「なまえー!今日放課後カラオケ行かない?」気軽に誘ってくれた友人に申し訳なく思いながら、丁重な断りをいれて教室を出る。(これから暫くはこういう誘いも断らないといけないのか。)そう思うと、少しだけ気が重い。 「…ん?」 ツナ君達のクラスに向かって歩いていると、反対方面の角をこちら側に曲がって雲雀君が現れた。 雲雀のヒの字を見た時点で背筋がピンと伸びる程緊張する私の目に、彼の後ろから、彼に引きずられた格好で現れた不良らしき男子生徒。 思わず声を漏らしてしまった。 (あ…足持たれてる…!) すると切れ目な視線がすいと持ち上がり、これでもかという程視線が交わる。 「…」 ――「どこぞのドカスに攫われて〜…」 XANXUSの言葉が脳裏に蘇り、なまえは取りあえず会釈をして方向転換。今にも走り出してしまいそうなのを堪えて、(廊下で走ったりしたら咬み殺される…)足を動かした。 ドガッバキッ「ぐへぇあ」「次やったら只じゃ済まさないよ」既に只じゃ済んでない音がしました、とは決して言えない。恐ろしいBGMに背中を押されて先を急いだ。あと数メートルでツナ君達の教室。 ツカ、ツカ、 ツカ、ツカ、 「?」後ろを向いたら目を吊り上げた雲雀君が、明らかに私の背中を追っている様子で歩いて来ていた。私は走った。ツナ君の教室は、普通に通り過ぎた。 ベルに追いかけられた時並に全力疾走して、そろそろまいたかな、と思った頃に足を止めると目の前に雲雀君はいた。心臓が止まるかと思った。 「なまえ」 「ぜえ、はあ……なん、でしょう…雲雀くん」 息一つ乱さずに私を見下ろす雲雀君。今日は一体どんな酷い使いっパシリにされるのか。 息を整えながら項垂れると、雲雀君はとても不機嫌そうに口を開いた。 「君と僕の関係は何」 「え、と、風紀委員長様と……緑化委員長です」 「今まではね」 緑化委員の仕事は主に学校の花壇に水をやる事である。私は月曜日の担当である。 というわけで雲雀君とは知り合い以上友達未満な関係なのである。 「え?」 「草食動物に聞いたよ。君の所にボス猿とその他がいるんだってね」 やばい、抽象表現が多すぎてわからない。 今うちにいるのはザンザスさんとベルとスクアーロさんだけど、ボス猿とその他なんて命知らずな呼び方をされていいようなかんじの人達じゃないし…だけどそう言ったら雲雀君は一体誰の事を… 「ヴァリアー、だっけ」 ザンザスさん達の事だった… さすが…雲雀君だ。怖いもの知らずだ…。 「あ、…雲雀君…それ」 彼の指に光る指輪には、見覚えがある。 私が顔を上げると、雲雀君はもう身をひるがえしていた。 「そう言うことだから」 「え、ちょ…雲雀くん」 それだけを言う為に追いかけてきたのだろうか。しかも、そういうことってどういうこと?? あの指輪は確かツナ君達もしていた。 雲雀君は、ツナ君のマフィアの仲間なのかな。 だとしたら、 だとしたら、今のは… 「、ま…待って」 雲雀君は私が追いかけてきた事に少し驚いたようだ。立ち止った彼を見上げる。 「つまり…わたしは、雲雀君を 頼っても いいの?」 その時、雲雀君の切れ目の瞳が恥ずかしそうに俯いたから、私はようやく確信を得ることができた。 「君はどんくさいから 仕方ないね」 遠回しすぎてむずかしかった、なんて言いそうになったけど、その何倍も嬉しくて笑ってしまった。やっぱり皆が思う程、彼は怖い人ではないのだ。 「ありがとう、雲雀君」 ×
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