050
bookmark


 地下二階

 足元の石ころが邪魔だ。
 壁が崩れ落ちているところがある。

 地下一階

 赤い絨毯がよじれている。誰か滑ったのだろうか。
 公司が相当あせっているのがわかった。

 階段を二段飛ばし、

 一階……


 その時、また爆発音がした。
「うわっ」
 あまりに大きな音と横揺れに、ぼくらは思わず床に突っ伏す。
 しかし、幸い公司たちは皆ヴォルトのもとへ行っているようだ。
 今しかない。正面玄関まで、もう少し。
「立って! 走って!!」
 ぼくは皆を起こし、背中を押した。
 足元が揺れる。天井が落ちてきそうだ。
 皆が頭を守りながら、「久々に日の光を見た!」などと歓喜の声をあげている。
 ぼくは皆を押しながら、少しでも早くと前に進めさせた。
 あの螺旋階段が見えてきた。
 ぼくらは駆け足で降りながら、どうしてこの階段がまっすぐに下まで伸びていてくれないのかと、音を鳴らして階段を踏みしめた。
 そしてついに、つめたい大理石の床へ、足をつく。
 あとは、扉まで一直線だ!
 しかしその時、建物全体が崩れそうな、いっそう大きな爆音が響いた。
 巨人に公司館を振り回されたような衝撃に、ぼくらは再び床を転がる。
「なんだ!?」
 ボルドアさんが立ち上がろうとしていたぼくの首を引っつかみ、床に押しつけた。
 ぼくは石の床に頭を強く打ちつける。目から火花が散った。
 何が起きたんだ!?
 さっきの爆発音は今までとはまるで違った。まるで、ぼくがゼルダを壊した時、放った最終兵器のような。
 ぼくらが、一番大きなダメージを受けたときに、勝手に放たれるあれだ。
 その威力は証明済みだ。壁に大穴を開け、公司館の側にあった建物をも全壊にした。
 そしてどんな機械よりも丈夫にできているぼくらの体を、跡形もなくばらばらにした。


 それを使うほどの、ダメージを受けた……?


 ぼくは振り返った。
 今なら行ける。ヴォルトのもとへ、助けに。
 だけど、今ぼくは皆を逃がさなければいけない。
 どうしよう、どうしたらいい?
 ヴォルトが壊されるか、
 皆が再び捕まるか、

 ぼくが壊されるか……――

 ――マルシェさんはどう思う?

 マルシェさん?

 ぼく……今まで、マルシェさんの背中を押していた?

「……マルシェさんは!?」

 ぼくが振り向くと、皆一斉に振り向いた。
 そして再びぼくに目を戻し、青ざめる。

 居ない。


 マルシェさんが居ない!



next|prev

[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -