小ネタいろいろ 日の出


記念日とか、誕生日とか、季節のイベントとか。毎年通り過ぎていくそれらを、いつでも二人で祝えるわけじゃない。
どんな関係性でも人間と人間であればそういうこともある、けれど私たちは世間の恋人たちよりも会える頻度が少なかった。おそらくそれは彼の仕事のせいでもあって、我儘を言わない私のせいでもあったと思う。

新年の挨拶は友人からのメッセージが一番乗りだった。年の瀬のテレビも一人では見る気になれず早々に眠りについて、明るくなる前の朝方に眩しい画面を操作する。大晦日にもかかわらず昨日れーくんは帰って来れなかった。年末年始の方が忙しいんじゃないかってくらい。

通知欄に彼からのものは無かった。ひとつ息をついて、ベッドから起き上がる。日の出の時間はもうすぐだった。ベランダに出ると冬の冷たい空気が肌を撫でる。東の空が薄明るくなっていた。
下方から聞き覚えのある車の排気音がした。主人の足音に反応する犬みたいだな。手が冷たくなるのも構わず柵に手をつく。身を乗り出して見下ろすと、彼の車が駐車場へ入ってくるところだった。
あ、しまったな。そう思っているうちに彼が部屋に帰ってきたようだった。エレベーターを待てずに階段を飛ばしてきた速度だったな。案の定、ベランダで鼻の頭を赤くしているところを見つかってしまい、ブランケットでぐるぐる巻きにされた。運動して高い体温の彼の手で指先を温められながら、二人で太陽が街を照らす光景を見た。

僕は帰れるかわからないし年越しくらい実家で両親と過ごした方が。そう言っていたれーくんの提案を突っぱねて勝手に待っていたのは私だ。こんな些細な幸せを取りこぼしたくないのは自分と彼のどちらのためか。帰ってきた彼におかえりと、新年の挨拶をすると嬉しそうに笑ってくれるから、やっぱりこれは私のためなんだと思う。

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