あの頃の夢

五話派生、捏造

○あの頃の夢

晶馬視点

嵐の中、陽毬を病院へ連れていくために父さんが駆け出して、冠葉はそれを追っていった。僕は母さんに止められてしまい、仕方なく家の中で待つ。陽毬は大丈夫だろうか、冠葉は父さんに追い付けただろうか、強い風に飛ばされてはいないだろうか。心配で心配でたまらない。不安に押し潰されそうだった。母さんも落ち着かない様子で手を動かしている。せっかく編み込んだセーターをほどいてしまっているが、母さん自身、そのことに気がついていない。そっと母さんの手を握ってそれを止める。

「それ、父さんに編んでるやつでしょ?ほどいちゃダメだよ」
「あ・・・・そ、そうね、ありがとう晶馬」

強張っていた母さんの顔が少し緩む。僕の手を握り返して「早くお父さんから連絡が来るといいわね」と優しく微笑んだ。

パチッと目を開けて枕元の時計を見る。深夜2時14分、懐かしい嫌な夢を見た。隣から冠葉の寝息が聞こえる。安らかな寝顔とは言い難い。微かに眉を寄せている。いったい何の夢を見ているのだろう。

「そういえば、あの時ケガをしそうになったって言ってたっけ」

鏡が飛んできて父さんに庇われたとか・・・・思えば、あの頃から冠葉は変わったんだ。何があったか詳しく聞いていないけど。

「眠れないのか?」

再び静寂をやぶったのは冠葉の声。しまった、起こしちゃってたか。

「あ、ごめん・・・・」
「ケガをしそうになったって誰の話だ?」
「昔を思い出してただけだよ」
「昔?」

聞きたいような聞きたくないような微妙な目をしている。そりゃそうだ。昔の話なんてたいてい両親が絡んでくる。その話題は僕も冠葉も、意識的にいままで避けてきた。

「何でもないから、大丈夫」
「・・・・昔っていつの話だ?」
「大丈夫だって言ってるのに」
「いいから話せよ」

吐いて楽になっちまえ。冠葉の口調が荒くなった。上半身を起こして、ポンポンと僕の体を優しく叩く。

「後悔するかも」
「してもかまわねぇから話せって」
「・・・・陽毬が、嵐の日に熱出したことがあっただろう?あの時のことを思い出していただけだよ」
「あぁ・・・・」

冠葉の手が止まる。やはり何か思うことがあるのだろう。

「お前は、母さんと家に残ったんだよな」
「捕まっちゃってね」

再び、辺りが静寂に包まれる。そのまましばらくは、どちらも言葉を発せないまま沈黙していた。おおよそ5分くらいだろうか、口を開く。

「もう寝なくっちゃ」

明日も学校がある。寝坊して遅刻などしたら山下あたりにからかわれることは必須。

「そうだな」

冠葉が布団に潜ったことを確認して、固く目を閉じた。

「おやすみ」

一晩たって嵐が止み、僕と母さんは朝一で病院に向かった。深夜、父さんからかかってきた電話で、陽毬も冠葉も無事だと聞いていたからか、母さんは落ち着いている。

「今日の晩ごはん、何にしようかしらね」

道中、母さんが僕に問いかけた。

「陽毬の好きなやつがいいよ」
「そうね、晶馬は優しいお兄ちゃんね」
「冠葉は?」
「もちろん冠葉もよ」
「父さんも?」
「えぇ、お父さんも優しい人だわ」
「陽毬も母さんも優しいから、うちはみんな優しくていい人だね!」

母さんはクスクス笑ってそれに同意した。

パチッと目を開けて枕元の時計を見る。朝の7時00分、昨夜の夢の続きを見た。隣から冠葉の寝息が聞こえる。やはり、僅かに眉が寄せられている。安らかな寝顔とは言い難い。さぁ、朝ごはんを作らなければ。僕は布団を畳んで、洗面所へ向かった。

おわる

よくよく見たら、私の話っておんなじパターンばかりですねorz
夜の寝床wwwww
そういえば、双子の寝床は居間でしたっけ。

2011.10/31

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