>> [2]2人で日向ぼっこ

「いいところだねぇ」

「だろ?落ち着くよな?」

「うん」

運良く翔さんのお休みと私のお休みが重なって。
少し遠出をしようと、連れてこられたのは人里離れたお蕎麦屋さん。

民家を改装してできたそのお店は、
見かけは本当にただの家で、一元さんはお断り、ということなのだろう。

静かな店内で、私たち以外には老夫婦が一組きり。

「何がオススメ?」

「なんでもオススメ!」

どうやら、翔さんにすべき質問ではなかったらしい。

「山菜そばなんかも美味いよ?」

「じゃあ、それ」

「俺天ざる!」

思い思いに、注文をして。
そばが出来上がるのを待つ。

「なんかさ、」

「ん?」

「こういう時間ってすごく贅沢だよな?」

「そうだね」

「美味しいものを待ってる時間って…ワクワクする」

「大好きなおそばだしね?」

「そ!だって前にここ来たのって1年前とかじゃないかな…」

嬉しそうに瞳を輝かせて、語る翔さん。
本当に蕎麦が大好きなんだよね。


翔さんの一押しというだけのことはあって。
お蕎麦は本当に美味しかった。

少し分けてもらった天ぷらも絶品で。
お腹も心も満たされた気分。

「少しゆっくりしよっか」

そう言って翔さんはすぐ近くの縁側に移動して。

「気持ちいいよ?」

手招きで私を呼び寄せる。

「あーホントだ。風も爽やかだし」

「ね。ちょっと異世界な感じだよなぁ」

「現実逃避、したいの?」

「ちょっとはね?」

翔さんが、ニヤリと笑って。

「今が不満という訳じゃねーけど」

「うん」

陽の当たる縁側で、ゆったりと流れる時間。

この空気そのものが穏やかと呼ぶに相応しく、
ずっとずっと、ここに身を置いておきたい。
そんなことすら、考えてしまう。 

「このまま寝たくなっちゃうな」

「ふふ、ご迷惑じゃなければ30分くらいいいかもよ?」

「うん。でもせっかくのデートだから」

「こういうのも贅沢なデートだよ?」

「まぁね。人目を気にしなくていいから…」

「うん」

翔さんは、私の肩に頭を乗せて。

「重い?」

「ん、へーき」

ここは普通、膝枕とかするような場面だと思うけど…
翔さんはこういうとこ、妙に硬派らしく。
実は家の中でも膝枕は未経験。

でも、それが翔さんらしくて…いいのかな。

「あー、いいなぁ」

「ん??」

「陽の当たる、静かなところでゆっくりした時間を過ごすってさ」

「うん」

「すげぇ……」

「んー?」

「幸せ」

小さな声で、
そう囁いてくれるけれど。

「私だって、」

翔さんの頭が乗っている方へ、自分の頭を預けて。

「ん?」

頬に、さらりとした髪の毛を感じながら。
お互いの隙間に残ったままの手を、そっと繋ぐ。

「幸せ、だよ?」

こんな時間を、


何歳になっても。




過ごせますように。





-END-

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お題提供:hs_title
フタリの午後に10のお題より


(執筆当時、そんなに納得のいく出来ではなかった記憶があります。忙しい日常を離れたほのぼのとした感じが出ていれば嬉しいです)


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