寂しん坊が一人
ノンカプ、現パロ
携帯に付けていたストラップを全て外した。いままでじゃらじゃらとつけていたアニメのキャラクターたちは、互いの体に削られ、所々ペイントが禿げている。捨てようか迷ったが、なんとなく勿体無くて机にしまった。何もついていない携帯は随分と軽かった。ふと思い出して電池パックのふたを開ける。ふたの裏側にプリクラが貼られていた。仲間と五人で撮ったものである。前列に同じ茶髪が二つ、後列に黒、灰銀、赤茶の頭が三つ。みんな笑顔だ。落書きはほとんどされていない。唯一書かれていたのは、高校を卒業する前日の日付だった。そう言えば、卒業式を終えてから全く会っていない。自分はその次の日が大学の寮へ入る日で、慌ただしくしていたため出発が事後報告になったのだ。お別れをちゃんと言っていない。ふたを元にもどして新規メールを開く。ひらがなを四文字打って四人に一斉送信。さて、いったい何て返ってくるだろうか。
To:鉢屋三郎
To:不破雷蔵
To:久々知兵助
To:竹谷八左ヱ門
Sub:無題
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[本文]
あいたい
〜END〜
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送信して1分もたたない内に、早速返信があった。せっかく美しい灰銀の髪をしているくせに、手入れをまともにやらないせいでいつもボサボサ頭だった竹谷。彼は仲間内でも意外と手先が器用な方で、メールを打つのも速かった。
From:竹谷八左ヱ門
Sub:Re:
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[本文]
おれも会いたい。
急にどうした?なんかあったか?
〜END〜
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一斉返信になっていた。一人一人とやり取りするのが面倒だろうと思ってか、誰かが一斉送信をすると送り先全てに返信するという手を彼はよく使う。これをみんながやると、なかなか便利なチャットもどきになる。すぐに返信をせずにもう暫く待つ。竹谷の返信から10分して、こんどは優等生だった黒髪の久々知兵助から、竹谷に合わせてか一斉返信でメールが来た。
From:久々知兵助
Sub:俺も
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[本文]
久しぶりに集まりたいな。
勘右衛門、ホームシックか?
〜END〜
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ホームシック、少しでも原因を追求しようとする真面目っぷりは相変わらずのようだ。だが残念ながら家が恋しいのではない。君たち四人が恋しいんだよ。言うなればフレンドシック?それにも返信をせずに更に5分後。
From:不破雷蔵
Sub:Re:
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[本文]
三郎も一緒です。
僕たちも会いたい。
いつなら集まれるの?
〜END〜
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いつなら集まれるのか、聞くように指示したのは三郎なんだろうな。これも一斉返信になっていた。
To:不破雷蔵
To:久々知兵助
To:竹谷八左ヱ門
Sub:Re:Re:
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[本文]
明日、そっち帰るから。
〜END〜
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幸い明日は土曜日、授業は午前中だけだからすぐに向かって夕方には着く。日曜日にみんなが何も無ければ会えるはずである。その後、何度かやり取りをして、暇らしい鉢屋と不破が駅に迎えに来てくれることになった。そのまま一時間ほど時間を潰して、久々知と竹谷がそれぞれ合流、夜は二人暮らしを始めた不破と鉢屋のアパートでパジャマパーティー(竹谷発案)をする予定となった。パジャマパーティーと言っても、ほとんどがジャージやスエットなんだろうけど。少し大きめの鞄を引っ張り出して適当に荷造りを済ます。
あぁ、明日が楽しみだなぁ。
つづくかも
2012.4/21
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[mokuji]
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