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Very Merry Christmas!!





Very Merry Christmas!!



「そしたらカップルが来てさあ」
「はあ」
「俺の隣1つ空いた席にその彼女が座るわけ」
「うん」
「そしたらもう俺立つしかねーじゃん!だから俺彼氏に席譲ってやったよ」
「へえ」
「恥ずかしいから電車降りたけどさ…
俺もうクリスマスに負けそう…」
「ふーん
あがり」
「えっアカギあがり!?何時の間に…
俺と平山の一騎討ちか…」

なまえはカードを机の下に隠し念入りにシャッフル中である
やがて平山の前に手のひらを合わせてカードをはさんだまま差し出す

「上下どっち!」
「上」
「…」
「上」
「ダメ」
「え!?いや、上!」
「下?」
「うえ!」
「ダメーっ!」
「ダメじゃねーし!出せって!」
「やめろおおお!」

結局ハートの3は平山のダイヤの3とペアになり、なまえの手にはジョーカーが一枚残った
あーあー!やってらんね!と後ろに寝転がるなまえ
そう、今日は天下のクリスマス!!
だが、この男3人には華々しい予定などなく、なまえの家で絶賛ババ抜き中なのであった
普段の日と変わりばえしないクリスマス
自然と酒に手が伸びる

「ってかさあ〜、お前らクラスのやつとかとクリパあげぽよ〜☆みたいなのしないの」
「なんだそれ…」
「別に、しないけど」
「ふーん、お前らなら女の子から声かかってもおかしくないのにな」
「アカギはともかく、オレにはかかんねーよ」
「えっなんで??」

ごろごろ体勢のまま不思議そうに聞くなまえに平山は毛布を投げかけながら答える

「なんでって…オレそういう感じじゃないし…」
「平山ってモテるんだよ、知らないの?」
「へえ、良かったな凡夫」
「えっ…いや、それはない
アカギは黙れ」
「あるって!平山見た目不良チックだけど案外いいやつだから、気になるよねえ〜!ねえ〜!って女子言ってたよ」
「へ、へえ…」
「凡夫の人徳だな」
「黙れ」
「わかる、お前案外いい奴だよなあ…嫁に欲しいよ」
「えっ…よ、嫁?
…どっちかっていうと、先生がオレのごにょごにょ…」
「アカギも今日予定真っ白だったの?」
「誘われはしたけど、気がのらなくて」

悔しげに無言で床をだんだん叩くなまえをアカギは指差し笑う
平山がさきイカを与えると大人しくなるが目はアカギを威嚇したままである

「気がのらねえだとおっ…!
こっちは…その気満々でも誘いがねえってのに…っ!」
「そうだろうな、と思ったから来た」
「ありがとよちくしょう!」

ぐい、と酒を煽るなまえ
実はこの時アカギと平山もすでに酒を飲んでるのだがなまえは酔いが回ってきたのか全く気づいていない

「じゃあさー、パーっと出前でもとろっか」
「それがいいっすね、腹減ったし」
「ふぐさしがいいな」
「もういいよふぐでもなんでも
だって今日はクリスマスだぜ!?」

さっきとは打って変わって元気になりだしたなまえ
るんるんと電話片手にチラシを広げたその時、玄関のベルが鳴った

「はーい?誰だろ…」

平山とアカギが耳をそばだてる中、聞こえてきたのはいつもの声だった

「なまえちゃんメリークリスマス!!」
「わーっ佐原すげーっ!!メリークリスマス!!」
「ちょっお前ら声でかいっ…!」
「恥ずかしいやつら…」

玄関でなまえを待っていたのは、
真っ赤なサンタ帽を被ったニッコニコの佐原と、はずかしげに慌てるカイジ、呆れ顔の一条だった
男3人、閑散としていた部屋は、相変わらず華はないものの一気に賑やかになった

佐原「食うもん沢山買ってきた!」
なまえ「佐原ありがとーな!!超可愛い!!」
カイジ「えっもしかしてなまえもう酒入ってる…!?」
平山「だいぶ前から」
カイジ「うお!?お前ら来てたのか」
アカギ「カイジさんはあの帽子、被らないの?」
カイジ「か、かぶるかよあんな恥ずかしいモン…!」
アカギ「残念、クク」

なまえのあがりかかっていたテンションはここにきて急上昇した
帽子をかぶった佐原が気に入ったらしく、やたら可愛い!だの佐原!だのと構っている

「じゃあなまえちゃんにもあげますよ!もうひとつ余ってましてw」
「わっ」
「あっはは、似合う似合う!浮かれっぷりがイイ!」
「えっへへ、ありがとう佐原ー!」
「わーなんか今日なまえちゃんが素直なんだけどーwクリスマスすげーw」

カイジ「…なあ、なんであそこもう出来上がってんの」
平山「さあ…つーかあれで佐原がシラフっていうのが怖い」
カイジ「ごめん、あいつわりといつもあんなかんじ」
平山「…」

ちょっと青くなる平山をよそにきゃっきゃとはしゃぐなまえの帽子の先をぐい、と一条が引っ張った

「みょうじ、紅茶」
「なにいってんだよ一条〜、今日はお酒でしょ?」
「そんなまっずい安酒飲めるかよ」
「ええー、仕方ねーなあ…えーっと茶葉茶葉…」
「アホ、何処探してんだよ。ここだろ」
「あっそうだ、そこそこ!えーとポットポット…」
「バカ。こっち」
「あそっちか。そしたらやかん…」
「…もうお前向こう座ってろ」

結局一条によってキッチンを追い出されたなまえ
周りのメンツは不思議そうにその光景を見ていたが、なまえは相も変わらず真っ赤な帽子の下でニコニコしている


「はいっではみなさんグラスを持ってー!」
「筆頭のなまえが缶チューハイだけどな…」
「違いますよカイジさん、あれはなまえちゃんにとってグラスなんです」
「乾杯!メリィークリスマース!!」

一斉に各々の飲み物を傾けた

「っかー!!うまーい!!」
「なまえちゃんおっさんみたいっすよ」
「ふふ、え?俺が素敵なおじさまみたい?」
「ダメだもう出来上がってるw」
「なまえお前そろそろ酒やめとけよ」
「やだ」
「やだって…子供かよ!」
「ちょっと、先生ー」

隣の平山に完全に寄りかかってくつろぐなまえからは甘ったるい酒の匂いがする
その時一条がなまえの手からチューハイ缶をとりあげた

「ああ〜」
「飲み過ぎ!お前はしばらくこっち」
「あ、紅茶」

なまえからとりあげたチューハイを一口飲んでやっぱりマズイと言いたげに首をかしげる一条
なまえはおとなしく紅茶を飲んで今度はあ"〜とため息を漏らす

「あったけー…」
「今度はじいさんみたいになってるぞ」
「平山のおかげで暖まりました」
「…」

ぎろ、となまえに睨みをきかせる一条と気づかないなまえに冷や汗をかきながら、
平山は鳴り響いたインターホンにこれ幸いとばかりにいち早く腰をあげた
背もたれがなくなって転げたなまえをまるでクッションを扱うようにアカギが引っ張って寄りかかった

なまえ「出前きた!!」
アカギ「そうだね、ふぐさしきた」
カイジ「あ、お前らも出前頼んでたの?」
なまえ「うん、ふぐさしを!」
一条「クリスマスにふぐってチョイス初めて見た」
平山「あとピザも来たぜ」
なまえ「おおーきたー!!」
佐原「すげークリスマス仕様じゃん!!」
カイジ「クオーターのLLサイズっ…!さすがクリスマスっ…!!」
なまえ「この明太エリア俺の〜!」
佐原「じゃあオレアボカドエリアー!」
カイジ「オレシーフード!」
平山「とかいってお前らどうせ全部食わねえんだろ」
アカギ「オレはふぐがあればいいや」
一条「お前のふぐへの執着なんなんだ」
アカギ「なまえ、これあけていい」
なまえ「おおいいよ!俺とりわけてあげる!」

ニコニコと動くなまえに一同いやな予感を隠せない
はい!と差し出された皿には、
チキンと、チキンと、ピザと、チキン

アカギ「なまえ、ふぐ」
なまえ「いやー、アカギ栄養たりなさそうだからさあ」
平山「いやこれは逆にまずいだろ」
アカギ「なまえ、ふぐ、食べたい」
なまえ「仕方ねーな〜、ほい、あーん」
アカギ「ん、ありがとう」
佐原「なにいいその手があったか…!」
なまえ「平山にもよそってあげる!」
平山「えっいや、オレは…!」
なまえ「はい!残すなよ!」
平山「えええええ、いや、うん、ありがとう…」
カイジ「ぷ、ピザ三連発!アッハハ!」
佐原「フグ乗せピザ新しいー!」
一条「残すなよ、ププ」
平山「(いい加減酔い覚めろよ先生ーっ…!)」

しかしなまえの酔いはなかなか覚めないのか、今度はカイジのためにピザの上にサラダとふぐ刺しをサンドし、チキンの横に綺麗に盛り付けている
まるでスイーツ選手権かなにかのようにドレッシングをかけていくなまえ
三ツ星ホテルのシェフよろしく、目が本気である
本人は至って真面目なので誰も何も言えない

佐原「これカイジさんのっすよ!」
カイジ「えっ…いや、オレはいいよ!一条がもらえば?」
佐原「じゃあ一条サンにオレとなまえちゃんからのクリスマスプレゼントv」
一条「オレももうたくさんだ
みょうじ、佐原が食べたいってさ」
なまえ「じゃあ佐原にあげるよ、はい!」
佐原「嘘おおおおwどうしてこうなったーww」
なまえ「はい、あ〜ん」
佐原「あ、幸せ」

結局絆されてなまえの即興創作料理を噛みしめる佐原
黄色い声はないのだが部屋が爆笑で喧しくなる中、平山があ。と声をあげた

平山「ケーキ忘れたな…うっかりしてた」
アカギ「けーき?」
佐原「やっぱクリスマスと言えばケーキだよな!」
カイジ「ああ、だから買ってこうかと思ったんだけどよ…」

ちろ、と意味ありげに一条を見るカイジに全員の視線が一条に注がれる
当の一条はしれっとしてなまえの方を見た

「ほら、リクエスト出てるぞ」
「ええ〜なんでバレてんの〜!?」
「え、なに?どういうことだよ」
「アカギ!ちょっと!」
「なに」

ちょっとふてくされてそばにいたアカギの腕を掴んで席を立つなまえ
やがてなまえが持ってきたのはちょっと大きめの箱だった
アカギは皿やらナイフフォークその他もろもろを持たされている
にやにたしながら箱をテーブルに置いて箱の蓋に手をかける

「いいかお前ら、これが俺のクリスマスプレゼントだあーっ!!」
「うおおおおすげえええ!!」

そう、なまえが持ってきたのはお手製のクリスマスケーキデラックスである
綺麗に並んだ生ホイップや苺、雪のように滑らかなクリーム
それが二段に重なってキラキラと輝いている
皆ケーキを覗き込んでこれまた決して高くはない歓声をあげた

なまえ「ふふん、どや!」
カイジ「えっまじこれお前一人で作ったの…!?」
なまえ「もち!見たか!!」
平山「相変わらず甘いものには余念がねえな…」
アカギ「売ってるやつみたい」
なまえ「え、そ、そうかな?へへ…」
一条「お前年々クオリティ上がってるな…」
佐原「いよっ一流パティシエ!!」
なまえ「ちょっやめろよ、照れるだろ///」

そしてどこからかハート型のロウソクとプレートを取り出した

佐原「wwwなにそれwww」
平山「クリスマスとロウソク関係無くね」
カイジ「ハートなんてやめろっ…!ピンクのハートなんてっ…!」

お構いなしにグサグサと6本のロウソクを刺し、プレートに好きです、と書いて飾った

アカギ「なにこれ」
なまえ「俺からお前らへのメッセージ」
一条「意味わからん」
なまえ「アカギ、ライター!」
アカギ「ん」
平山「おい」
なまえ「いくぜお前ら!!
世の中のカップルども!!幸せになりやがれええーー!!!ふうううう!!!」

ロウソクつけて消す必要はあったのか?というツッコミは真っ暗になった部屋に響くなまえの楽しそうな笑い声にかき消された



→アカギEND
→カイジEND
→一条END
→佐原END
→平山END



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