二日目、陣平に腰を撫でてもらう


「……」
「……おう、死んでんな」

ソファに黙って沈みこむ私。同棲している部屋に帰ってきて扉を開けた彼は、私の顔色を見て呟いた。

二日目である。一日目よりも本格的に生理が始まり、最も辛いとされる時期だ。世間の女子がどうかは知らないが私の中の定説である。
私の場合、痛みは無いがひたすら体が重く、怠い。元々体重が重いとか冗談も言えないくらいつらい。お腹が気持ち悪い上に体に力が入らない。繰り返すが痛みが無いことだけが救いだ。
偶然にも仕事は休み。普段なら無理をすれば仕事は出来ないこともないが、今回は普段よりも症状が重い。私は大人しく家で丸まっていた。

「ほら、薬買ってきたから飲め」
「……ありがと……」
「……そんな辛いなら十ヶ月止めてやろうか?……って聞いてねえな」

貝のように押し黙っていたがお礼は言う。
コップに水まで持ってきてくれた。あ、しかもぬるま湯だ。ポットに入ってたのを水で割ったんだろう。体を冷やさないようにしてくれたのか。うわ私の彼氏優しい……。
毎回ではないが、陣平はこの光景に何度か遭遇したことがある。最初の頃こそ戸惑っていたけれど、今では慣れたものだ。私は何度あっても慣れそうにないけど。

「夕飯、なんか食えそうか? チャーハンくらいしか作れねえけど」
「たべる……」
普段あまり料理をしない陣平のご飯が食べられるのは嬉しい。ごろっとしたお肉が入ってて好きだ。

ふと、体を持ち上げられて運ばれる。
「ソファよりベッドのが楽だろ、飯まで寝てろ」
「ん……」

抱き上げられた私は、陣平の胸元に顔を寄せて擦り寄る。んぐ、と何かを堪えるような声が頭上からした。気付けば寝室についていた。ベッドの前で立ち竦み、逡巡する気配。
どうしたんだろう、と伺う前にベッドに降ろされ、陣平もいそいそと隣に潜り込んできた。てっきり運んでくれるだけだと思ってた。
ぐったりとした私を抱き締めて、重い腰を撫でてくれる。陣平の大きい手のひらがあたたかい。

「わたし、さぁ」
「んー?」
「陣平がこんなにいろいろしてくれるのに、……わたしは陣平に何か出来てるのかな。なにも、返せてない気がする。してもらってばっかりだよ……」
「……あー、キツくて思考が引っ張られてんのはわかった」

生理でホルモンバランスが崩れてるんだかなんだかで、ネガティブなことを吐露してしまう。専門家じゃないからよくわからないから知らないが。こんな面倒臭い女みたいなこと、普段言わないのに。

「……お前も仕事があんのに、メシとか家事とかやってんだろ。いつも助かってる」
「いま、この状態でそれすらできてないよ? 役立たずじゃ、ない?」
「あー、うー……違ぇんだよ、お前が俺に何かしてくれるから付き合ってるわけじゃねぇ。……傍にいてくれるだけで充分なんだよ、言わせんな」

言いにくそうに言葉を詰まらせたあと、ぽつりと呟かれた。……若干顔が赤い。

「そう、……そっか、ん、私もそう」
「おーそうかよ……」
「でも今日はほんとに何も出来てないから、おっぱい枕を許可する」
「なっ!?」

照れた表情を見られないように顔をそらす陣平の頭を、抱き込んで胸に埋める。私は仰向け、陣平はうつ伏せ。薬のおかげで調子を取り戻してきた。

お前生理終わったら覚悟してろよ……! と口では言っている陣平。しかし私の谷間に鼻先を埋め、両手でもにもにと左右の双丘を揉んでるので迫力に欠ける。説得力はあるね。


「……いやこれお前の身体目当てみてぇじゃねえか」
「おっぱいいらない?」
「………………いる」

ブラのホックを外されて抜き取られた。そこまでは許可してないけどまあいっか。

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