SS:試行錯誤の産物〜誰得?俺得^p^凪沙×流羽で学パロ〜
2012/02/03
「えっと……あの、とりあえず落ち着きましょう?ね?」
精一杯平静を装って、精一杯の笑顔で宥める。
背中はぴったりと壁についていて、すぐ目の前には超至近距離で人がいる。
人がいる、というよりは、その人に追いつめられていた。
「落ち着いていますよ」
いつになく真面目な顔で言われて、心臓が跳ねる。
「よーく考えましょうっ!この状況はおかしいですよね?凪沙さんっ」
「いいえ、おかしくありません。私も男ですから」
理由になっているのか、いないのか。
そう、私を追いつめているのは紛れもなく凪沙さんだった。
事の発端は一時間ほど前。
響さんの家に由乃ちゃんと遊びに来ていた私は、凪沙さんとコンビニまで買い出しに行った。
夜遅くまで響さんと言い合っていた由乃ちゃんはソファで寝てしまっていて、私も泊まっていけばいいと言ってくれていた。
「響さんはビール、と……凪沙さんは何飲みますか?」
籠の中に缶ビールを二本入れる。響さん一人分だ。
「私はお茶で構わないですよ」
「え、せっかくだから凪沙さんもお酒飲めばいいのに」
「いえ……」
珍しく、綺麗な顔には苦笑が浮かんでいた。
「あ、お酒嫌いですか?」
「嫌いではないのですが、滅法弱くて……」
凪沙さんにも苦手なものがあるんだなぁ、なんて。当たり前だけど意外。
そして、ちょっとした好奇心で、酔っぱらってる凪沙さんを見てみたいと思ってしまった。
「このくらいなら大丈夫ですよ。アルコール3%のチューハイ。もしもの時は私が介抱しますから、遠慮なくどうぞ」
その結果が、今のこれ。
自業自得と言ってしまえばそれまでだけれど、まさかたった3%でここまで酔ってしまうだなんて、しかも凪沙さんが酒乱だなんて、きっと誰も想像出来ない。……はず。
「もしもの時は介抱してくださるのですよね?」
長くて細い、熱を帯びた指先が私の頬を滑る。
「そっそれは、気持ち悪くなっちゃったりとか、そういう時でっ」
「そうですか。それはとても残念ですね。……私は今、最高に気分がいいのです。あなたをこんなに近くで見つめられるのですから」
「……っ!」
こんなんじゃ私の心臓が保たないよ……
「ひ、響さん……っ」
「……知らん」
寝ている由乃ちゃんの傍で二本目のビールを飲んでいる響さんに助けを求める。
けれど、関わりたくないといった顔でそっぽを向かれてしまった。
面倒臭いからなのか、もしかして、響さんでも手が着けられないくらい厄介なのか。
後者だとしたら、私にどうにか出来るはずがない。
「そのように困惑した表情も、可愛らしいですよ」
ああ……目眩がする、いろんな意味で……
とろんとした表情は、無駄に色気を増幅させていた。
アルコールって恐ろしい……
「このまま、時間が止まってしまえばいい……」
独り言のようにそう呟いて、凪沙さんは私の額に唇を寄せた。
そして本当に時間が止まったかのように、動かなくなった。
動かなく……え?
「響さんっ、凪沙さんがっ」
「寝ているようだな」
「えぇっ」
言われてみれば、微かに寝息が聞こえる。
凪沙さんがバランスを崩して倒れそうになったので、慌てて支えた。
そのままゆっくり横たわらせようとしたのだけれど、凪沙さんの体重に引っ張られて一緒に倒れてしまった。
「っ!?」
さっきよりも酷い体制になっている。
目の前に凪沙さんの寝顔があり、抜け出そうにも私の腕は下敷きにされてしまっていた。
響さんが笑う。
「そのまま朝まで寝ていたらどうだ?」
「そ、そんなの寿命が縮みますっ!助けてくださいっ」
「……助けると思うか?俺が」
意地悪な笑みを浮かべて、響さんは寝室へ向かった。
わざわざご親切に毛布を持ってきて(そこまでするなら助けてくれればいいのに……)、さっさと寝てしまう。
電気まで消されてしまったので、もう諦めて眠ることにする。寝れるわけがないけれど。
目を開けているとドキドキするので堅く瞼を閉じた。
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