蹴破られないうちに窓を開けると、遠慮なく土足で部屋に踏み入るXANXUSは肩に担いでいたなまえを畳に下ろした。

「て、テメェ等いったい何しに…!!」

「煩ぇ、喚くな」

「なあ゛!?」

「……遅くにごめんなさい」

俯きがちに謝ったなまえを見て、獄寺君も口を閉ざした。




「何かあったのか?」
リボーンの問いかけの後には、しばらく沈黙が続いた。

「……あそこがもう安全とは言えなくなった」

なまえの家の方を向いて低く言ったXANXUS。顔をあげたなまえは、「…そうみたいなんです。」と弱々しく笑った。目のふちが赤いのは、きっとそれが原因だろう。


「敵が来てんなら、俺達も加勢するぜ?」

「違ぇ。…詳細は明日、カス鮫にでも聞け」

「ああ…分かった。」

「…俺は戻る。こいつを」

XANXUSの言葉が途切れた。なまえの手は、懇願するようにXANXUSの隊服を握っていたから。
なまえの顔は見えなかったけど、俺には分かったんだ。

なまえにとって今一番頼れるのはXANXUSで、
なまえにとって今一番傍にいてほしいのは、XANXUSなんだって。


「パパンの部屋が空いてるぞ」

そしてそれは、リボーンも同じだったみたいだ。

「うん。母さんにも言ってくるよ」

振り返ったなまえが申し訳なさそうに顔を歪めるから、俺は何も心配しなくていいから、と笑った。


「悪いなんて感じることないんだ。ここに居るのが安全なら、ずっといたっていいから」

「…あり、がとう」

強く頷いた獄寺君も、なまえの頭を撫でた山本も、もちろん俺も。
当然事態なんて把握し切れてはいなかったけど、それでも今は、泣きそうななまえを安心させることが一番だと分かった。
「……」

XANXUSはなまえの手をほどき、こちらに背を向けた。

「……10分で戻る」

それだけ言い残し、また外へ飛び下りたXANXUS。
なまえの肩が安堵に沈むのを、俺は確かに見た。

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