「べ、ベル子さん………」 「…………」 今の彼女、ていうか彼の状態を音で表すとしたら、こんな感じ。 (むっすぅぅぅぅ……) ああどうしよう、むくろ君と再会してからこっちずっとこのテンション。転校初日にして取っつきにくすぎる転校生にクラスメイト達もたじたじだ。さっきなんて、 「ベル子ちゃんって今どこに住んでんの?よかったら帰り」 「お前らの町見下ろせっとこ」 「え、」 「つーか庶民が王子に気安く声かけんな」 と安定のキャラの放棄具合であった。 ベル子さんに声をかけたクラスのチャラ男ことチャラ山くんは泣きながら席へ戻っていった。 「もう……ベル、そろそろ機嫌直して?」 「…………やだ」 あ、よかった。口きいてくれた。 私はホームルーム後の喧騒に紛れて、彼に問いかけた。 「どうして?そんなに、むくろ君嫌いなの?」 「別に。殺したいほどじゃねーけど」 「基準!」 「でも、なまえがあいつのこと特別扱いすんのは王子むかつく」 「特別扱いなんて……」 してるつもりはなかった。でも、私の中にある幼い頃の彼の記憶は、いつだってやわらかく優しげだったから、 「むくろ君に何か悲しいことがあったなら、わたし、助けたい」 ベルが低く舌打った。 「は?何でお前がそんなことする必要あんの?」 「だってむくろ君は友達で、」 「じゃあ俺は?ボスは?スクアーロは?皆友達?ちげーだろ。お前さ、今の自分の立場分かってる?俺達に守られてんの。友達なんかより、俺たちの方が、よっぽどお前に大事にされる権利あっから」 もう全くキャラを通す気のないベルが、机の上に足を投げてふて腐れた。というか、ベルの言い分をまとめてみると、つまり彼は、 「……………ふっ、」 「は?何笑ってんの?」 「ふふ、だって、ベル、やきもち」 「は?なにそれそんなのやいてねーから。は?」 妬いてないというくせに、ベルの前髪に隠れていない頬はほのかに赤らんでいた。 私はだらんと垂れたベルの手を椅子の下できゅっと握って、小さく思いを口にした。 「私、ザンザスさんとスクアーロさんは分からないけど……ベルのことは、友達だって思ってる、よ」 「……………」 ふっ、と 本当にふっと、肌で感じる空気が軽くなった。 ベルが私の手を握り返す。 「………なまえのくせに、生意気」 (迎えに来たはいいけど……入りずら!!) (あいつら何で手握りあってんだよ) (仲良しなのな) ×
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