夫婦になった兄弟 | ナノ


▼ 25 久々の兄弟 ※

本拠地に帰ってきたあと、俺は住居下にある穴蔵のような場所に留まっていた。

今夜から明日にかけて、この島に台風が上陸するらしい。
島民たちはその間、シェルターとなっている地下空間に避難をすることになる。

「ここ、涼しいなぁ。……兄ちゃん、大丈夫かなぁ……」

窓もなくランプが置かれた室内は、殺風景だが一応二人が寝られるベッドもあって、俺はそこに体育座りをしていた。

嵐のせいで突風や物音が響くが、兄はこんな時でも人々の避難具合や堤防の様子などを部族民と報告し合い、連携して仕事をしているようだった。

他の地区の統括者らも区域に戻り対応する中、ガイゼルとラウリ君はこの東地区にある集会所地下の牢屋に、収監されたらしい。
明日以降処遇を決めるというから、まだ彼らからは目が離せない。

とにかく今は、早く兄の顔が見たいと思った。
さっきはせっかくまた一緒になれたが、西地区から帰還してからはこの薄暗い空間に一人ぼっちで心細い。

同時にケージャのことも思い出す。
本当の兄の代わりに、再び姿が消えてしまったもう一人の兄。
嵐の間は自分がいなければと、長としての責任感を俺に話していた。人格交代の瞬間だってショックを受けただろうし、無性にやるせない気持ちになる。

「……はあ。……兄ちゃん、早く来て……」

呟くと、分厚い鋼鉄の扉の向こうから、物音がした。
俺は急いでベッドから降り、浴衣を整えて出迎える。
開いた先の廊下には、濡れた短い茶髪を布で拭いている兄がいた。

「あー……優太。ただいま。……やっと終わったぜ」

掠れた声で目も据わっていて、倒れこむように俺の両肩を包み抱きしめてきた。

「わあっ、兄ちゃん、重いっ。……大丈夫? お疲れさま。風呂入ったの?」
「おう。外で木材とか配置し直してたらすっげえ汚れてな。そのままじゃお前んとこ帰れねえだろ。だから湯を浴びてきた」

良い匂いの兄が俺の頬に、自分のをすりすりと擦りつけてくる。
口とか髭あとも首や顔に当たってきて、俺は背筋がひゅんっとしてしまった。

「あっ……にいちゃ、っ、とにかく、休んで。今お茶いれるね」

変な気分になりそうなのを察知し、浴衣姿のでかい図体の男をちゃんと立たせてから離れた。
急須のお茶を湯呑みに入れて、ベッドに並ぶ兄に手渡した。
隣にくっついて、でも腕に絡みたくなるのは我慢する。

「ねえ兄ちゃん。今日は助けに来てくれてありがとう。俺すごい嬉しかった、また兄ちゃんに会えて。いきなり人格も戻っちゃったし、怪我もしたのに。……あっ、よく見せて。……すごーい、本当に治ってるね。もう痛くない?」

勝手に浴衣をぱらりとめくって兄の肩をのぞいた。
小麦色の肌、筋肉が盛り上がった頑丈な肩に目が奪われながらも、そこを優しくなでる。

すると兄の手が俺の手を覆った。もっと高い体温が伝わって、兄の横顔がさっと染まっていく。

「あのさ。今甲斐甲斐しくされると俺、やばいから。お前にキスしたくなっちまう」

何気なくこちらを向いて、指でほっぺたを遊びながら、唇を色めいた眼差しで見てくる。

して。って言えなかった。
そんなの俺の、弟のキャラじゃないし。

でも俺のこの気持ちは、欲求は、なんなのだろう。
やっぱり、ケージャのせいなのだろうか。精霊力があんなに入ったからーー。

「おい」
「ひゃっ。なに?」

途端に気の強そうな、凛とした瞳に見つめられると、ドキドキした。

「していい?」
「……なっ、なにを」
「分かってんだろ、優太。……俺がいなくなる寸前、二人で何してたか、覚えてねえ…?」

甘く囁くように言われて、顔が一気に熱くなる。
はっきり覚えている。けれど、今の俺は、あのときの自分とはもうーー。

「に、にいちゃ……」
「しようぜ、優太……続き」

後ろ髪を撫でて、首に手のひらがすべり落ちて、唇を重ねられた。
兄の唇にちゅくちゅくされて、完全にリードされる。

「ふっ……ぅ……ん、んっ」

優しく中を開かされて、内側に兄の舌が入ってくる。
兄とするのは二回目だけど、まったく前と感じが違った。
脳までしびれていく気持ちよさに、体ごととろけそうになる。

「兄、ちゃん、まって、え」
「……んー……むり。……可愛い、お前……」

激しくなる口づけに、腰がじんじんしてきて、俺は浴衣の前を隠そうとする。

でも、どうして兄ちゃんは俺にこんなことするのだろう。
前のエッチは目的があるからしたんだし、このキスは一体。

疑問に思う中、ゆっくりと唇を離された。
二人で短い息をつきながら、兄が俺を見て変なことを言う。

「うまくなってねえな。……安心した」
「……な、なんだよそれ。バカっ」
「怒んなよ。……くくっ、いつものお前だな」

目を細めて笑い出し、からかわれる。ケージャにも同じ台詞を言われた気がする。
俺は火照った体を隠しつつも、兄の服に手を伸ばしたい思いがくすぶっていた。

「あー、じゃあ、そろそろ寝るか。今日は長い一日だったもんな。お前も疲れただろう、優太」
「……えっ。うん」

あんなに熱いキスをしておきながら、兄はわざとらしくあくびをして布団に潜り込んだ。
腕枕に俺を招き、まるで布団の一部かのように抱きしめたまま目を閉じた。

俺は、少しがっかりした。この兄は何もしないんだって。
自分でもおかしいと感じる。

だが、奇妙だと思ったのは兄も同じようだった。
見つめていたまぶたが開き、褐色の瞳にじっと視線を向けられる。

「なんか……お前やけに素直じゃねえ? いつもは俺のスキンシップに文句言うのによ」

ぎくり。そう音が聞こえるほど、指摘に焦った俺は「気のせいだよ。あっ、この部屋なんか寒いから」と兄に寄り添う。

「……そうか? じゃあもっとこっち来いって」 

背中を抱え込まれて素直に甘える。
兄ちゃんの胸板が心地よくて、匂いも安心できて、全てを預けたくなるほど、逞しい体が魅力的で。

「おやすみ、兄ちゃん」

妙な気持ちを振り払うように、身を乗り出して伝えた。
それがまずかった。兄が完全に目が冴えたかのごとく直視する。

「……今お前、俺のほっぺたにちゅーした? 自分から」
「そ、それがなに。別に、おかしくなくね」

指摘をうけて恥ずかしくなった俺は、兄の胸にもぐりこんで引き締まった胴に抱きついた。
兄ちゃんがはやく、俺を抱いてくれないから悪いんだ。

「優太くん。お兄ちゃんをそうやって無意識に誘うのやめなさい」

なぜか咎められて顔をあげる。
ちゅっ、とキスされて、時間を忘れたように見つめ合う。
兄は眉間に皺をよせ、俺の唇をまじまじと眺めて指で触ってきた。

「……あー、えっろい口……じゃなくてな。……男が疲れてるときっつうのはな、やたらムラムラくるときがあってな…」

思い出したように真顔で「いや、なんでもない。忘れろ」と頭を胸に押しつけられる。
俺もだが、兄の様子もおかしかった。でも、興奮して中々眠れない。

考えを一生懸命整理すると、俺は兄に抱かれたがっているのだと思った。
でもこれじゃケージャのときと一緒で、うやむやになってしまう。
だから兄ちゃんに事情をきちんと言うべきだと、ぼんやりする頭で結論を出した。

「あのね、兄ちゃん。俺兄ちゃんに言わなきゃいけないことが…」
「いやちょっと待て。まだ言うな」

話初めで、速攻拒否されてしまい、挙動を奪われる。

「俺が何言うと思ってるの?」
「わかんねえ。でもショッキングなことだろ。お前の顔見りゃ分かる」

疑心暗鬼を隠さない兄に見抜かれていて戸惑った。
というのも兄は医術師に、人格交代における推測を聞かされたらしかった。それは「精神に衝撃を受けることが引き金となり得る」という内容で、俺も度肝を抜かれた。

「俺だってこんな情けねえ男らしくないこと言いたくないが。この十日間あいつとお前の間に何があったのか、全部知りたいしな。でもな、せっかくお前の前に戻れたんだ。また無意識のうちに変わりたくねえんだよ」

苦々しい気持ちを吐露して、抱きしめてきた。
兄は周りの話から、なんとなく想像がついているのだろうか。

その思いを感じ取ったなら、自分も我慢しなければならない。
兄ちゃんのためにも。
そう簡単には、今の俺は思えなかった。

「兄ちゃん。どうして俺にキスしたの…?」
「……んっ?」
「人格が変わる前、エッチした理由は分かったんだ。俺たち、伝承を達成できれば元の世界に帰れるんだよね。……でも、さっき俺にキスしたのはなんで……?」

顔を近づけて、俺のことだけを見てもらえるように、囁いて尋ねた。
兄の喉仏がごくりと動く。

「ゆ、優太くん……?」
「ねえ。答えてよ、兄ちゃん……」

浴衣からのぞく鎖骨に手を伸ばすと、強い力で握り返された。
兄がいっそう男らしい顔つきで、胸を上下させている。

「なんで俺のこと触ってくるのかな、この悪い子は。いけないよ、そこらへんにしときなさい」
「……やだ。……兄ちゃんだって、興奮してるくせに」

とくとく鳴る鼓動が、兄の手のひらにわし掴まれた。

「あっ、あぁあっ」
「……優太、なんか知らんがお前がエロくなっている。これはどういうことだ?」
「や、やあぁ、そこ揉まないでっ」
「いいや揉むね。俺はお前のおっぱい好きなんで。悪いけど。こんなことも出来ちゃうしな」

おかしくなった兄に浴衣を剥がされて胸が露になる。
男なのに兄はそこを吸ってきた。ずっと前もそれをやられたけど、今の方がむずむずした。

「だめ、そこ、んあぁぁ」

太ももを擦り合わせると膝を割られて兄が入ってこようとする。
この今にも繋がってしまうような体勢はまずい。欲しくなってしまう。

しかしまた兄の動きが止まった。
完全にはだけてしまった俺の身体を、とくに脇腹の部分を見て、半分白目になっている。

「なっ……なんだこの、いかにもなタトゥーは……おっ、おまっ、いつの間にこんな不良みたいなもんを……いや、あいつだろ、ぜってえあのイカレ野郎が……ッ!!」
「に、にいちゃん、ちょっとまって!」

俺は兄に抱きついて落ち着かせようと試みた。
とうとう秘密の刻印を見られてしまった。必死に碧の石の説明をする。これがケージャからの贈り物だったこと。不思議な効力があることもだ。

「……あの石、ただの宝石じゃなかったのかよ……クソが! 調子乗りやがって……ッ」
「で、でもこれのおかげで、今日もガイゼルの拘束から守ってくれたんだよ」

なだめるのも空しく、俺は急激な質問責めに合い、まるで初夜のあとの時のように、窮地に陥った。
もう言わないのむり。限界だ。そう思ってしまった俺は、さっきの兄の話も無視して口を開いた。

「あのね。俺、もう一人の兄ちゃんといっぱいエッチしちゃったんだ。それでね、気持ちよくなるとこの刻印が浮かびあがっちゃうんだって」

ごめん。そうまっすぐ謝りながら、少しでも衝撃を和らげようと名前の部分は濁して伝えた。
兄弟だから隠し事はしたくなかったし、兄の体だから早いとこ言うべきだと思った。

しかしそれは俺の身勝手な考えだったようだ。
硬直した兄はしばらくしてベッドから飛び降りた。

全裸のまま部屋の外へ行き、遠くの廊下から「あああああ"!!!」という兄の絶叫が響いた。
呆然と待っていると、また俺のもとに戻って勢いよく押し倒してきて、血走る目で見下ろされる。

「え? なんで? 俺どうして弟をどこの馬の骨か分からん野郎に寝取られなきゃなんねえの? 人生でそこまで悪いことした?」

突然発狂する兄をシーツに寝そべりまばたきして見上げる。

「ね、寝とられ? って、なんだよそれ、俺べつに兄ちゃんと付き合ってるわけじゃないし…」
「いやほぼ付き合ってるだろ」
「……はあっ?」
「だから、お前は俺のなんだよ優太! なんでわかんねえんだッ」

逆切れされながら唇を奪われる。
また怒らせてしまった。ごめんなさい兄ちゃん。
実際に口にしても、心の中で唱えても、兄の興奮は治まらなかった。

「あっあ、や、なに、するの兄ちゃん…っ、……はぁ、あぁ、……前、触っちゃだめっ」

もう勃ちあがってしまったぺニスを押さえつけ撫でられて、逃げるように身をよじる。

「……やらしー体だなあ、優太、……俺がお前をやらしくしたかったんだけどな? 分かる?」
「ひ、やぁあっぁんっ、手離してっ」

くちゅくちゅ先っぽから全体を握って擦られてしまい、すぐに腰が揺れる。
兄の手はやっぱり異常なまでに気持ちいい。

「やだあ、いく、出るっ、出るぅにいちゃんっ」
「おー出せ出せ、俺がしっかり見といてやるからな。お前のイクとこ」

兄に支配的に言われて震えた先端から白い液がとび出る。
もっと優しくしてほしかった。涙目で訴えて、腕を掴んだ。

「……うう。……勝手に、兄ちゃんとえっちなことして、ごめん、体勝手に使ったから、怒ってるんだろ…?」
「ちげえよ! 俺はお前が好きだからこんなに激怒してんだよ!」

吠える頬に手を伸ばす。
また兄の顔が珍しくうっすら染まり、ばつが悪そうに目を逸らされた。

「俺も兄ちゃんが好き……だよ」
「……あのなあっ……そうじゃねえ……ッ」

頭をかきむしる目の前の男に混乱した。
言葉では突き放されているのに、体は分厚い体に捕らわれて自由を奪われる。

俺は、恋愛経験だってなにもないただの高校生だ。
兄ちゃんになら抱かれてもいいやって思ってずっとそばにいた。
好きじゃなかったらここまで出来ないのに。

「……あいつのこと、好きなのか」
「えっ?」
「その男だよ。好きになっちまったのか」

声のトーンが落ちて、本当に苦しそうに聞いてくる。

「えっと……嫌いじゃないよ。兄ちゃんだから」
「お前な……マジでずるいぞ」

恨めしい眼差しが突き刺さるが、俺はさらに距離を詰めた。

「ケージャにもそう言われたよ。でも、俺の大好きな兄なんだもん。他の男だったらこんなこと絶対してないよ」

それは正直な気持ちで、他に言い様がなかった。
傷つけたくないけど、嘘もつきたくない。

「優太。大好きなのは俺だけだろ?」
「うん」

そこは即答すると、頭上から深くて長いため息が落ちた。
頭をぽんぽんされる。機嫌、なおってきたのかな。

「もう許してくれる? ……あっそうだ。俺も兄ちゃんのしてあげようか?」

たぶん間違ってるとは思うが俺も何か誠意を示したかった。 
しかし兄は急に真顔になる。

「……はっ? お前なにいきなりハレンチなこと口にしてるんだ。まさかあんなことやこんなこともしてねえよな? その野郎の汚らわしい粗チンをお前の可愛らしい口でーーなんてこと…ッ」
「するわけないだろ! ていうか自分のちんこだろ、そんな風に言うなよ」

舐められてしまったことはまだ秘密にしとこう。
ずるい気持ちを抱えながら、俺は勝手に兄のモノに触ってみた。

兄は「あッちょ、ゆ、優太っ!」と若干赤くなり腹筋をのけぞらせていたが、実はまんざらでもないのか、やめさせる素振りもない。
こんなことが出来るなんて、自分でも不思議だ。

「ちょっと、おっきすぎ、兄ちゃんの。……なんでこんなに硬くなってるんだよ、なんか触るとビクビクしてるし」
「おいあんまエロいこと言うな……ああ、これはまずい、すげえ背徳感なんだが……」
「なにそれ、気持ちいいの…?」
「うん。最高。……なあ、もっとこっち来てシゴいて。お前のケツも触らせて」
「……あっ、ああっ、もう、いじっちゃだめっ」

ベッドで横向きになり抱きかかえられる形で頑張っていると、尻を揉まれて、中心を撫でてこすってくる。
しかもキスまでちゅっ、ちゅっと時おりされて、俺が兄のを気持ちよくしているはずなのに、こちらがへろへろになり集中力は減らされた。

「……あー、やべえ、もういいぞ、優太……お前のこと抱かせて」

前からぎゅっと抱き締められる。
そして背に手を当てたまま、なんと兄は精霊魔法を唱えてきた。
驚いて出来るようになったのか尋ねると、耳の後ろに髪を優しくかけられ、見つめられた。

「あたりまえだろ。もう俺は開き直ったぜ。お前が好きだから抱く。……あと誰にも渡さねーから」

太ももをがしりと持たれて、恥ずかしいけれど足を曲げたまま開かされる。
長いごつごつした指が、ぐっちょり濡れたところに入ってきて、中を丹念にほぐしてくる。

声が我慢できずにいると、顔を近づけられて唇をはまれる。
吸われると同時に、兄の硬いぺニスが挿入されてきた。

「んっ、ふ、……ん、やぁあ、にい、ちゃっ」
「……はあ、……優太ぁ……すげえ、いい……」

奥まで入ったかと思うと、ぎりぎりまで引き抜かれてまた一気に根本まで埋まり、だんだん早く突いてくるのを繰り返される。

「あっ、あぁ! んあぁっ! い、いくっ」
「んー…? もうイクの、早いよ優太、まだまだ突くぞ?」

ぱんっぱんっと下から突く勢いが増し、離れないように胴にしっかりと太い腕が回される。
俺は兄の肉体と硬いぺニスを受け止めるために繋ぎとめられ、奥をイクまで何度も何度も刺激された。

「んぁあっ、いく、いくっ、中でいっちゃう、兄ちゃんっ」
「じゃあキスしような、しながらイッて優太、兄ちゃんのやらしく締め付けて」
「んっ、ん〜〜っ、ああ、あぁ、やあぁ〜っ」

恥ずかしいあえぎを我慢できずにお尻がびくびく痙攣して達してしまった。
だが兄の腰の動きは止まらず奥に奥に突いて揺さぶってくる。

「ひっあ、あ、あ、……い、いく、まだ……イクぅ…っ」
「おお、すげえ、イッてる、あー……いい子、かわいい。お前……っ」

上ずって色づく兄の声が耳を支配する。
顎を取られて口の中に舌が差し入れられ、二人で夢中で絡め合う。

「俺も出していい? 優太、兄ちゃん出してって言って」
「ん、っ、あ、ああ、だ、だし、て、にいちゃっ」

汗ばむ体も、重ね合う舌も全てを繋げて揺らされる。
ケージャといるときは、あれほど出来なかった口づけなのに。まさか兄とこんな風にたくさんしてしまうとは。

ずきっと走る胸の痛みも、兄の与える快感と熱に、ぬりつぶされていく。

「いくぞ、優太、一番気持ちいいとこにいっぱい出してやるからな……!」
「は、あ、あぁっ、……んやああぁっ!」

俺の奥深くで兄ちゃんのものが脈打つのを感じて、意識が遠のく。

薄暗い地下の天井を見ながら、火照る体にまったく飽き足らない様子の兄が、甘い口づけを落としていた。

「は、む……っ、ん、ぅ」
「……優太ぁ……かわいすぎ、俺の弟。……ああ、すげえ好き……」
「に、いちゃ……」

俺の髪をうっとりと、やたらと柔らかい微笑みでといてくる。今日は兄の色んな顔を見た。

「……ん? 気持ちよかったか?」
「うん……よかった……」

素直に認めて手を伸ばし、さらに嬉しそうな兄に抱きしめてもらう。
この満たされようは何なのだろう。
快感だけじゃなくて、心地よく感じる二人の心音。

「兄ちゃん、もっと口にして……」

お願いすると、兄はやや驚いた顔を見せ、しっとり唇を重ねてくれた。
俺はどうしちゃったんだ。兄弟なのに、まるで付き合ってるみたいな仕草をしたりして。

兄ちゃんが言う「好き」という言葉の意味を反芻しながら、俺は熱いキスを受け入れていた。



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