「あー!ダメですよザンザスさん、さすがに!」私が制止の声をかけると至極不機嫌そうなザンザスさんが顔を上げた。彼が手にしているのはカウンターの上に置いてあったウォッカの瓶だ。 「起き抜けにそんな強いお酒!」 「るせぇ」 「…わ、私が美味しいものを作って差し上げますから」 彼の手から瓶を回収しつつそう告げれば、この上なく不機嫌そうな顔をされた。怖い。けどこれ以上非健康的な様子を見せられ続けるのはさすがに気が引ける。 カウンターのあちら側に回って冷蔵庫から牛乳を取り出す。 「ザンザスさん、甘いのはお嫌いですか」 「朝からそんなもん食えるか」 「嫌いではないんですね」 「……」 ということで、黙ってしまったザンザスさんをソファで待たせ、私は朝食作りを始めた。早起きをしたため少し料理に手間をかけても大丈夫そうだ。 それにしても、初期に比べたら私随分ザンザスさんの扱いに慣れて来たな……。 「慣れってこわい」 「オイ」 「うわ!ザ、ザン……待ちくたびれたんですか?」 返答がない。 そうらしい。(まだ十分経ってないけど) ぐる、と低く唸ったのはザンザスさんのお腹だろうか。 「ライオンみたい…」 「あ゛?」 「はわ!す、すいません。お腹の音がなんだか」 「煩ぇとっとと作らねえとテメェから食うぞ」 「やです!!すいません早急に作りますハイ!!」 備え付けの冷蔵庫から昨日補充しておいた卵やらを取り出す。 「……」再びソファに戻ったザンザス。 材料を取り出しながら暫くその姿を見つめ続けて居ると、視線に敏いその人にギロリと睨みつけられてしまった。 「何だ」 「い、いえ…その」 「言え」 私は先程ふと思いたった事を、恐る恐る口に出してみた。 「お手伝い…されますか?」 その時のザンザスさんの顔は忘れられない。 ×
|