ヘタレが好きな子のパンツで自慰してたら泣かれた
「私のパンツ……………」 「げ」
幼なじみの下着で自慰をしていたら本人が来た。南無三。
いや完全に俺に非がある。 就職と同時に一人暮らしを始めたら追いかけるみたいに隣に越してきて、合鍵を渡してきたかと思えば俺の部屋の合鍵を奪い「運命共同体ね」と言い放って入り浸り、俺の部屋の片付けをしたかと思えば自分の部屋の片付けをさせられたり(机の上に秘蔵のエロ本が揃えて置いてあって絶叫した)、冷蔵庫のビールを飲み干し出来立てのご飯のおかずを置いていったり、俺の部屋のバスルームでシャワーを浴びて気付けば専用のシャンプーが設置されてて、「寒いから」と脱ぎ散らかしていた俺のジャージを着てベッドで寝ていた幼なじみ。
だからといって、彼女の部屋の片付けをするときに未洗濯の下着を持って帰って、あまつさえ自慰に使うなんてしていいことじゃない。
察している人もいるかもしれないが、ここまで異性の幼なじみに周囲をうろつかれて飛び回られてまとわりつかれて、それなのにキスの一つすら出来ていない。傍若無人な幼なじみを好きだと自覚したのは随分と前なのに、未だに伝えられずにいる。彼女が帰ったあとのベッドで自分を慰める(ソッチの意味で)のがお決まりの現状だ。
それがどうして下着を使っているのか。気の迷い、とか、つい、とかそういったものである。 本来ならその中身に触れたい、あわよくば嗅ぎたいし舐めたいし入れたい。けれど俺にそんな勇気は備わっておらず、用があるはずの中身・彼女自身に触れることもできないまま使用済みの下着をくすねてオカズにしている。
しかもあろうことか初犯ではない。 最初はちょっと借りて返すはずが興奮のあまり汚してしまい、カピカピになったそれを洗濯して返す訳にもいかず涙をのんで捨てた。それから味をしめてしまい、罪悪感とか背徳感とかが欲望と混じり合い最高のスパイスになった。
で、今、ご本人に見つかったわけだが。
いつものようにベッドでベルトを弛めて前を寛げ、取り出した自身を利き手で擦りながら彼女の下着のにおいを嗅いでいた。そこに音もなく合鍵を使って入ってきた彼女が扉を開けた。 言い訳のしようもない、どこからどう見ても自慰の最中だった。 いつもより顔色が悪く疲れた様子の彼女は更に表情を強ばらせて、俺の手の中の自身の下着を凝視している。
「そ、……それ、私の、パンツ、だよね」
ゆっくりと一語一語確かめるように発音した彼女は下着を指差す。 汗が止まらない。さっきまでビンビンだった昂りもへにょんと元気をなくしてしまい、いたたまれずそっと側の布団で隠した。
「う、うん。ごめ……」 「ああ"あ"あ"ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!! んも ぉおお"お"ーーーーーー!!!!!!!!」 「ヒッ」
頭を抱えて絶叫した彼女にびくりと腰が引けた。 口から出そうになった謝罪は彼女の叫びに遮られた。
「終わんない仕事で残業してさぁ! 上司のパワハラに耐えて! やっと終電で帰れると思って痴漢に耐えて! せめて研二に慰めてもらおうと思って帰ってきたらさあ!! 幼なじみが! 窃! 盗! 犯!! マジふざけんな!! アンタ警察官だろうが! どおりで最近ブラとパンツの数合わないと思ったよー!? しかもそれ一番お気に入りのやつだし! いくらすると思ってんの!? しま○らの3枚999円とかじゃないんだよランジェリーショップでサイズ計ってもらって買ったやつなの! 高いの!! めちゃくちゃ着心地いいからそれ買うために働いてんの!! なのに! 何してくれちゃってんの幼なじみがオナニーに使ったパンツとか穿けるわけないよね!? どうしてくれんのしかもそれ1枚だけじゃないでしょ3枚くらい無くなってたもん!! この際研二の性的嗜好についてとやかく言うつもりはないよ幼なじみが女性下着に興奮してても自由だから! でもね! 盗るのは良くないよね!? 私のだよ!! 私のパンツ!! そういうことに使うなら自分で買ってよ!! 穿いた後のが良いってんならあげるからさあ!! 弁償してよ!! 私のパンツ!!!」 「え、あ、脱いだパンツくれるの……?」 「あげるから買って!!」 「わ、わかった」
この時の俺はもっとこう言い訳だの白状だのしっかりとするべきだった。けれど彼女がどっかりとその場に座り込んで、ストッキングごと下着を脱いで投げつけてきたものだからいろんな意味で何も言えなくなってしまい、検討違いなことを口走ってしまった。わぁまだあたたかい。つい握りしめてしまうが、視線は艶かしい素足、つまりは本来俺が用のある中身に釘付けである。部屋にはまだ、彼女がわあわあと泣きわめく声が響いていた。 戻る
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