俺は腕を軽く叩かれて目を覚ました。
腕に触れてきたのは、昨日、隣でうたた寝を始め、しまいには俺の肩に頭を預けて本格的に寝入り始めたその女で間違いはない。
午前0時を回った頃、そいつを起こして二階に連れて行ったカス鮫。
俺のベッドの脇に布団を敷いて、大人しくそこに体を横たえたそいつを見て、間もなく俺もベッドに入った。
斜め下に見える、安心しきった寝顔には、無性に腹が立ったのを覚えている。


「……何だ。便所にならカス鮫でも」

連れて行け。


そう告げるよりも目が暗闇に慣れる方が早かった。
――バッ
俺の服の袖を掴むそいつの手首を掴み、勢いよく体を起こす。
もう一方の手で頭上のカーテンを引き開けた。
西側の空で虚ろに闇夜を照らし出していた月が、室内にぼんやり差し込む。

「…―――!!!」

カタカタと小刻みに震えるそいつは、目にいっぱい涙を浮かべ、やはり震えた声で俺の名を呼んだ。

胸元を、真っ赤な液体で滴らせながら。

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