部屋を出て吹き抜けからリビングを見下ろしたら、有り得ないほど禍々しい空間が出来上がっていた。ウワーナンダコリャ。 あの山本く、じゃない、武君でさえ難しい顔をしている。 特にひどいのがザンザスさんだ。今にも人を殺しますよという雰囲気を醸し出していてちょっぴり泣きそうになった。 見下ろした途端、ほぼ全員に見上げられた私の怖さと言ったら、まず言葉にはできない。 「あ……の…、あ!」 何故かソファの間のテーブルには消し炭が。 普通だったら、お父さんお気に入りのテーブルに焦げ目ができるし皆は怖いしで泣いちゃうところだったけど、ザンザスさんが燃やしてくれたであろうそれには、心当たりがあって、 「…」 その光景を見て、自分でも驚くくらい安心してしまった。 このバイオレンスな人達に囲まれていたせいで、感性がおかしくなってしまったのかもしれない。さっきまで心を支配していた得体の知れない恐怖からすくい取られた。そんな気分だった。 (何にも心配はいらない) だって、ザンザスさん達は、ツナ君達は、とっても強いんだから…! ――「お前は泣かねぇ事だけ心がけろ」 「……っあの!」 私は手すりから身を乗り出して、彼らに声をかけた。 顔には自然と笑みが浮かび、この禍々しい空間においてできる表情としては100点満点だったと、私はそう思うのだ。 「夜ご飯は、カレーにします!…それなら、たくさん作れるから…!!」 少しの沈黙。隼人君と武君は顔を見合わせ、ツナ君は驚いたような顔をしてから、そっとザンザスさんを見た。ベルとスクアーロさんもザンザスさんの言葉を待っているようだ。 「…ドカス」 ザンザスさんは、私に向けていた赤い眼をふいっと反らせて続けた。 さっきまでの禍々しいオーラがすっと引き、 「ビーフにしやがれ」 「…はい!」 「やっり!」武君がこちらに爽やかな笑顔でVサインを向け、スクアーロさんはやれやれと言った様子でいる。 ベルは「ちゃんと赤ワイン使えよ」といつも通りわがままに要求し、隼人君はそれに対して「俺達は未成年だ!」とずれた論点で噛みついていた。 ツナ君はなんだかほっとしているみたい。 最後にリボーン君が小さく笑ったのを見て、私は心を落ち着かせた。(ほら、ね) 大丈夫だよ、 何にもこわくないよ ×
|