二枚のチケット

桜の木の下での後の話、オリキャラ注意

○二枚のチケット

晶馬視点

「高倉弟ー!」

ガバァッと背中に強い衝撃とずっしりとした重みを感じた。この友人はどうして毎度毎度、飛びついてくるのだろうか。

「山下・・・・」
「なぁなぁ見てよコレ!」

さっと友人が取り出して見せたのは、二枚のチケット。プリントされている文字を読む。どうやらそれは、全米で大ヒットを記録したという洋画アクション映画の無料券らしい。

「女の子でも誘うの?」

この友人山下洋介は、常に女の子とお近づきになろうと一生懸命だ。うちのバカ兄貴にも女の子を紹介しろとよく迫っている。冠葉といい山下といい、どうしてそんなに女の子と一緒にいたいのだろうか。いや、別に僕だって女の子はキライではないけれど・・・・。

「違う違う、これに誘いたいのはお前だよ」
「は?」
「女の子もいいけど、俺は友情も大事にしたい・・・・」
「あぁ、振られたのか」
「シャーラップ!」
「・・・・」
「振られたんじゃない、断られただけだ!」
「同じでしょ」

そういえば、そもそも女の子を映画に誘うのに洋画アクションはアウトだという話を聞いたことがある。まぁ、女たらしな冠葉の受け売りだけど。自分たちに同調できそうなラブストーリーに連れて行くべきだ、といつだったか力説していたな。そんな話を伝えたところ・・・・

「この映画は!アクションも素晴らしいけれど、何がいいって濃密なラブストーリーか組み込まれているところが人気の秘密だ!」
「濃密なラブストーリー?」
「そう!」

山下曰く、刑事の主人公と犯罪組織の女幹部の許されない恋を描いた作品であるらしい。更に女幹部は犯罪組織のボスの愛人で・・・・。

「うわぁ、ベタ」
「それがいいんだよ」

決定!とにかく決定だから日曜日の10時に駅前で!と続けて、山下は僕の右手をとり小指を絡ませた。いわゆる指切りげんまんである。

「ゆーびきーりげーんまーんうっそつーいたーらはーりせーんぼーんのーますっ、ゆーびきった!」

ニヘラニヘラと阿呆面して笑っている。

「楽しみだな高倉弟!」
「あーはいはい」

その時、ガタンと背後から大きな音がした。振り替えると、立て看板の後ろに大きな体をした男がいた。見覚えがある。

「あ、あなたは・・・・」
「やっぱり晶馬たんは、その男の手込めに・・・・」
「ん?どちらさん?」

男は拳を握りしめふるふると震えている。そして首を傾げている山下に人指し指を勢いよく向けて、とんでもないことを言い放った。

「晶馬たんは俺の嫁なんだからなっ!」
「よめ?」
「お前から奪い取ってみせるぞ!正義は必ず勝ぁぁぁつっ!」

いや、奪い取ったら正義じゃないんじゃないだろうか。僕は言い逃げをする男の背中を見ながら、そう思った。

おわる

女の子を映画に誘うときは云々は、私の勝手な想像です。
巻き込まれ山下くんでしたwwwww

2011.11/2

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