スクアーロさんがとった出前は特上のお寿司だった。チャイムを鳴らしたお兄さんの白い前掛けにはふと太とした字で「竹寿司」とプリントされている。すぐに山本君の家だと分かった。 「まいど!竹寿司です」 「ご苦労様です、あの、お勘定は」 「う゛お゛ぉい!ガキが余計な気回してんじゃねぇ!」 「うわ」 襟首を引っ張られて後ろによろける。危うくお寿司を落としそうになってしまった。 「お前はいいからあっち戻ってろぉ」 「はい、あ…スクアーロさん!」 「何だぁ」 「ご馳走様です」 驚いたように私を見つめたスクアーロさんは、ちょっとだけ目に涙を浮かべながら「ああ、気にすんなぁ」と親指を立てた。何に感動していたんだろう。もしかして有難がられるのが久しぶりとか…? ザンザスさんとベルを順番に思い浮かべて、有り得そうだと一人納得。 スクアーロさんが苦労人であることが私には何となく感じ取ることができた。 「お寿司が届きましたよ」 「しししっ、王子コレ大好き」 ソファから飛び降りたベルが嬉々とした表情でテーブルにつく。その後で、ザンザスさんものっそりと椅子に座った。 テーブルの上に広げられた綺麗なお寿司に私自身テンションが上がる。 勘定を済ませたスクアーロさんがリビングに戻ってきたところで(やっぱりお礼は言われてなかった)お食事がスタートする。私が驚いたのが、意外にも皆、ザンザスさんまでもが手を合わせて「いただきます」をしたことだ。 「なめんじゃねぇ。マナーなんざ基本だ」 私の視線に感づいたらしいザンザスさんがウニの軍艦をつまみながらそう言った。…それなら玄関から入ってきてほしかったな。なんて、言えなかったけど。 とにかく竹寿司のお寿司はとても美味しかった。私はツブ貝とサーモンが好きだ。たくさん食べた。でもザンザスさんやベルがマグロや大トロを中心にガツガツ食べるために黄色が余り、仕方なく残ったタマゴを私が食べる。それを見て何か勘違いしたらしいスクアーロさんが自分の側にあったタマゴも私にくれた。うん…ありがとう、スクアーロさん。 スクアーロさんが優しいということはとても良く分かった。 ×
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