このあとドーナツ食べて帰った


「いつもいつもワガママばっかり! ほんっと子供みたい」
「そっちだってないものねだりだよな。 何考えてるか全然わかんない! 何が欲しいのさ」

とあるカフェ(29歳アルバイター勤務地)に男女が二人、いがみ合っていた。
男の方、萩原研二はソファに不遜に腰掛けている。頬杖をついて眉間に皺を寄せていた。そんな表情をしていても台無しにならない顔の持ち主だ。
対して女の方はお行儀良く膝を揃えて座ってはいるものの、つーんと顔をそらしている。

「…………あの二人、放ってていいの? お兄さんたちの知り合いなんでしょ?」

二人の様子を見ていた常連の小学生は、彼らと共に入店していた人間に問いかける。

「気にすんな。それより見てろ、本番はこれからだぜ」

溶けかけのアイスを前に、スプーンを咥えたままの男は顎で二人を示す。視線を追ってもう一度見ると、先程より静かになった店内に呟きが響いた。

「……子供みたいで、ほんと可愛い研二」
「……欲しいもの言ってくれたらなんでも買ってあげるのに」

「…………ん?」

コナンが首をかしげると、松田はくつくつと笑っていた。

「今日はデートなのに、あっち見たりこっち見たり! 美人が好きなのね、まったく!」
「君だってこのカフェの店員がタイプだろ? さっきからずっと見てる!」

「……タイプに決まってるじゃん、タレ目って研二と同じだし」
「……あんまり可愛い格好してくるから直視出来ないんだよ…」

「…………」

ほらな、だから言ったろ? と楽しそうに松田が笑った。

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