3-4:愛しい、君の想い出side賢介[ 4/6 ]
楽しそうな生徒。
不思議そうな生徒。
彼ら彼女らの表情も、俺にはわからない。ただただ声だけが聞こえる。その声も俺の脳では処理しきれなかった。
何、動揺しちゃってんの? 俺。
落とした教科書類を拾って教室を出た。
俺は屋上へ向かう。
次の時間は授業がないはずだ。
やるべき仕事はまだあるけれど、無性に外の空気が吸いたくなった。
誰もいないところに、行きたい。
屋上については、普段吸いもしないような煙草を吸おうとポケットに手を伸ばす。
まぁ、吸いもしないものがポケットに都合よく入っていることなんてないわけで。
願いがかなわなかったことに舌打ちをしてフェンスに近寄る。
グラウンドには体育をしている生徒たちが集まっていた。
短距離走でもやるのか。100mレーンの近くへと移動していく。
なんだ……あの本は。
「おい」
「……玲?」
「はい、俺だけど」
何その返答。はい、俺だけど。変わった返答をするんですね、君は。
玲は俺の隣に座り込む。
お前、授業は?
そう聞く前に「数学だからいい」と言い出した。
聞こうとしていたことがばれていたらしい。普通聞くと思うけど。
「真面目に受けろよ……まじで留年するぞ?」
「そん時はそん時でなんとかすればいいだろ」