>> [3]キミの指輪

さりげなく繋いだ手に、違和感を感じて。
指先で金属の感触を確かめる。

「何これ」

「え?あ、これ?」

彼女は小指にはまった指輪を人差し指で触る。

「ふふ、いいでしょ?」

「いや。そういう問題じゃなくてさ」

「誰にもらったのかってこと?」

「……分かってんじゃん」

別に、元彼とか…別の男からのプレゼントだとは、
思ってねぇけど。

「昔、自分で買ったの」

「え?」

「ハタチの記念に、だったかなぁー?」

「そ…なの?」

「だって。自分で買ったものなら絶対一生付けていられるもん」

「そういうこと、言うなよな?ハイ、手ぇ出して?」

「え?」

彼女の小指から。
半ば強引にリングを外す。

「取っちゃうの?」

「貴金属は身につけてないと意味はないかもしれないけど」

「…うん」

彼女の手のひらの上に指輪を置いて。
俺の力で4本の指を折って閉じ込める。

「俺が買ったのにしてよ」

「んーでもねぇー」

俺の予想では「本当?翔さん、ありがとう!」って…
抱きついてきてくれる予定だったんだけど。

何?この反応?

「翔さんからって、難しいよね?」

「何が?」

「だってさぁ。高価だったら身に付けるだけでちょっと怖いし。
チープなものだと翔さんのこと知ってる人に見られたら…」

「…あぁ。なるほどね」

この程度のもんしか彼女に買ってやらないのかよ!
って思われるのが嫌ってことか。

「高いのにすりゃいいじゃん?」

頑張っちゃいますよ?それくらい。
まぁ…婚約指輪ってワケじゃないからほどほどに、だけど。

「そういうのもね…好きじゃないしね…それに」

「ん?」

「一緒に買いに行けないでしょ?つまんない」

「んーそこはちょっと考えるから!」

時間差で行くとか…何かイイ方法を、さ。

「やっぱいい。これで」

「えー?なんでそうなるの?」

握ったその手を再び開こうとするから。
もう一度俺の手で閉じ込める。

「翔さんとこういう買い物するとさ。すごく頑張りそうだからもったいない」

「相変わらずだな」

「貧乏性なの。仕方ないでしょ」

そういうところ。
俺は嫌いじゃないし、むしろ好きだよ?
それでも。

「ダーメ。ぜってー買う!!」

「そうなんだ?」

「だって俺が買った指輪を付けて欲しいもん」

「ふふ。ありがとう」

自分で言ってちょっと恥ずかしくなるような台詞が彼女にはお気に召したようで。
初めて笑顔を見せてくれる。

そうと決まれば…

「翔さん?」

「あ?」

「そんなに張り切らなくてもいいからね?」

「分かってるって」

そう口にしながら。
彼女の指と、彼女の雰囲気に一番しっくりくるのはどんな指輪だろうかと
一生懸命考えを巡らせていることも。


多分、バレバレなんだろう。


早速明日からカタログ収集…始めないとな?




-END-

************


お題提供:hs_title
キミのための10のお題ver.3より


(本編でこういう話を書いてみたいと思いつつ…なかなか時間が進まないので、先回りしてしまったような作品です。カタログ集めをするのはほぼ間違いないでしょうww)


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