1-2:うましかだよー[ 2/16 ]

 いいのだろうか……教師なのに。
 怠そうに、賢ちゃんはキッチンへと近付く。


「んー、チャーハン? ……じゃあ、味噌汁でも作るかなぁ」
「私が作るよ。ゆっくりしてて」


 ちょっと抵抗はあるけれど、ぎこちないタメ口でゆったりとそう告げる。
 そういうと「じゃあ、遠慮なく」と言ってお風呂へと向かう賢ちゃん。


 チャーハンを作った後すぐに味噌汁を作り始める。
 油揚げと大根の味噌汁でいいか。


 賢ちゃん以外の3人はまだ起きてこなさそうだ。
 おそらく玲くんと裕太は爆睡している。

 智くんは起きてそうな感じがする。部屋で、勉強してそう……
 味噌汁が完成したのと同時に、聞こえてくるドライヤーの音。
 乾かし終わったのか、ドライヤーの音は消える。


 賢ちゃんの髪は柔らかそうなくせっ毛。

「ふわふわ……巻いてるの?」
「いや地毛。男が巻いてどうすんの」

 天パか。
 うん、長さ的に巻くのは難しいか。

 私の短い髪も、ふわふわしてれば少しは女らしくなるだろうか。

 彼に近付くと、ふわりと良い香りが漂う。


「何のシャンプー使ってるの?」
「何だったかな……適当に買ってるからわかんねぇや」


 ヘラリと賢ちゃんが笑った。
 あとで風呂場に行って確認しよう。


 そろそろみんな起きた方がいいんじゃないかな、と考えていた時だった。
 部屋の方から重いものが落ちたような大きな音が響いた。

「……え!?」


「あぁ、驚かなくて良いよ。目覚ましだから」


 こんな目覚ましなんてあるもんか。あっても欲しくない。
 部屋へと続く廊下のドアが勢いよく開く。




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