悲しん坊が一人

コレの続き

授業が長引いた。教授といい准教授といい講師といい、どうしていつも話が脱線するんだ。要点だけかいつまんで解説してくれたら、あとは自分で理解できるのに・・・・。昨日、勘右衛門からのメールを受けて、久しぶりに仲良し五人組が集まることになった。三郎と雷蔵が駅に彼を迎えに行って、授業のあった俺やバイトを入れていた八左ヱ門があとで合流する予定である。夕飯は鍋をみんなでつついて、そのまま明け方までパジャマパーティーをするから、行きつけの豆腐屋さんに寄って鍋用の豆腐と夜食用の豆腐を買い込むつもりだった。なのに、授業が長引いたことにより電車を一本逃しそうだ。あと三分で発車する電車に乗らなければ豆腐屋さんの閉店時間に間に合わない。大学から最寄りの駅までは普通に歩いて七分弱。教科書で重い鞄を持ちながら走って間に合うだろうか。

フシュー

目の前で扉が閉まった。なんてことだ。頭が真っ白になる。俺は間に合わなかったのか・・・・!とりあえず息を整えるために待合室の椅子に腰かけた。時間的にあいつはそろそろバイトが終わった頃だな。携帯を取り出してコールする。

『はい、兵助?』
「はっちゃん・・・・俺もうダメだ」
『え?』
「勘右衛門に会わせる顔がない」

絶望にうちひしがれながら伝えると、向こうから心配そうな声が返ってきた。

『ど、どうしたんだよ?』
「電車に乗り遅れて、うまい豆腐を買うことができなかったんだ・・・・!」

目頭が熱くなってきた。

『・・・・ばかやろう』

呆れたような声、小さく、とんでもないことやらかしたのかと心配しちまったじゃねーか、と聞こえる。

「豆腐を買い損ねたんだ!とんでもないことだろう!?」
『あー叫ぶなうるっさい』
「いいか、買い損ねた豆腐はな、大豆から良い材料を厳選して作っているのに格安で学生の財布に優しい良い店なんだ!」
『はいはい、どうせいつもの店だろう?』
「いつもの店だよ!」

高校生のころから何度も言って聞かせたから、あの豆腐屋さんのことは八左ヱ門も知っている。どうせってなんだよ、失礼な!こっちは生きる気力を無くしかねないいきおいだと言うのに。文句を言おうと口を開いたが、あちらの方が少し早かった。

『じゃあ俺が代わりに買っといてやるよ。何丁だ?』

そうか、その手があったか。希望の光が見えてきた。わざわざ俺が自分自身で買わなくてもいいのだ。良い豆腐は店のおじさんが選んでくれる。お前は天使か!と言ったら気持ち悪いことを言うなとばっさり切られてしまった。

「すぐ買えるのか?」
『いまバイト先出たところだから、あと10分くらいで行けるけど』
「絹ごし五丁と木綿三丁頼む!」
『わかった』

じゃあまた後でな、と電話を切る。電車がくるまであと数分、嗚呼、早くみんなと豆腐をつつきたいな。


つづくかな?


2012.5/23

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