元からあまり散らかっていなかった部屋を掃除するのはそこまで苦ではなかった。苦なのは、せっかく掃除機をかけた部屋でベルがポテチの食べかすを散らかす事と、それにキレたスクアーロさんが怒鳴り散らす事と、ザンザスさんがそれをみてぶはぶは笑っている事だ。
結局掃除は11時まで終わらず、ザンザスさんの部屋に行ってやつれたように完了を告げる私を迎えたのはベルのねぎらいだった。

「お掃除完了しました」

「ししっ。オツー」

しかも少しも労わった様子が感じられない。私は脱力した。

「ここにあるものは好きに使っていいです。私、明日も学校あるからそろそろっぐえ」
寝ます。
そう言おうとした私の首にベルの腕がひっかかる。

「じゃーお決まりのアレいっとく?」

「フン」

「久々だぜぇ」

「え、え、…?」

この人達一体何するつもりだろう。何にしても遠慮したい。
ぴょんと飛び上がったベルが姿を消し、しばらくしてロウソクとUNOを手に現れた。


「Uno o storia di fantasma?」

にやり

「・・え?」

「Uno o storia di fantasma?ホラ、早く答えろよ」

「ふ、ふぁん…た、?」

「ししっ…りょうかーい」

「何を、…!?」

ブツン、突然電気が消えた。停電!?え、でも台風でも地震でもないのに、なんでっ!!
その時ボウッと目の前にベルの顔が現れた。

「うきゃーー!!!」

飛び上がって近くにいた何かにしがみ付く。
ロウソクが下から照らすベルの顔は、長い前髪が手伝ってめちゃめちゃ怖い。「あんまビビらせんなぁ」とベルの隣でスクアーロさんが制止の声をかけてくれた。

「ししししっ!わりーわりー。俺こいつのビビった顔ケッコー好きなんだよな」

「かんべんしてください」

「それよかなまえ、オマエ大胆すぎじゃね?」

「?」

首をかしげた私。ニヤニヤ笑ったベルは「ボ・ス」と言い私の横を指差した。
そこで私はようやく自分がしがみついているものの正体に気が付いた。――逞しい腕だ。ザンザスさんの。
バッと振り払いそうになったのを寸前で堪える。勝手にしがみ付いたくせにその扱いはあまりにも失礼だ。私はそうっとその腕から離れた。


「………ごめんなさい。びっくり、しちゃって。でも…泣いてません」

ザンザスさんは私を殴る事もせずに、意識をまた手元のお酒に戻した。
私がビビリまくっているから憐れになったのかもしれない。


(ええええ!!怪談!?やだよいやです!私もどる!)
(怪談かUNOかって聞いたら怪談って言ったじゃん)
(離せベルー!に、日本語で聞かないなんてずるいっ)
(しししっ、まずはスクアーロな。どうぞー)
(…アレは雨の降る夜だぁ)
(スクアーロさあああん!!!)

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