疑似夫婦と豆腐小僧

下ネタ有り

○疑似夫婦と豆腐小僧

「あー、彼女欲しい!」
「何言ってんだよ。お前には勘右衛門がいるじゃないか」
「は?」

本気で、こいつの大好きな豆腐を顔面にぶつけてやろうと思った。
いまだ夏休みまっただ中の今日、我が家に大学の友人である久々知兵助が遊びに来ていた。勘右衛門が呼んだのだが、当の本人は台所を占領して何か作っている。時折、トントントンと軽快な音が耳に入ってくる。

「もしかして欲求不満なのか?勘右衛門はあんまりしてこないの?」

何を?と聞くのも恐ろしい。この兵助、真面目が過ぎるくらい真面目で、いままでつるんできて彼が冗談を言うところなど見たことがなかった。現に今も目が真剣である。友人の悩みを解消するのだ、と顔に書いてある。

「な、何言ってんだよ兵助・・・・」
「そうだよな。息子が二人も同じ屋根の下に居てヤることはできないよな」
「いやいやいやマジで何言ってんの!?」

この前の三郎ならまだ家族ごっこに悪のりしただけと割り切れるけど、兵助にこんなこと言われたらどうしていいかわからない。とりあえず、家族ごっこはあくまでごっこであることをご理解いただくしかないか。

「あのな兵助」
「何だ?」
「別に俺と勘ちゃんは本当に夫婦になったわけじゃないし、喜八郎と孫兵も息子なわけじゃないぞ」

ゆっくりと、言葉を丁寧にしっかり染み込ませるように吐く。

「わかっているさ」
「本当に?」
「あぁ、わかっている。まだ日本では同姓婚が認められていないからお前たちは夫婦ではないし、夫婦ではないから養子として二人を籍に入れることができないんだろう」
「・・・・」

ミーンミーンと窓の外から響くセミの声がどこか遠い。俺の説明が悪かったのか?はたまたこいつの頭が固すぎるのか?

「だから、あのな、その家族設定はあくまでも喜八郎が勝手に・・・・」
「まさか」
「何だよ・・・・」
「はっちゃんが夫で勘右衛門が妻だったのか?」
「なにそれこわい」

勘右衛門が妻?あの特徴的な髪で、そこそこ立端もあって、甘味大好き妄想暴走族の勘右衛門が妻・・・・。俺の頭には、スカートをはいてピンク色のエプロンをつけた勘右衛門の姿が浮かんだ。あれ?これはこれで可愛いぞ。

「違うよ〜」

台所から、ようやく作業を終わらせたらしい勘右衛門が戻ってきて、俺の隣に腰かけた。甘い匂いがする。

「俺が夫でハチが妻、ねー」
「ねーって言われても肯定しかねるな」
「もうツンデレなんだから。そんな素直になれないハチも好きだぞ」

つんっと頬をつつかれる。

「勘右衛門、はっちゃんは欲求不満らしいぞ。ちゃんと夜の方も構ってやってるのか?」
「え?」
「だから!兵助それ違うから!」
「息子たちに気兼ねしてできないのなら、俺の部屋を貸すぞ」
「兵助!何ていいやつ!」
「おいこら勘右衛門!」

そんなこと言ったらますます兵助が本気にしてしまうではないか。と抗議しようとした俺を、勘右衛門は半目で睨んだ。

「ハチは玄関で三郎に襲われても抵抗しないくらい欲求不満なんだもんねー」
「抵抗したよ!力で負けただけだ・・・・」
「どうだか。案外気持ちよかったんじゃないの?話によると三郎はテクニシャンらしいから」
「は、腹を撫でられただけだってば!」

何で俺は勘右衛門にこんな弁解をしているんだろう。別に、三郎に触れられたことは友人同士のただのじゃれあいで、勘右衛門に言い訳する必要なんかないはずなのに。

「でも変な声出してたし」
「出してない!」
「痴話喧嘩は俺が帰ってからにしてくれ」
「痴話喧嘩言うな!」
「ごめん兵助」
「ところで勘右衛門」
「なんだい?」
「お前から豆乳の匂いがするのだが」

豆乳ってそんなに強く匂わないはずだが。俺には甘ったるい匂いしか感じられない。

「あぁそうそう。いまね、豆乳プリンアラモード作ってたの」
「豆乳プリン!」
「いま冷やしてるから待っててね」

フルーツもたっぷり盛ってるから、とニコニコ笑う勘右衛門と豆乳プリンに喜ぶ兵助。

「ノリが女子高生だな」
「ハチだって甘いもの好きでしょ」
「勘ちゃんほどじゃありません」
「でもその内、苦いのも好きにしてあげるからね」
「は?」

苦いのって何だ苦いのって。勘右衛門は頬を染め、キャッと顔を背ける。

「欲求不満なんでしょ」
「あぁ、つまり勘右衛門の精・・・・」
「下ネタ禁止ぃぃいい!」

おわり

尻切れトンボorz

2012.5/21

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