目が合った。――それだけでテレビの音もベルの笑い声も、スクアーロさんの剣を磨く姿も、何も頭に入らなくなった。私はこんな経験をかつて一度もしたことがない。 「……おい、」 「…」 「息をしろ」 「…っふは」 うっかり呼吸すら忘れてしまうような、経験を。私はハッとして尋ねた。 「もしかして、ザンザスさんの目も…」 「?」 「何か、呪いに…?」 「…何故そう思う」 「目が離せなくなりました。あと、息もできなくなったし、それに」 「ぶはっ」 いきなり笑われて私は飛び上がって驚いた。 笑わ…れてるんだよね。 テレビを見ていたベルも驚いて振り返っている。スクアーロさんもまた然りだ。 「クク…ク、おい。ドカス」 私の事だろうか。 「あ…はい」 「それは単にお前がビビってるだけだ」 「そ、そうでしたか」 そう言われてみればなんか急に恥ずかしくなってきた。しかも相当失礼な事を言った気がする。 「すいません…」 「いちいち謝るな、うぜぇ」 やっぱり怖い。 ×
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