桜の木の下で

CP無し、微オリキャラ注意

○桜の木の下で

      冠葉視点

俺たちが通う高校にはこんなジンクスがある。裏庭にある桜の木の下で告白すると、その想いが相手に通じる(可能性もある)というなんともありきたりなジンクスだ。そもそも、うちの高校は男子校であるにも関わらず、なぜこんなジンクスがあるのか。それはつまり、そういう趣味の人もいるということだ。ごくまれに、まるで女のように愛らしい顔をした生徒が入学してくることもあるそうで・・・・。かくいう俺、高倉冠葉の双子の弟高倉晶馬も、恋に飢えているクラスメートの山下洋介にも「女より可愛い」と言わしめるほどの女顔であった。本人は気にしているようだが。

「下駄箱に手紙が入ってたんだ」

そんなある日、晶馬が困惑気味にそう言った。白い縦長の封筒に、緑色のペンで『高倉晶馬さまへ』と、綺麗とは言い難い不恰好な文字で記されている。

「まだ中は見てないんだけど・・・・果たし状とかだったらどうしよう」

そういえば、昔付き合った女が緑色のペンでラブレターを書くおまじないがあるって話をしていたな。「僕、誰かに恨まれるようなことしちゃってたのかな。どうしよう」と泣きそうに顔を歪める晶馬を見て、なぜかふと思い出した。

「まぁ待て。そうとは限らないだろう。まず手紙を読んでみろ」
「う、うん」

不安で不安でしょうがないみたいな表情のまま、晶馬が手紙を取り出した。声に出して読ませる。

「"高倉晶馬さま。本日の放課後、裏庭の桜の木の下でお待ちしております。必ずお越しください。"・・・・これ僕ぜったい殴られる!」

サーッと一気に青くなる弟。いや、これは果たし状じゃない。間違いなく告白の呼び出しだ。ていうかお前、裏庭のジンクスを知らないのか?

「殴られることは無い。ぜったい無いから安心しろ」
「ホント?」

ここは男子校で、女に飢えた男どもの巣窟だ。たとえ男だとしても、女顔の晶馬に恋する奴だって少なくないのだろう。予感はあったがまさか告白をしようという度胸のある奴がいるとは・・・・。

「じゃあ何の呼び出しだろう?放課後、行った方がいいのかな・・・・」
「・・・・」
「あ、でも今日は牛肉の特売日だ」
「・・・・」
「すぐ終わる用事ならいいんだけどな」

流石、我が家の主夫。放課後の予定がスーパーの特売品を買うこととは。家事、まかせっぱなしですまん。

「俺も一緒に行ってやるよ」
「え?」
「その後スーパーの買い出しにも付き合う」
「え!ホントに!?ありがとう冠葉、助かるよ」

満面の笑み。我が弟ながらこりゃ確かに可愛い。だがこの可愛さがお前が女にモテない理由で、更に男に告白される理由だと自覚しとけ。

そして放課後

俺たち二人は手紙の指示通りに裏庭へ。わざわざ男に惚れるくらい恋愛に疎い奴といえば、部活一筋の脳キン族か、勉強一筋のガリ勉野郎か。たとえ鍛えられた逞しい体つきをしていても、賢そうな眼鏡をかけていても晶馬は渡さん!と、何だろう、兄なのに父親のような心境になる。一体どんな奴が待ち構えているのだろう。

「あ、晶馬たん来てくれた!ボクちん超感激!」
「「・・・・」」

そこにいたのは、逞しい体つき(脂肪で)をしていて、賢そうな眼鏡(少し汚い)をかけているものの、脳キン族でもガリ勉でもない・・・・オタクだった。畜生予想外だ。手紙の文面からして部活か勉強に真面目な奴だと思ってた。

「えっ、と・・・・どちら様ですか?」
「晶馬たんが声かけてくれた!声もテラかわゆすー!ていうかお兄様が一緒とか仲良し双子萌えwwwww」

何なんだこのテンションは・・・・。

「・・・・ご、ご用件は?」

長引かせれば面倒くさいことになると悟ったのか、晶馬は用件を聞いたらすぐ立ち去る体制に入る。

「えっ、あ・・・・そのぉ」

オタク野郎は頬を染めてもじもじする。チラッチラッと晶馬を何度も見、ニヘラと笑う。正直、気持ち悪い以外の何物でもない。晶馬の様子を窺うと、手紙を受け取った時以上に困惑しているようだった。これは相手が何かを言う前に連れて逃げるか、と思い始めたその時・・・・

「たーかーくーらーツイーンズ!」

ガバァッ

「「山下!」」

ものすごい勢いでかけてきて、晶馬に抱きついた。いつものことながらこいつは空気を読まないな。

「晶馬たんが、晶馬たんが・・・・既に男の手込めにされていただとぉぉぉ!」

オタクは何を勘違いしたのか、涙目でその場を走り去った。抱きついただけなのに、そこから山下の手込めにされる晶馬を想像するとは・・・・オタクの想像力の豊かさは面白いな。

「ん?今の誰だ?あ、それより聞いてくれよ!今度の日曜日に桜花御苑の女の子たちとの合コンが決まりましたぁぁああ!」
「あぁそう」
「よかったな」

山下のKYさに救われた、と言うことだろうか。まぁ何にせよ、この結末はこれでよかったのかもしれない。

おわり

落ちが落ちないorz

2011.10/22

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