「……大丈夫です。い、き…生きてます、まだ」

「…何があった」

首を振るなまえ。
XANXUSは思考を冷静に保ちながら、なまえの首元にべたりと付着した粘度のあるそれを手で拭った。
「ッ!!」
ビクリとなまえが激しく動揺するのを察し、XANXUSは咄嗟に手首を掴むのを止めた。
短い沈黙が流れたが、XANXUSはそのまま自分が拭ったものに意識を向けた。


「血じゃねェ、な」
これが血であったなら、なまえに起こされるまでもなく匂いで目が覚めたはずだ。
「……よかった」
それを聞いたなまえは、心の底から安堵した声を漏らし、顔をあげた。
さっきまで瞳に溢れんばかりに溜めていた涙はもう乾いている。

「トイレに行こうとして起きたら、こう…ぬめっとしていて」

なまえはよろめきながら立ち上がると、天井から垂れている電気の紐を引いた。
白い蛍光灯の明かりに照らされたなまえの胸元は、やはり赤黒く濡れていた。

「あわててザンザスさんを起こしたんです」

「…」

「…はあ、よかった……血じゃなくて。わたし、しんでしまうかと」


XANXUSはすっと立ち上がると、なまえの腕を掴み荒々しく部屋を出た。
何やら不穏な空気を察知したベルやスクアーロも部屋から現れ、そしてなまえの状態を見て一気に殺気立つ。武器をも取り出しかけた二人に、XANXUSは制止の声をかけた。


「部屋を調べとけ。何一つ見逃すんじゃねぇ」

「う゛ぉい!!なまえは」

「へ、…へいき、で、きゃあっ」

XANXUSはなまえを抱き上げると階段を下り、電気もつけずに暗い廊下を進んで脱衣場へと入った。
「ザ、ザンザスさっ…」

top
×