12.3.19 小さな未来の大行進
シキが言っていた、この世界はちっちゃいんだって。
わたしにはそういうことはあんましわかんなくって、とりあえず世界、っていうのはここのことを言ってるのかなあなんて思った。
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「ナンバー508、定期診察を行います。いつもの場所に来て下さい」
「はあい!」
ピッ、と手をあげて助手さんにへんじ。『しんさつ』は元気ですかーとか、変わったことはないですかーとかをきかれるの。わたしは今までつらい、だとかしんどい、だとかのものにはなったことがないから、毎日おんなじこたえなんだけどね。
「――異常ありません、お疲れ様でした」
「おつかれさまーっ」
これも毎日の会話のひとつ、そしてしんさつが終わったら基本的に自由行動だから、わたしはしんさつの後の時間が楽しみで仕方がない。
(図書室にいるかな)
わたしは早足でそこへ向かう、あわてて走ると転んじゃうことはずいぶん前にじっしょーずみだから、しないのだ。えっへん。
そうこうしているうちに図書室の前につく、キイ、って音をたてて『あの子』を見つける。
そろ、そろ、と音を立てないように近付いて、
「だーれだ!」
「……ナギ、でしょ」
「えっ、なんでわかったの?!」
「そういうことをするのはナギくらいだからね」
わたしのたくらみは失敗。やれやれとあきれているのは、水色をした×××。
「おとといもやられたんだから、やられたとしたら誰でもわかるよ。わからないとしたら……ナギくらいじゃないかなあ」
「それってほめてるの?」
「自分で考えてご覧」
×××は持ってる本を読みかえした、かたにあごをおいて本をのぞいてみたけれど……かなしいことにちんぷんかんぷんなのである。
「ねえ、ねえーひまだよーう」
「ボクはそこまでひまじゃないかなぁ」
「わたしはひまだよ〜、ね、ねね、あそぼう?シキも呼んで!」
「えー……シキぃ……?」
とっても嫌そうな顔をしてるからとりあえずシキは呼ばないでおこう、って今思った。シキ、ごめんね。
じゃあどうすればいいの〜、ってわたしはごろごろと転がる。じべたはじゅうたんがしいてあるから、ふわふわのもこもこで転がりまわっても問題なしなのである。
×××をちろっと見ると、ぱたん!と本をとじてわたしのところに歩いてきた。
転がるのをやめたわたしに、しゃがんで目をあわせる。黄色がかったオレンジの目がじい、とみつめてくる。
「いくよ」
「え」
「遊ぶんじゃないの?」
「え、え」
「遊ばないの?」
「あ、あそぶ!」
「じゃあいこう、ナギ」
はい、とさしのべられた手がどうしようもなくうれしくて、にへへ、と笑ってから手を重ねた。
あ!へんなわらい、って言うのはしつれいだと思うよ!!
「ところでさ、シキが言ってたちっちゃなせかいって何かわかる?」
「……ナギはしらなくてもいいこと、かな」
「わたしだけなかまはずれなのー!?」--------
箱庭の二人、アチャモとミズゴロウ、すきです。
(キモリの人は安定の扱い)
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