のほほんとしている優男だと思っていたが、剣を握ると厳しく、そんなところは俺の親父に似ていると思った。
だが教え方はさすがにもっと上手い。兵を指揮してるだけはある。

「ケイジ。今日はなんだか気が乱れていますね。どうしました?」
「いやな……優太のパンツが……なんでもねえ」

雑念を振り払うように、流れる汗を桶の水で洗いさっぱりする。
人格が戻り皆から最近名前を呼ばれるようになってきて、やはりこのほうがやり易いと実感する。

首をかしげたエルハンだったが、俺はひとつ奴に尋ねたいことがあった。感情とか人となりは抜きにして、強さについて奴が思う俺とあいつの違いについて知りたかったのだ。

「ふむ。そうですね……私はお二人の緻密で正確な美しい剣術は、同じだと思うのです。だが、ケージャ様は加えて勇猛さと大胆さをあわせ持っている。私が彼との決闘に破れた頃から、それは変わっていません」

淀みなく発せられる言葉がいやおうにも突き刺さってくる。

「どうかあなたも殻を破ってください、ケイジ。泥臭い姿を弟君に見せるのが躊躇われますか?」
「……そんなことはねえよ。あいつを守るためなら、俺はなんだってやりたいんだ」

その覚悟はこの島で目覚めた瞬間から持っている。
ただケージャという謎の男の存在が、いつだって俺にとって足かせだったのだ。

「その気持ちは一番大切なものです。あなたは部族長なのですから。長とは、大切なもののために命をかけて戦う男を言うのですよ」

奴は俺だと認識しているはずなのに、ふと自然な笑みを見せた。
俺も反発はせず、前を見て頷く。

どこかでまだ他人事だと思っていた部族長という肩書きに、足を突っ込み始めている。知らずと自分に馴染んできていることを、強く感じた。





連日同様、ぼろぼろの姿で優太の待つ離れに帰ってきた。
藁葺き屋根の広い高床式住居は、リラックスのできるお香が漂う。

入り口のカーテンを抜け足を踏み入れると、窓辺で涼んでいた浴衣姿の優太が、俺に気づいてぺたぺたと駆け寄ってきた。

「兄ちゃん! おかえり、大丈夫か? お腹空いたでしょ」
「おう。お前待ってたのか、先食ってていいのに」

風呂の前なのに構わず抱きついてくる弟に愛情を感じながら問うが、優しいこいつは「一緒に食べるよ」と嬉しそうだった。

気を使わせてたら悪いな、そう思いつつも弟の存在に癒される。
食べてるときも「あーんして優太」とまとわりついてみたがそれは拒否されて悲しい。

風呂をさっと浴びてご飯も食い終わり、俺は居間の長椅子に優太とくつろいでいた。
そこでおもむろに袋を取り出す。

「なあ、今日ラドに会ったんだけどさ。お前こんなもん頼んでんの? 一言兄ちゃんに言えよ」
「えっ? ……あ! ラドさん持ってきてくれたんだ、やったー!」

すごい喜びようで中を漁っている。奴が取り出したのは、柔らかい生地だがきちんと伸縮し、ゴムも入っているボクサーパンツに似た代物だった。
しかしサイズが二つあり、一方の何枚かを優太は俺に渡した。

「はいっ。これ兄ちゃんのために頼んだんだよ。サイズ合うかな、ラドさんが俺には分かるって言ってたからたぶん大丈夫だと思うんだけど…」

俺は阿呆のように口を開けた。

「え? なんであいつが俺のサイズ知ってんのか怖いけど、これ俺のなの?」
「うん。俺は別に今のままでもいいんだけど、兄ちゃんのだけ頼むの恥ずかしいだろ。なんか甲斐甲斐しい奥さんみたいだし。それに兄ちゃん、ふんどし嫌だって言ってたからさ。戦うときにも異国風のやつのほうがいいかなって。ラドさんも快く見本見せてくれてーー」
「優太ァッ!!」
「わぁっ! ちょ、なんだよ興奮して」

即座に自分を恥じる。
こいつは普段素直じゃないが、俺のことを考えてくれる優しい弟なのだ。いとおしさで胸が一杯になり、強く抱きしめると「苦しい離せぇ!」と暴れられた。

「お前すっげえ優しいなぁ、優太。俺のために……ううっ。疑って悪かった、心の狭い兄ちゃんを許してくれ。……んっ? でも待てよ、ラドの見本ってなんだ、まさかあいつ、自分のをまだうら若きお前にぺろって見せたんじゃねえよなぁ…!?」
「ちげえよ! ばかじゃねえの! 変な妄想すんなっ」

顔を真っ赤にしてカタログのようなものから選んだのだと教えてくれた。
最近はとくに忙しく日常でも構ってやれないが、独自にそんなことをしていたのかと、感謝とともにやや寂しさも湧く。

結局下着は大事に受け取り礼を言った。
さっそく着替えることにする。その場で浴衣を脱いで裸体を晒すとまた喚かれたが、マジで着心地はよかった。

「おおっ、これ最高だわ。ありがとな優太。ほら見て、ぱつぱつ」
「見せんなよっ、なにそれ自慢か? 自分のがでかいからって…」

なぜか視線を逸らそうとする優太の頬をむにっと掴み、俺は顔を近づけて口を押し付けた。
軽くするつもりが、あまりに奴の唇が柔らかく美味しかったため、そのまま味わうことにする。

「んっ、んぅ」
「……んー? 優太ぁ……気持ちい?」

身をよじる奴の体を腕の中に引き込み、だんだん火がついていく。のだが俺は弟の新しいパンツ姿も見たくなった。

「そうだ。お前も履いてみて、これ。よしっ、兄ちゃんが脱がせてやる」
「…やっ、やだあ! いいから!」

逃げる優太の浴衣を足元からまさぐると、細くしなやかな足が見え、ふとももが艶かしい。
ふんどしに似た薄い布地は確かに優太には似合ってるし、これも新鮮で可愛い。

だが今は中のほうが見たいとめくろうとすると、優太は涙目で前を隠した。

「……んっ? あれ、優太くん。勃っちゃったか。可愛いなー」
「うっさいな、いきなりキスするからだろ!」

うるさい口をまた塞いでしつこく唇を吸ってやると、優太は途端に体を脱力させ足もだらりとさせる。
俺は奴の下着に手を入れ優しく揉んでやった。吐息とエロい声が耳を刺激してきたため、布も全部剥いで直に擦ってやる。

「はぁ、はぁっ…にい、ちゃん…」
「あー…やべえ優太……とまんね……エッチしよっか…」

長椅子で抱えていた優太をそのまま抱き上げ、同じ部屋の天蓋つきのベッドまで移動する。
横抱きにしてるときもキスしてたが、奴は俺の首に腕をまわし素直だった。

シーツの上にそっと下ろして華奢な体に覆い被さっても、潤んだ瞳が見つめてくる。俺は優しく弟の黒髪を撫でて、にこりと話しかけた。

「なんか、文句言わないんだなお前。最近あんまり夜くっついてこねえから、ちょっと寂しかったぞ。台風のときはあんなに激しかったのに」
「ち、ちが…っ。だって、……兄ちゃん訓練で疲れてるし、ほんとは俺も……」

心を開こうとしている優太に目を剥く。

「気遣ってくれてたのか? 遠慮すんなよ優太。つうかな、男は疲れてるほうが無性にムラっとくるんだぞ?」
「……ばかっ」

罵りながらも早くしてほしいのか、手と足を体に巻きつけてくる。
一気に火を吹きそうになった俺は弟の浴衣をすべて取り、自分も裸で肌と肌を重ね合わせた。



その夜は、長く優太を抱いてしまった。
とろとろにほぐれたそこに、挿入して揺らすだけで、優太は淫らな声を上げ俺のことを呼ぶ。

甲高い声は艶がかり、暗がりに浮かぶうっすら焼けた肌が容赦なく俺を誘う。

「にいちゃっ…あぁっ……だめえっ……はぁっ、あぁっ」
「はあ、……ああ、優太……なんでこんな良いの…お前のなか……」

ベッドにあぐらをかき、真ん中に座らせて下から丁寧に突いていく。
汗で張りついた髪をすくい、首すじに吸いつくとやらしい痕がついた。

鎖骨から胸、乳首に沿ってぺろりと舐めとっていく。
淡いそこを吸っていると面白い具合に優太は背をビクビク反らせ、揺れるぺニスも同時にいじると同じようにイッてしまった。

「あ、あぁぁ……出ちゃったよ……」
「ん……かわいー……べとべとでえろい、ここ」
「ひぁぅっっ」

敏感な先端を触るだけでまた中が締まる。
その動きと弟の魅惑的な視線にやられた俺は、細身の腰をしっかり持って突きを強めた。

下からずぷっずぷっと水音を激しくすると、驚いた優太があられもない声を出して掴まってくる。

「あっ、あ〜っ、やあっ、だめ、だめっ、いく、いくっ」

俺は奴の背中ごと強く抱きしめてぺニスを打ち付ける。
奥を継続的に突いてやると優太は目の焦点を揺らし、顔を赤らめたままやらしい吐息を連発した。

「もうイク? イキたいの優太」
「んっ、んぅ、いきたいよぉ、兄ちゃん…っ」
「おー、そうだなぁここもそう言ってる……じゃあもっと掴まって、中まで気持ちよくしてやるからな」
「あ! んあぁっ!」

俺は軽々と弟を抱いたままシーツに押し倒した。
正常位で足を開かせて腰をぴったりつけ、奥を狙って何度もピストンを行う。

がくがくと腰を揺らしイってしまう優太を抱き込み、がっちりと離さないまま愛の証明を行った。

「優太ぁ、俺も出そう、……出したい、お前に」
「……んぅ、ぁあ……出して、いいよ…ん、ぅう」

許可をしてくれる愛しい弟の口に舌をねじこみ、終わってしまう名残惜しさからキスで塞いだ。

こいつの全てを自分のものにしたくなる。
いつも感じるのは焦燥と独占欲と深すぎる愛情だ。

「じゃあ出してって言って優太、俺のこと好きって言って」

覆い被さって腰を入れながら、拒否できない状況で求める。
しかし子供じみた俺に対しても、弟はいつだって優しいのだ。

「好き……っ、兄ちゃん好きっ……俺に出して兄ちゃん…っ」

うっとりと見つめる瞳には俺しか映っていない。そう確信して、また息もできないぐらいに深い口づけをした。

そのまま耐えられるはずもなく、俺は優太の中に精を放った。
弟と繋がることにもはや何の疑問も抱かず、愛する者を腕に抱けることに感謝のみが漂う。

「俺も好き優太、……すっげえ好き……。もうずっと俺のそばにいるんだぞ……」

だらりと体重をかけても優太は俺を受け止めている。
顔を上げると、息を浅くして赤らむ顔でこちらを見ていた。

「いるってば……まだ分かんないのかよ。バカ兄貴…」
「ほんと? 朝起きてもずっといる?」
「うん。っていうか兄ちゃんのほうが起きるの早いだろ」

もういつもの調子の弟に安心しつつも、俺は急激な眠気が襲ってきた。
繋がったままなのにまぶたがだらりと落ちてくる。

「……おい、兄ちゃん? そのまま寝んなよ! ちょっと、抜けってっ」
「あーごめん、五分まって……」

ただ眠いだけだとは思うが、下でじたばたする優太の膝に腰を小突かれても、体に力が入らなかった。

この感覚、嫌な予感がする。まさかな。
そう思って俺は寝てしまった。




でも朝が無事に来て、心からほっとする。
目覚めた時には、俺を揺さぶる優太の心配げな顔に見下ろされていた。

「兄ちゃん、兄ちゃん! 変わってないよな…?」
「……ん。……あれ? お前どうやって抜け出たの…」

普通に仰向けで片腕を放り寝ていた俺が尋ねると、すごい重かったと弟が文句を垂らす。

「なんだよ。まだ俺だぞ。よかったな優太」
「うん……よかった兄ちゃん。心配させんなよ」

朝から首に抱きついてくる可愛い弟だが、本当はあいつになってたほうが、心配症なこいつには良かったんじゃないかと若干疑わしい。

でも次の瞬間、俺はいい意味で裏切られた。

「ねえねえ見てよ、似合う? これいいよな、履き心地もすべすべで」
「……おっ? パンツじゃん! ほんとすべっすべ、お前のかわいいケツ!」
「そうじゃねえ!」

素直に褒めたのに蹴りを入れられそうになって避ける。
でも俺は思う存分そこを撫で回し機嫌がよかった。

「お前かわいすぎだろ、俺のこと新しいパンツで起こすとはな」
「だって昨日兄ちゃんが見たいって言ってたんだろ。俺も約束守っただけだし。……だから兄ちゃんも約束守れよ」
「えっ? なんの?」
「だから勝つってことだよっ。絶対に勝ってよ兄ちゃん!」

あの泣いてたはずの優太が覚悟を決めたかのように、ぎゅっと抱きついてきた。
俺は感極まる。どんな気持ちでそう言ったのかと思うと、様々な感情が入り乱れた。

「おう、絶対勝つからな。心配すんな優太。お前が笑顔で応援してくれたら楽勝だから。な?」
「……うんっ」

こうして朝から朗らかな思いで俺は弟と抱き合っていた。



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