「俺達はある人物からお前の護衛を任された」 「護衛…?」 「まさかターゲットが沢田綱吉の隣人だったとは思わなかったがなぁ」 「え…沢田君と、知り合いですか」 スクアーロさんはその問いには苦い顔をしただけで答えなかった。 「お前、自分の能力について何を知ってる?」 「…のうりょく」 「分かんねぇか。他の奴らになくてお前にあるもんがあるだろぉ」 「……」 ある。でもあんなの能力って言うのだろうか。 「ラクリマ・マレディツィオーネ」 「…?」 「呪われた涙。この意味が分かるか」 突然口を開いたあの男の人の声は重々しくリビングに響く。 「ある一家に代々伝わる呪いだ。」 「!」 「人を魅了し判断力を鈍らせる麻薬。そこのカスが証明したはずだ」 「油断してたぜえ…。だがまあ的は外すくらいの理性が残ってよかった」 唇にされなかったのはそういうわけか。 一方でがっつり的に食らいつきしっかり堪能しきった彼は説明を続けた。 「お前とその能力を守るのが初代からのボンゴレの義務であり、俺達ヴァリアーに課せられた任務だった」 「ま、まって」 私は頭を抱えた。わからない、何を言ってるのこの人達。 私のアレは能力なんかじゃないよ、体質で、それに… 「わたし、守られたことなんてない」 「お前が知らなかっただけだ」 「…でも、わたし、何回も誘拐されましたし」 私の脳裏に恐怖の経験が蘇った。 「お前程度の人間が何度も誘拐されて、それでも生きている理由を考えたことがねぇのか、ドカス」 「……ごめんなさい。覚えて、なくて」 覚えていないのだ、本当に。怪しい人たちに追いかけられて必死で逃げていたこと、追いつかれて捕まって記憶はいつもそこで飛ぶ。何かを嗅がされた時もあるし、気絶させられた時もあるけど、 目を覚ました時私は、いつもと同じように自分の部屋のベットの上にいるのだ。 夢だったと確信できないのは、気絶させられてから目が覚めるまで確かに空白の時間があるから。 お母さんは、親切な人が助け出してくれたのだといつも言っていた。 私はそれを勝手に警察だと思っていたのだけど、話を聞いているとまるでこの人達が助けてくれていたように聞こえる。 「俺達がその事実隠蔽してなきゃ、誘拐も今の100倍。お前今頃死んでんぜ」 「!あ、ありがとう」 「ボンゴレが保護するお前達の存在は、超機密事項だった」 ボンゴレ=ヴァリアー=この人達。というのは間違いなさそうだ。 「あの…整理させてください。あなた達はボンゴレのヴァリアーという組織の方々で、」 「ああ」 「あなた達はうちに代々続く呪いを世間から隠す事で私を守っていてくださっていて」 「そうだぁ」 「…あれ?だったらどうして今更護衛なんて」 「しししっ。お前バカそーに見えて結構イイトコ気付くね」 さりげなく失礼なベルを睨む。キラン。光るナイフ。 私はそっと視線を足元に落とした。 「お前の情報が漏れた」 「…え」 今さらっと凄いこと言われたような… 「ヴァリアーの管理下にあった機密事項が何者かによってハッキングされてなぁ」 「え…え!?それって」 「ししし!安心しろって。ダメな部下はちゃーんと始末しといたから」 「しまっ…!?ちがう、え、大丈夫なんですかそれ」 「ドカスが、大丈夫なわけあるか。」 そしてニヤリと付け加えられた一言。 「だから俺達が来てやった。有難がれ…ドカス」 ………あれ!?そっちのミスじゃないんですっけ、とは言えなかった ×
|