1-2:うましかだよー[ 1/16 ]
寮生活の初めての朝。
私はいつもより少しだけ早起きをした。
みんなは昨日大騒ぎをしたせいか、ぐっすりと眠っている。
昨日の夜とは正反対の、静かな朝。
リビングへと私は歩き出した。
物音を立てないように、そっと。
リビングを覗くと、ゴミがたくさん散らかっている。
「うわぁ……」
昨日片付けないで寝たから。改めて冷静な視線で見るとあり得ないくらい部屋は汚れている。
できるだけ物音を立てずにゴミを片付ける。
本当の目的は、掃除じゃないのになぁ。
少し時間がかかったけど、みんなが起きる前に掃除はなんとか終わった。
「よしっ! 作ろう!」
私の目的は、昨日のパーティーのお礼も兼ねて朝食を作ること。
昨日少し覗いたけど、冷蔵庫にはたくさん材料は入っていたはずだ。
誰が適当に買ったのかは知らないけれど、チャーハンくらいなら作れる、はず。
材料を出して、急いで作る。
もう少しで完成、というところで部屋の方から物音がした。
「あー、眠い……華ちゃん?」
「おはようございます!」
部屋へ繋がる廊下の入り口に、賢ちゃんの姿。寝起きで目が覚めきっていないのか、彼はふわぁとあくびを漏らした。
……あれ?
よく考えたら、どう呼べばいいんだろう。
「……賢ちゃん先生?」
おぉ、可愛いじゃないか、賢ちゃん先生。愛嬌がある。
いかにも人気な先生って感じ。人気があるかはわからないけど、フレンドリーだしきっと生徒に好かれているのだろう。
「……いや、普通に『賢ちゃん』でいいと思うよ。あとタメ口でいいから」