好きとは、



恋とは、の続き


『あはは!田口はかわいいね』

『え、あ…』

『…ごめんね。俺一応ノーマルだし、でも正直田口のこと気になった。だから、今週の金曜日の放課後話そ?』

真っ赤な顔を俯かせたままの田口が頷いた。

この間の昼休みに、田口の好きな人が分かった。

そして俺はもう一度話そう、と約束をした。

今日はその約束の日の金曜日。


…つまりお話する日だ。




俺はまだ何も決まっていなかった。

そう言うと聞こえが悪いかもしれないが本当に自分の気持ちがまとまらない。

というより何が“好き”なのかさえ分からなくなってきた。

確かに田口はしっかりしてそうで、俺を目の前にしたら照れるそのギャップとかがかわいくて好きだ。

だけどそれが恋愛なのかは正直微妙なところ…





待てよ、これこそ田口に聞いてもいいのかな?

なんか名案だ!

…何て1人で納得し、放課後を待つことにした。




「よーし、気をつけて帰れよ〜またなー」

担任の声でみんながざわざわしだし、帰る奴もいれば部活がある奴もいる。

そして俺は田口と話す奴。

俺は田口をちらっと見ると、何か書いているみたいだ。

…あぁ今日日直だっけか。

日直は毎回日誌を書かなければならないのだが、今日の日直が田口らしい。

「田口、ゆっくりでいいから」

先に言っといておいた方がいいかな、と思って後ろから声をかけたら田口は握っていたシャーペンを落とした。

「あ、ごめ…すぐ終わらす」

シャーペンを拾い、再び書き出した田口。

律儀だな〜ゆっくりでいいって言ったのに。




田口が書き終わった頃には、教室には俺と彼だけになった。

ちょうど話しやすくて良い。

「あのさー」

俺が話しを進めようとしたら、肩を少し揺らしこっちをまっすぐ見た。

女子に負けないぐらい透き通った綺麗な白い肌に軽く頬を赤らめている。

見惚れそうになる―――

「あ、安部…?」

話が止まったのが不思議に思ったのか、少し眉を下げてこちらを覗き込んだ。

「あ、ごめん」

何かおかしいわ、俺。

この間まで女の子かわいいとか思ってたけど、今は何も思わない。

だからといって男の子全員が良い訳じゃない。

この感情は田口限定。


「あのさ、好きってなに?」

この感情は何か分からない。
友情?それとも恋愛?

好きは好きでもたくさんのスキが存在する。

田口はさっきよりまた頬を染めたが、こちらを真っ直ぐ見て微笑み、そしてゆっくり口を開いた。








その顔と言葉には俺を射抜くのに簡単な魔法だった。





帰り道は、たまたま田口と同じ方向だったので2人で歩くことになった。

部活が終わるより早いから、誰もいなくてもう2人の世界。

さっきから黙りっぱなしの田口は多分おどおどしている。

田口が最後に言った言葉に何も返していないからだ。

でも言うことは1パターンしかないんだ。

「田口、」

俺は田口しかいない。

「…好きだ」

田口が俺の支えになる。

「付き合ってくれる?」

振られてもいい、振られてもまた君を追いかける。


また顔を赤くした。
夕日でそう見えるだけなのかな、でも田口は目をまんまるくしてこちらを見て…

「え…本当に?」

声が震えている。
緊張してるんだろうなあ。

俺も心臓が持つかどうか…振られてもいいとか思いながらやはり不安だ。

「…俺も、俺も好きです。つきあってください…」

本当に消えそうな小さな声で彼は呟いた。

でも俺は聞こえたよ?

君が俺だけに伝えたその言葉。



「ありがとう…」

ちゃんと笑えたかな。
でも大丈夫だよね。

田口も良い笑顔を見せてくれたから…












『あのさ、好きってなに?』




『頭の中ですぐ考えちゃったり想っちゃったりすることじゃないかな……世界なんかどうでもいいぐらい』





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