いちゃいちゃ小話2つ


女の子の住んでいる部屋から自分の彼氏が出てきた。

「またね」
「ああ」
女の子の声に親しげな笑みを返す陣平。
今は深夜。単身者用のマンションで、友人の部屋から出た際に目撃してしまった。

最初に頭によぎった言葉はやっぱり、浮気、だった。そう考えても仕方ないと思う。陣平は今日、萩原くんと呑みに行くと言って……ああ、そういうことか、全部わかった。なるほど。萩原くんだ。
陣平はお酒に酔って潰れた萩原くんを送り届けたのだろう。あの女の子は、隣に住んでいる萩原くんの幼なじみということか。噂の。萩原くんがホの字の。へえ。
幼なじみの女の子に介抱を任せて帰る陣平を私が目撃したのだ。
浮気の線は消えた。ということは、私がすることは一つだ。からかって遊んでやろう。
スマホを取り出し、陣平に電話をかける。
「浮気なんてひどいじゃない、ダーリン?」
「……あ?」
電話口で声が重なったことに気付いたのだろう。陣平が周囲を見回す。陣平が振り返る前に私は踵を返し、ちょうど停まっていたエレベーターに飛び乗った。
扉が閉まる寸前。陣平の長い脚が隙間にねじ込まれて乗り込んできた。エレベーターが動き出す。
「おい」
「夜中に女の子の部屋から出てくるなんて……そんな人だと思わなかったわ、別れましょう」
「は!?」
うつむいて両手で顔を覆う。それらしくできているだろうか。すっとんきょうな声をあげた陣平をよそに肩を震わせる。エレベーターが地階についたので駆けて出ようとしたが、扉が開く瞬間に腕を掴まえられた。
「おい待てって!……何笑ってんだ」
「んふ、だって陣平が焦ってるの面白くて」
ふふふ、と笑って手を繋ぎ、歩き出す。夜風が心地良い季節になった。
「萩原くんとこ?」
「ああ。……わかってたンなら素直に声かけりゃ良かったろ」
「えー、だって」
萩原くんと呑みに行くと私に嘘をついて、他の女の子に会いに行っていたのかもしれない、と。
「一瞬本気で疑っちゃったのは本当だもんね?」
冗談めかしてこぼせば、繋いだ手に力が籠った。
「……別れねえからな」
きょと、と陣平の顔を見てみれば拗ねた顔をしていた。
「ふふ、わかってるよ」
義理堅い陣平は、私がいるうちは浮気なんかしない。








俺の恋人は、めったに他人に隙を見せる方ではない。

ルームウェアは短パン、タンクトップ。おまけにノーブラときた。たわわな身体の輪郭がくっきりと出ている。
そんな服装でソファに仰向けになって雑誌を読んでいるのだから、股間が痛くなりそうなほど目に毒だ。
俺が帰ってきても、こんな無防備な格好でいるのだ。他ではありえないほど気を許されている。

ふらふらとソファに近付き、彼女の上に覆い被さって首筋に顔を埋めた。

「んーちょっとー、なにー」
「いや……お前を捕まえて良かったなって」
「なぁにそれ」

くつくつと笑って、読んでいた雑誌を傍らに置く。
しっとりとした体温を肌に感じながら、脱力していっそう強く抱き締めた。



私の恋人は、めったに他人に甘えたりなどしない。
それがどうだろう、私の前ではこの有り様!
抱きついてくる彼のやわらかな髪を撫でて応える。いとおしいったらありゃしない。
彼の耳にキスをして、改めてぎゅうっと抱き締めた。

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