「なまえ……無理して笑うんだ。」
電気を落とした室内に、ツナの呟きはぼんやりとこもった。難しい顔をしているのは、彼だけではない。

「小僧、なまえの家に行ってきたんだろ?何があったんだ?」

「分からねぇ。俺が行った時には、スクアーロ達が本部に向かった後だったからな。」

「XANXUSに何か聞いたのか?」

「いや。…ただ、なまえは襲われたのは間違いねぇ。ヴァリアーの奴らが成すすべなく、な」

「戦闘じゃねェってことッスか?」
獄寺の問いに、リボーンは静かに頷いた。

「……ともかく、今お前らがなまえにしてやれるのは、アイツが安心できる場所を作ってやる事だけだ」

「そうッスね…」

「おう!………どうした?ツナ」

「…――ううん、大したことじゃないんだ。…ただ」

「?」

XANXUSがなまえを抱えて現れた時、驚いた半面で、ツナの背中を駆け上ったのは冷たい殺気だった。

「あんなふうに、XANXUSが静かに怒るのを…初めて見たから」


激昂するXANXUSの姿ならもう何度も見た。しかし、それとは明らかに質の違う怒りに、ツナは戸惑ったのだ。――もしかして、なまえはXANXUSにとって…。

「…リボーンの言う通りだ。俺達は俺達にできる事をしよう」

XANXUSの裾を掴んで引き留めたなまえの姿を思い出しながら、ツナは静かにそう言った。






***



ザンザスさんの隣にもそもそと潜り込んだ私。こちらに向くザンザスさんの背中に、私も背中をくっつけた。
(これだけ近くに居れば、さっきよりずっと安心だ。)

「…糞ガキ」

「…わたしのことですか」

「他に誰がいる」

「……はい」

明日、じゃない、今日もこれから学校だから少しでも眠ろう。
頭の片隅で冷静にそんな事を思いながら、ザンザスさんに返事を返す。


「…」

…あれ?呼んだだけってやつですか?
耳を澄ましていつまで待っても言葉の続きは聞こえてこない。もしかして寝ちゃったのかもしれない。

隣から感じる体温と、色々あった疲れと、安心感で、瞼が降りて来た。


「……ザンザス、さん…」


寝ちゃったみたい


「…」


ありがとうございます。

…おやすみなさい。


心の中でそう告げて、私は睡魔に身を委ねた。

眠りに落ちる寸前に低い声が鼓膜を揺らす。夢かもしれない。ザンザスさんは、低く心地の良い声で私におやすみを言った。

top
×