愛されたがり

CP無し

○愛されたがり

晶馬視点

「恥ずかしがりやとか目立ちたがりやとか、そういうのはみんなただの愛されたがりなんだ」
「突然、何?」
「あいされたがり?」

天気の悪い日曜日、昼食を食べ終え、三人でくつろいでいるときに、冠葉が突然語り始めた。愛されたがり?何の話だ。

「昨日、女に振られた」
「当然の報いだな」
「別に俺が何かしたわけじゃねーよ!今回はめちゃくちゃ大事にした!」
「今回はって何だよ!?」
「と、とにかく俺は何もしてねー!あっちがいきなり平手打ちしてきやがったんだ!」
「やっぱり冠葉がなんかしたんだろ!」
「覚えてねー!!」

「あーもー!冠ちゃん晶ちゃんストーップ!!」

陽毬による鶴の一声で、ピタッと口論が収まる。

「そういう痴話喧嘩はあとでやってね。とりあえず、冠ちゃんが女の子に振られた話とそのあいされたがりの話はどうつながるの?」

陽毬の問いを受けた冠葉は、ふいっと明後日の方向を見つめると、「実はな」と切り出した。格好つけんなバカンバ!

「実はな、昨日、女に振られたんだ」

それはもう聞いた。とかここで言うとややこしくなるんだろうな。僕はだんまりを決め込む。

「でな、俺を振りやがった女はいわゆる構ってちゃんだったわけだが・・・・あ、二人とも構ってちゃんってわかるか?こっちの都合なんてお構い無しに構って構ってとしつこいメス豚、あぁいや違う、可愛らしい女の子のことさ。陽毬、間違っても俺と晶馬以外に構ってとか言うなよ」

酷い言いようだ。めちゃくちゃ大事にしたと言うわりには、元カノのことはそんなに好きではないらしい。振られた理由ってそれじゃね?

「で、その構ってちゃんは恥ずかしがりやか目立ちたがりやだったの?」
「さすが俺の弟!そのとおり、あいつ照れ屋でさ、ちょっと髪に触れたりするだけで頬を染めたり、人前で自分の話をする時にもじもじして何も言えなくなったりするんだ」

そこがまた可愛かったんだけどな。と続けている割りに、冠葉は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。あまりいい思い出は無かったのだろう。

「恥ずかしがるって言うのはさ、私はか弱い女の子で、貴方以外には素直に自分をさらけ出せないのよって言うアピールなんだ。だけどそれは、裏を返せば貴方だけはずっと私のそばにいてって意味になる」
「貴方だけ?」
「つまり依存ってことかな」

依存、か。僕は、冠葉と陽毬だけは離れていかないでほしいと思っている。確かにこれは依存だ。

「で、目立ちたがりやだが・・・・陽毬、わかるか?」
「う〜んと、目立ちたがりや・・・・目立つことで自分を見てほしいアピール?」
「正解!さすが陽毬!」

うわぁ、すっごくデレッとした顔。お前は頭がいいなぁとか言って、ぐりぐりと頭を撫でている。ちょっと、陽毬がぐしゃぐしゃにしないでーって喚いてるよ。

「いま陽毬が言った通りだ。あえて人前に出て騒いだりすることで、多くの人に自分を見てほしいんだな」

目立ちたがりやと言って思い当たるのは山下くらいか・・・・。

「だからつまり、恥ずかしがりやとか目立ちたがりやとかは愛されたがりだって話だ。わかったか?」
「まあ、言いたいことはだいたい理解した」
「よくわかりましたー」
「そうかそうか、じゃあこの冠葉先生のありがたいお話の拝聴料として、晶馬、なんか食い物作れ」
「何で?」
「だからありがたいお話の拝聴料だって」
「ったくもう、勝手に話したんだろう」
「ふふふ、ねぇ晶ちゃん、私おやつにホットケーキが食べたいな」

うっ・・・・冠葉はともかく陽毬のご所望とあらば、兄として断るわけには・・・・!陽毬を味方につけてご機嫌な冠葉が、僕の肩に腕を乗せて顔を近づけてくる。

「晶ちゃ〜ん、ホットケーキよろしく」

ムカつく。

「・・・・仕方ないなぁ」

わざとらしく大きなため息をついて、僕は立ち上がった。

おわる

愛されたがりの話も、恥ずかしがりやとか目立ちたがりやとかの話も、全て私の想像です。

2011.11/08

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