028
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 ダダダダダダ...



 バタン、ガシャン、



 ゴツッ……




 ガン、ガン、ガン、



「おい! おい! マルシェ! マルシェ=マコルフィー!!」

 うるさい奴が来た。

 俺はまだ眠たかった。他人に起こされるのは、大の苦手だ。
 擦り切れた布を体に巻きつけ、うるさい音に顔を顰め、寝返りを打つ。
「マルシェ! おい! 起きろよ!!」
 誰の声だ? 寝起きは頭がどうも冴えない……。
「おい! おい!! マルシェ!」
 あぁ、わかった――うるさい奴だ。
 やれやれと起き上がり、手首と足首に巻きついた鎖を解き、牢獄の入り口まで這う。
 冷たい鉄のパイプに捕まり、体を持ち上げる。
「ああ、何だよ、うるさい。俺は耳まで壊れちゃいねぇぜ」
 俺は金属音を反響させる耳を叩き、唸るように言ってやった。
「……あ……あいつが……!」
 そいつは、息が詰まったような声を出して、俺の体に巻きついたボロきれを引っ張る。
 牢から出られるわけがねぇのに。わけがわからない。
「顔は、どこだ」
 手を伸ばし、そいつの顔に当てた。
 眉間にしわが寄っている。それどころか、顔中歪んでいるじゃないか。
 それに、額が割れている。さっきのうるさい音は、転んだ音だ。
 必死だな。何か急いでいる。
 頬が動いている。口を震わせているな。何が言いたいんだ。
「何だ、どうしたんだよ」
 かなり慌てた様子を感じ取り、俺は眉を顰める。
「あ……アランが……!」
 いつもの威張りくさった声とは違う、引きつった声だ。
 しかも、かなり小さい。俺は耳をすませる。
 必死に声を出そうとしているが、どうやら必死のあまり、喉の奥で詰まっているらしい。
 俺は背中を叩いてやる。そうして、やっと言葉を吐いた。

「……アランの記憶が、消されちまった……!」



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