3-4:愛しい、君の想い出side賢介[ 3/6 ]



 いつも通りに授業を進め、チャイムが鳴れば授業は終了。
 眠たげにあくびをする生徒に目がいって、呆れたように溜め息を漏らす。
 なんか、あくびされっと「つまらない」って言われてるみてぇだな。教師として悲しい限りです。


 職員室に戻ろうと、開いていた教科書を閉じる。
 その時、智が華に話しかけているのが目に入った。

 智が自分から人に話しかけるなんて滅多にないのに。
 智も華には心を開きつつある、ということか? おうおう、良い傾向じゃないか。



「華、映画を見に行かないか?」

 いいな、映画かぁー最近行ってねーなー。
 今面白い映画やってたっけ。

 華は可愛いらしい笑顔で返事を返す。



「うん、いいよ。何か見たい映画あるの?」



 2人の会話を少し聞きながら教室を出ようとした。聞き耳立てるのってどうなんだろう。




「あぁ。“紫音”っていう本知ってるか? ……恋愛ものだから1人で行きづらくて」



 紙がばさばさと散って大きな音を立てた。
 思わず、自分の持っていた物を落としていたのだ、俺は。

 恋愛ものだからひとりでいくの恥ずかしいとか可愛いところあるんだな智も、なんて思う。
 ……その本じゃなかったのならば。


 教室にいた生徒達は俺の方を見る。
 何やってんだあいつ、とでも言いたげに。



「平川何してんのー?」
「平川センセー物落とすとかやっぱりアホなのー?」

「はは……」




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