ベルの悪巧みから命からがら逃げだした私だったが、試練はまだ終わってはいない。

「スクアーロさん」
「あ?」
「少し聞きたいんですけど、皆さん、普段は何時くらいに寝てるんですか?」

何やら小難しい文書をまとめているスクアーロさんにコーヒーを差し出しながらそう尋ねれば、そうだなぁ、と曖昧に弾き出された答え。
「大体6時くらいじゃねぇかぁ?」
「…ろくじ」
私の頭に浮かんだのは夕焼けとカラス。
「え…えぇと……それはまた随分と早寝ですね」
「午前に決まってんだろぉ!」
「ごぜん!ああ、AMのほうですね!なんだ、びっくりした、いくらなんでも早すぎだと思いましたよー。…………午前ンンン!?」
「うっせーよ」
「あたっ」

ベルによって投げつけられたティッシュケースを拾いつつ、涙目で聞き返す。


「午前6時に就寝だななんて…完璧に昼夜逆転生活ですね」
「そうだなぁ。まあ俺達の仕事は昼間やるもんじゃねェから仕方ねぇ」
そうだった。
スクアーロさんも、ベルも、ザンザスさんも、本当ならこれからの時間からがお仕事なのだ。

「(途方もない世界だ…)」
「早く終わりゃ早く寝れるが、その後に書類業務なんかも溜まってたら6時は軽く越すぜぇ」
「そ…そうですか」

私はチラリと時計を伺った。
時刻はもう少しで11時。

(眠いので部屋に行きたいです、とか、言えない)

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