12.11.1 「この世界は僕ら二人ぼっちだね」、と彼と笑った
さわさわ さわさわ
風が緩やかに吹く辺り一面に広がる花畑がある。
さわさわ さわさわ
赤、黄、橙、ピンク、水色、青、紫、白……、色鮮やかに、それでもひとつの花が目立とうとするのではなくお互いがよりよく見えるよう、高めあいつつ咲き誇っている。
そんな中で花に埋もれる影がふたつ。
「きれいだねっ!」
「そうだね」
くすくす くすくす。なにか可笑しいのか、楽しいのか、嬉しいのか。桃と橙が交えた少女は笑い続けていた。
そんな彼女に穏やかに笑うのは、藍色に墨を足した少年で、普段はさも無関心だと顔をそらしている分、微笑にさえも目を奪われそうになる。
二人は人っこ一人いない広大な花畑の中で、穏やかな風に包まれながら緩やかな時間を過ごしていた。
誰にも邪魔されず、誰にも干渉されず、誰にも知り得ないこの場所で。二人だけの世界を築き上げているのだ。
「ねえねえ、ずっと、ずーっとここにいられたらいいのにね?」
それでも、少女は寂しげに少年に笑う。心の片隅では解っているのだと。こんな世界は望んでもあり得ないのだと。
だから、少年は、
「ナギったらバカだね。手を繋いでれば離れられないでしょ? そしたらずっと、ずっと一緒にいられるんだから」
真綿でくるまれた嘘を、砂糖菓子や蜂蜜よりも甘い嘘を平気でつく。……そうしないと世界を知りすぎている彼が自分の手で彼女の世界を壊してしまうだろうから。
だから、ほら。――彼女が安堵するこの応えが正しいんだと。
少年と少女は笑いあう。
狂ってると言われても、おかしいと言われても、本人たちは幸福を繋ぎ止めて笑いあう。
「この世界は僕ら二人ぼっちだね」
少女――ナギは少年の答えに目隠しされて、手を絡めて「うん!」と笑った。
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ナギ:バシャーモ♀
コトくん:ハコちゃん宅ラグラージ♂
手を絡めて、繋ぎ止めて。
離さないよ。
二人がずっと一緒にいられるように、ね。
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