「明日も来ていい?」

日が沈み始めた頃、帰り際に子供達が遠慮がちにそう尋ねた。渓は当然、笑ってもちろんだと答える。嬉しそうに顔を綻ばせて、子供達は元気よく手を振って里へと帰って行った。

その背中が見えなくなるまで彼らを見送った渓は、ふうっと息を吐いてから先程まで皆と過ごした縁側に戻る。そこには忍装束の猪が当たり前のように寝転がっていた。やれやれといった様子で眉を下げて笑った渓は、散らかった食器を片付けてそのまま夕飯の支度に取り掛かった。

絹糸のような美しい黒髪を揺らしながら、縁側と台所をせっせと忙しなく動き回る小さな姿を、寝転がったままの男が微笑ましく見つめていたのだが、渓はそんなことにも気付く様子はなかった。


二十六、二人きりの夜


人の胃袋を掴む人たらし。
猪はそう結論付けて、縁側で寝転んだまま台所から漂う夕飯の匂いを堪能していた。そして今日一日の出来事を振り返る。

子供達を連れて屋敷に戻って来たのは良かったが、さすがに長の住まいということもあって怖気づいたのだろう、家の中に上がるのをどうしても子供達が嫌がった為、縁側に沿って広がる開けた場所までぐるりと回って来てもらって、そこで話をすることになった。庭と呼ぶには不恰好で手入れも行き届いていない場所だが、子供達と会話を楽しむくらいであれば十分な広さだ。

丁度鍛錬終わりのお昼時という事もあって、子供達はお腹を空かせていた。子供達も緊張と警戒が解けずにいた為、なかなか会話も盛り上がらなかった事もあり、渓が咄嗟に「何か作ろうか」と言ったのが事の始まりだったと猪は思う。

渓はみんなに握り飯を作ってやっただけなのだが、形の均一な美しい三角形に子供達が感嘆の声をあげ、絶妙な塩加減で握られたその握り飯を口に含んだ瞬間、あまりのおいしさに一斉に固まったのだ。
艶やかに輝くお米はぷちぷちと弾け、噛み応えのある少し硬めの握りの中から白干しの小梅が種を有したまま顔を覗かせる。酸味の強さが米の甘みをぐっと引き立て、わずかに振られた塩が米の甘みと梅の酸味に統一感を与えていた。風魔という一族で育った彼らにとっては、そんな普通の握り飯でも、まるで作り物のように美しいものであったことは言うまでもない。

渓にとって、あの握り飯はほんの労いのつもりだった。しかし、結果的にその握り飯が子供達の興味を引くきっかけとなったのだ。

渓のあまりにも姫らしくない行動と言動からは、悪意も欲も感じない。子供はそういう負の感情にはやけに敏感であると共に、それが感じ取れなければ簡単に心を開くものだ。例えそれが風魔の一族といえ、例外ではないのだろう。

気付けば渓は、いつ仲良くなったのかも分からないほど自然に子供達と打ち解けてしまったのだ。それは猪の予想をあっさりと超えてしまう早さだった。

子供達は、打ち解けるまでは「姫様」と畏まって呼んでいたのだが、懐いた瞬間に「渓様」と名前で呼ぶようになり、堅苦しく並べられていた丁寧な言葉もすぐに取り払われた。蛇の信者の姫君に対してのこの態度は、いくら子供とはいえ切腹ものの大無礼だ。しかし、あまりに渓達が楽しそうにするものだから、結局猪は何も言わずに目の前の微笑ましい光景を見守る事にしたのだ。


ひとしきり盛り上がった頃、すでに日は沈みかけていた。渓と子供達は夢中になって話し込んでいたせいでそんな事にすら気付いていなかったのだが、時期に白子も戻ってくるだろうと察した猪が声を掛け、ようやく解散することになったのだ。すっかり遅くなってしまったことを詫びつつ、両親が心配するであろうと思い渓も解散を促したのだが、すっかり渓に懐いてしまった子供達はまだ帰りたくはなかったようで、蛇の信者のお姫様に向かって、別れ際に「明日も来る」という約束を取り付けたのだ。

今日の出来事を思い出し、あまりにも距離の近すぎる姫様と子供達との関係に猪は小さく苦笑した。渓を良く思っていない風魔の一部に知れたら、小姑のように小言を言われるであろうことが目に見えていたからだ。不満を白子に飛び火させないよう側近である自分が収めてやらないと、不満が悪意に変わって無力な渓にまで被害が及ぶ可能性がある。面倒事は増えるが、渓を任された以上それも側近の仕事だ。やれやれ、と猪は感じながらも、これからが楽しみで仕方がなかった。


本来ならば、風魔として育ってきた子供達が渓と接するうちに芽生えた感情も、疑うこともなく曝け出す無邪気な笑顔も、風魔という一族には必要のない感情だ。それは猪も分かっていた。ただ、風魔として生まれ育ってきた猪自身が、今までもこれからも手にする事の出来ない普遍的な幸せを、まだ数多の未来へ進むことの出来る子供達にはほんの少しでも感じさせてやりたいと思う。

移り行く時代の中に、もう大蛇はいない。
約束されない未来で、風魔が風魔として生きられる時代がどこまで続いていくのかなど、猪には分からない。出来ることなら永遠に風魔があればいいが、もしも風魔がなくなる時代が来るのなら、せめて未来ある子供達には平和な時代を笑って生きて欲しい。それは風魔の一員としてではなく、猪の個人的な願いだ。

だからこそ、軽々と口に出来るものではない。なぜなら猪は、風魔の長の側近である自分の立場をよく理解していたからだ。一個人の感情だからと容易く言葉にする事は、風魔を守るべき地位の者がするべきではない。

けれど、十一年前のあの日に消えた彼女の笑顔を思い出す度、争いのない平和な時代を未来ある若者達には歩んで欲しいと、そう願わずにはいられない。叶えられなかった彼女との夢を、若き命に馳せずにはいられない。あまりにも身勝手な願いだと猪は思う。

ただ、あの日夢見た幸せな未来で若き命が生きられるのなら、すでに汚れきった両手など、猪はいくらでも汚せるのだろう。誰にも知られず、たった一人で。

なぜなら猪は「そういう奴」なのだから。


猪が今日の出来事を一人ぼんやりと振り返っていると、ふと空気が揺れたのを感じ取った。家主の帰宅を察して起き上がった猪は、台所で夕飯の支度をしている渓を覗き込んで声を掛けた。

「じゃ、俺は帰るよ」
「え?猪さん、夕飯食べて行かないんですか?」
「朝も昼もご馳走になったしな、今夜は遠慮しとく」
「でも、猪さんの分作っちゃいました」

渓があんまり申し訳なさげに言うものだから、猪は笑ってしまった。あくまでも猪は白子が居ない間の護衛だ。もっと極端に言ってしまえば、自分の命を守る為だけに存在するただの盾だ。だというのに、渓はいちいち当たり前のように優しい。風魔にとってはひどく不慣れなその優しさが、いつも温かくてくすぐったい。猪は穏やかに答えた。

「わざわざ作ってくれたのに悪いな。でも、今夜はちょっと里の外に出て飯食いたい気分だからさ」
「そんな理由で里の外に出て大丈夫なんですか?」
「当たり前だろ、だって俺だし」

彼が彼だから当たり前である事が果たして理由になるのかなど渓には分からないが、猪がそういうのならば大丈夫なのだろうと思うから不思議だ。渓は小さく笑う。

「だからさ、悪いんだけど、長に今日あった事話しといてくれよ」
「私が?」
「そ、いちいちいろんなこと報告すんのも面倒だし。あ、でも、あいつらをこの家に招いた事は云うなよ?」
「どうして?」
「あいつには"立場"っていうものがあるんだよ」

じゃあな、そう続けて猪は渓の答えも待たずにひらひらと手を振ると、縁側の方からさっさと立ち去ってしまった。渓は引き止める事も出来ずにしばらくぽかんとその背中を見つめていたが、少ししてから猪は気を利かせてくれたのだろうと考える。

今日は本当に、いろんな事があった。やっと少しは前に進めた事を、ちゃんと白子に話したい。それに、風魔の里に来てからというもの、二人きりのゆっくりとした時間などほとんどすごしていない。傍に居られるだけで十分幸せではあるのだが、だからといって寂しさがなかったわけではない。

猪の事だ、もしかすると、それも見越していたのだろう。だからわざとあんな言い方をしてさっさと立ち去ったという可能性も否定は出来ない。飄々としていて口数も多いくせに、いつだって猪は核心には触れない。彼自身が本当は何を思って今日は立ち去ったのか、それとも本当に気分だったのか、結局本心など分からないが、白子と二人きりで居られると思うと途端に白子に会いたくなった。

「ただいま」

そして、猪と入れ替えに玄関扉がガラガラと音を立て、馴染んだ柔らかな声が届く。白子だ。弾かれたように渓は玄関に駆け出すと、愛しい人の胸の中に飛び込んだ。

「―――おかえりなさい」

縋るようにぎゅっと腰にしがみつけば、逞しい腕がしっかりと渓の体を受け止めて包み込む。

「…どうしたんだ、急に飛びついて来て」

白子は少し驚いて、間を置いてからくすくすと笑う。低く穏やかで優しいその声は、曇神社にいたあの頃と何も変わらない。腕の中で渓が見上げれば、白子はふわりと笑って見せた。風魔の長ではない、よく見知った"金城白子"の顔。その表情に偽りがないことを、渓はちゃんと知っている。

白子は渓の前髪をくしゃりとかき上げると、一年前よりもほんの少し薄くなった額の傷に唇を落とす。指先から、唇から、余す事無く伝わる愛情に痛いほど胸が締め付けられるのに、じんわりと広がっていく幸福感で満たされる。渓は気恥ずかしそうにはにかみながら、頬をほんのり赤らめて言った。

「なんだか無性に、白子に会いたかったの」
「随分可愛い理由だな」

そう言って、白子はわずかに視線を上げて、ほんの一瞬だけ家の様子を確認してから、すぐに渓に紫の瞳を戻して柔らかく笑った。渓は白子の行動を見て不思議そうに小首を傾げたが、白子が次いで言った言葉にすぐに疑問も消えていく。

「お腹空いたな、今日の夕飯は?」
「あ、すぐに用意するね!上がって待ってて!」

黒い髪を靡かせて、白子の腕の中からするりと抜け出した渓はパタパタと台所に駆けていく。その背中を見送りながら温かい気持ちを感じて、白子は居間に上がり腰を下ろした。そしてぐるりと家の中を見渡して、珍しく猪が居ない事を改めて確認する。

いつもなら白子と渓の間に割り入っては、楽しげに感情を掻き回して飽きたら帰っていくというのに、今日は白子に顔を合わせる事無くどこかへふらふらと行ってしまった。猪の事だ、ああ見えて仕事はきちんとこなす。渓を蔑ろにしていたわけではなく、白子の気配を感じて入れ違いでどこかへ行ったのであろう事は察していたが、それでも此処に居ない理由は分からない。

猪はいつもそうだ。気まぐれな猫のようでいて、飼い犬のように忠実で、鳥のように自由なようで、雁字搦めの人形みたいだ。欲望のままに動くくせにいつも自分の事は後回しで、忍だというのに嘘はつかない。分かりやすいようで分からない、そのくせ白子の信頼だけは何があっても裏切りはしない。側近として傍に置くには申し分ない能力があり、あらゆる面において信頼もしている。

だが、そんな猪だからこそ、時々無性に疑いたくなる。

なぜなら猪の行動の基準は全て、風魔復興の為でも里の存続の為でもなく、風魔の長である白子の為だからだ。風魔の為ではなく、白子の為に生き白子の為に死ぬ事を、猪はあの日誓っている。下手に白子の為に行動を起こして、それが結果的に里の為にならないという可能性も否定は出来ない。だからこそ、疑いたくなってしまう。例え疑うべきところなど何一つなかったとしても、だ。

「お待たせ」

白子がぼんやりと思考を巡らせていると、空腹を刺激する香りと共に渓が温かい食事を持って居間にやって来た。それを見て、白子は一旦自身の考えを頭の端に追いやることにした。

今はただ、このささやかで小さな幸せを、許される限り噛み締めよう。いつか、再び失ってしまうかもしれない、ひどく尊い幸せな時間なのだから。

テキパキと並べられる食事を眺めながら、白子はじんわりと胸の奥に広がる温もりを確かめて、小さく笑った。


 ● ●


二人きりの食事を終えた後、渓が作った甘めの葛餅を食べながら二人並んで縁側で夜空を見上げる。白子は渓が楽しげに話しているのを、優しい微笑みを浮かべながら聞いていた。

今日一日の出来事を、渓は曇神社で共に過ごしてきたあの頃と変わらない愛らしい笑顔で話していた。場所は違えど、白子にとってそれはひどく心地の良い空間には違いない。子供達との距離が近付いたのが余程嬉しかったのだろう、渓は夢中になってたくさんの事を白子に聞かせた。渓なりに里に馴染もうと努力している姿は相変わらず健気だ。

「だからね、また明日もみんなに会えるの」

表情を綻ばせながら、渓はそう言って笑う。黒く丸い瞳を細めて、無邪気に笑う。それだけで白子も幸せだった。

幸せだなんて、風魔の長たる自分がそんな事を思ってはいけないとは分かっていても、渓が自分の側で笑っているだけで、こんなにも簡単に長の仮面は剥がれ落ちてゆく。残念ながら、それを不快には思えない。それだけ白子にとって、渓の存在は特別で、偉大なのだ。

あの日手放した温もりを再び手に入れてしまった時点で、もうこの想いは引き返せないのだと何度も何度も思い知る。せめて、二人きりの時くらい、特別なこの一瞬を愛したいと、白子も渓と同じ様に感じていた。

「じゃあ明日も楽しみだな」
「うん!」

明日はどんな話をしてくれるかな、と言いながら、渓は薄暗い閉ざされた空を見上げた。木々が生い茂って、月の光さえ届かない風魔の里。遮られた空は時々根拠のない不安を誘う事もあるが、それでも渓は確かに幸せだった。視線を下げて隣を見れば、何よりも美しい月のような人が、誰よりも愛おしい人が、ちゃんと此処に居る。

渓は白く細い指でそっと白子の頬に触れた。
夢じゃない、それでも、確かめずにはいられない。

白子は頬を滑る温もりに少しだけ目を細めて、それから小さく笑って渓を見つめ返した。

「どうしたの」
「月みたいで綺麗だなって思って」
「まだそんな風に思ってたのか」
「ずっと思ってるよ。それから―――」

くすくすと笑ってから、渓は少しだけ照れたように微笑んで言った。


「やっぱり好きだなあって、思ったの」


その言葉を聞いて、白子は目を丸くした。小さく柔らかい唇から零れ落ちたその言葉が、じんわりと胸の奥に広がっていく。

思い返せば、渓の方からそういう言葉聞いたのは、初めて同じ布団で眠ったあの夜以来だ。それに、渓は眠りに落ちる寸前だったので、きっと記憶してはいないだろう。意識がはっきりとしている時にこうも真っ直ぐに想いを伝えられた事はあまりなかったように思えた。

二人は向き合っている想いが同じものである事も分かっているし、抱えている気持ちをお互いがちゃんと分かり合っている事も知っている。いちいち気持ちを口にせずとも通じ合えている。

しかしそれは、根拠のない自信だ。時々消えてしまうのではないかと無性に怖くなる。ここに寄り添っている意味を探してしまう。言葉より大切な物をいくら持ち寄っても、言葉だけを求めてしまう瞬間だってある。

だからこそ、不意に囁かれる愛の言葉は、まるで爆撃だ。

白子は自分の頬にあった渓の白い手を握ると、その手を力強く引き寄せた。突然の事に、当然渓の体は白子の方へと倒れこむ。

「わ…」

渓が思わず驚きの声を上げたのだが、それは言葉ごとあっさりと白子に飲み込まれた。白子は渓の細い腰にしっかりと腕を回して、いつになく深く唇を奪う。熱く求めるような口付けに恥ずかしさと息苦しさを感じながらも、あまりに急な事に何も考えられなかった渓は、懸命にそれに答えた。白子の忍装束をぎゅっと力強く握り締め、時々息を零しながら、感じた事の無い熱量にくらくらとする。

どのくらいそうしていたのか分からない口付けが終わり、ようやく白子が唇を離すと、渓は大きな瞳を潤ませて顔を赤くしながら深く息を吸い込んでいた。濡れた唇がやけに色っぽくて、白子の欲求を刺激する。その湧き上がる欲求をぐっと押し殺しながら、白子は渓の唇に軽く口付けた。ちゅっと小さく音がなり、渓はびくっと肩を震わせる。そんな渓の顔を覗き込んで、白子は遠慮がちに尋ねた。

「…嫌だった?」

まともに白子の顔が見れないらしい渓は、目を逸らしながらも首を横に振った。

「本当に?」

その問いにも、渓は首を縦に振った。焦り過ぎたかな、と思いながら白子は苦笑すると、腕の中に渓の小さな体を閉じ込めてそっと頭を撫でた。黒く柔らかい髪が指の隙間をするすると滑り落ちて行く。

「ごめんな、渓が可愛くてつい。もうしないよ」

安心させるつもりで優しくそう言った白子だったが、渓の腕の中で首を横に振った。きょとんとする白子を見上げて、渓は顔を真っ赤にしながらどうにか言葉を紡ぎ出す。

「もう、してくれない、のは、寂しい、です」

段々語尾は小さくなって、最後には掠れたような声が漏れただけだったが、白子にはちゃんと届いていた。白子は思わず渓を強く抱き締めると、細い肩に顔を埋めて長い息を吐いた。

「…本当にさ、俺の事どうしたいの」
「え?し、白子?」

白子は女を抱きたいという欲が深い方ではないし、どちらかというと今までのそれは大蛇の事に関しての情報を得る為の作業の一つに過ぎなかったのだが、相手が渓であるというだけでその欲求が肥大する。

まだ真っ白な彼女を自分だけが汚しているという支配感と、それでいいのかという罪悪感に挟まれながら、どうしたって勝つのは前者だ。理性が今尚持ちこたえている事を称えたい気持ちになりながら、白子は渓の肩に頭を預けたまま、少しだけ顔を渓の方に向ける。まだ赤い顔の渓がおどおどと白子の顔を覗き込んでいて、その子供っぽさがまた愛おしい。

ふっと小さく笑いながら、白子は低く甘い声で言った。

「じゃあもう一回する?」
「え、え!?」
「してもいい?」
「う、うん…」

その答えを聞いて、白子は頭を上げる。俯く渓の顎に指を添えて、くいっとその顔を持ち上げながら、自身の顔をゆっくりと近付けた。

そして唇が触れ合う間際、やけに色気のある悪戯な笑みを浮かべながら、白子は低い声で囁いた。


「好きだよ渓、愛してる」


渓が驚く間もなく、白子は唇に柔らかく噛み付いた。
何度も交わされる二人分の熱は、閉ざされた夜の闇にそっと溶けていった。


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