「よくやったぱっつぁん、もう十分だ。あとは俺達に任せな」

欄干を伝ってまで橋を通り前に進もうとする新八に声をかけ、銀時とタカチン(雪成)は木刀を構えた。

「いくぜ、タカチン」
「任せな、銀時」

「……え……誰それ」

同時に橋の一部分に強力な一撃を加え、タカチン(雪成)の存在を知らぬ新八の極々当たり前の一言の直後に振動が伝わりきった橋の中央部分がドズンと派手に音を立てて崩れ落ちる。

ぎゃあああああああ

[寺門通親衛隊、味方をエサに敵チーム殲滅ぅぅ!!]

「ヘイ!!」
「へーい」

ハイタッチを交す銀時とタカチン(雪成)の姿がカメラマンによって捉えられ、クローズアップされた。

[ていうか…………誰?]



「……」

乗っていたタクシーに設置された小型テレビに映る現在生放送中の番組に映ったソレを偶然認識した見廻組副長今井信女は、無言で刀を抜いた。

「ファッ?!お、お客さん!?何の真似ですか!?」
「今映った男の元に行って」
「え?でもお客さんが行くのはゴルフ場って……それに建物じゃなくて人だとちょっと」
「早くしなきゃあなたの○○○をブチ抜く」
「畏まりましたお客様ァァァァァ!!」



「この木刀で頭カチ割られたくなきゃ消え失せろ小僧共ぉ!!」

トッシーこと土方から訓練を受けた事によって絶妙な陣形を組み、お通親衛隊を妨害をする通選組のオタクだったが、タカチン(雪成)が発する怒号と殺気によって蜘蛛の子を散らすように逃げていく。オールバックとサングラスの存在によってヤクザにも見える。タカチン(雪成)の変化を誤魔化す為に頭をモヒカンにされた山崎はその様子を見て頬が引き攣った。

「え、演技凄ェ……」
「アイツ高校時代は演劇部だったからな、そりゃそうだろう」
「てか本当に演技ですよね!?元ヤンだったりしませんよね?!!」
「元ヤン?なにそれ、元々の姿がヤン・ウェンリーの略?おいおいジミー、アイツが魔術師なんてタマかよ」

タカチン(雪成)によって道を遮る敵はいなくなり、あっという間にゴールに辿り着いた。

[あれは……あのハッピは……!!寺門通親衛隊の……]
「誰だァァァァァァ!!!」

ゴールテープを切ったタカチン(雪成)は再び銀時とハイタッチを行い、肩を組んだ。

「よっしゃー本選勝ち残りイェ〜」
「いえーい」

[寺門通親衛隊、ビリケツから大逆転!!なんと2位でゴォォォォル!!]

「ちょっと待てェェェェェ!!誰だそれェェェ!!どっから連れてきたんだ!!なんで知らねー奴が堂々とゴールテープ切ってんだ!!こんな奴てめーらチームにいなかっただろーが!!」
「ああ、いいいいもうそういうのは。そういうリアクションは前の頁で十分見たから」
「なんだァァァ!!その態度は、替え玉しこんどいてどんだけふてぶてしい態度とってんだ!!」
「替え玉?オイ証拠もねーのに妙な言いがかりはよせ」
「証拠ってまるまるコイツが証拠だろーが、現行犯逮捕だろーが!!」

土方が至極当然のツッコミを入れても意に介さない銀時は何言ってんだコイツという目で言い逃れようとする。

(あんま声出すなよ雪成、別人だってバレっかもしんねーからな)
(もうバレてますけど)
(バッカ、雪成だってバレるってことだよ。ドルオタだと思われたら一生モンの恥になんだろーが)
(だったら最初から巻き込まないでください)

土方と言い合いをしている銀時と目線で意思疎通をし、タカチン(雪成)は頬を掻く。

「あっここでいいです。大丈夫大丈夫、バレやしやせんよ。あっ領収書もお願いします。土方十四郎で」

「アレ〜?どっかで見た事あるなアイツ。アレって……」

少し離れた場所でタクシーから降りる沖田の姿をバッチリと目撃した土方は咥えていたタバコを落とし、銀時の口を手で塞いだ。

「そっ……そういやいたような気がする!!よっ……よく考えたらいたわ、お前らのチームにグラサン一人!!あ……あの名前なんだっけ」
「タカチン」
「そォォタカチン!!いたわタカチン!!妙な言いがかりつけて悪かったな!!山崎もすっかり立派になっちゃって〜!!よし、そうと決まったら早く本選いこう!!あまりよそ見をせず本選いこう!!」

途端に態度を反転させた土方に憐れみの目を向けながら、タカチン(雪成)は再び携帯を弄り始める。すると新着メールが届いており、宛先を確認すると今井信女と記されていた。

(……あー、なんか嫌な予感が)

正直に言えば開けたくなかったが、それはそれで別の面倒事に発展する予感もあった為メールを開いた。
"何故参加してるの"
彼女に完璧にバレている事を察し重い溜息を吐いた。カメラは回っているとはいえ、派手に動いているとはいえ、彼女がテレビを見ている事は予想外だった上にそう長くは映っていない筈の変装した自分の姿に気付くとは予想外だ。
"成り行きです"
彼女からのメールと同じく短く返事をすると、数分と経たず返信が来る。
"今何処にいるの"
上司からのメールにもこれくらいの速さで返信してあげればいいのにと思いながらまた返事を送る。
"大江戸テレビです"
返事は来なかった。それが余計に不安を擽る。

「オイッタカチン!そこで何してんだ、来い!テレビ局の中で本選するんだとよ」
「ん?おう、悪いな」
「誰アルかコイツ」
「タカチンだよ見て分かれ神楽」
「タカチンもっとブッサイクで出っ歯で前髪が突き出てたヨ、コイツタカチンじゃないネ」
「いや、俺タカチンだから。めっちゃタカチンだから。どことなくタカチンっぽいだろ?」
「全然」

タクシーではなく警察の車で迷子として此処まで連れてこられた神楽はタカチン(雪成)追加の経緯を把握していなかった為、ジロジロとタカチン(雪成)をねめつけた。

「神楽ちゃん、私ですよ私」
「んん?!まさか先せ」
「はいストップー、コイツはタカチンですぅ。大声ださないでねー神楽ちゅわん」

神楽の耳元で囁きながらサングラスを持ち上げて赤い目を晒し、雪成としてニッコリと笑ったタカチン(雪成)の姿に直ぐピンときた神楽は大声を出しかけるが寸でのところで銀時が顎を掴み発言阻止に成功する。

「外をぷらついてたら捕まっちゃいましてね。精一杯頑張るのでよろしくおねがいします」
「キャッホーイ!よろしくアル先生ゲボォッ」
「だァからタカチンだっつってんだろバ神楽!」
「おいおい銀時、あんま虐めてやんなよ。可哀想だろ」
「るっせ!」

サングラスを戻しタカチン(雪成)として振る舞いながら通親衛隊はテレビ局に入って行った。



本選まで進んだチームがたったの千分の二だったということで通親衛隊と通選組の二チームによる突然の決勝戦の三本勝負が行われることになり、三本勝負の第一試合目・クイズの撮影セットに移動しそれぞれが位置につく。

[ああーっとこれは何という事でしょう!!開始早々出題前に親衛隊キャプテン、志村氏落下!!]

「新八ィィィ何やってんだ!!」

(俺はタカチン俺はタカチン俺はタカチン)

新八という名の眼鏡が滑って水に落ちるが周囲の全員がそれを眼鏡という名の新八として扱っている光景に、タカチンという名の雪成は落ちないように端を握っている手の力を強めて突っ込みを控えた。変に真面目だった。

幸い本体の新八はマラソンを完走しこの場に到着したが、遅れたペナルティとしてクイズ勝負に参加出来ず失格という判決を下されてしまう。圧倒的に親衛隊チームが不利の筈だったが、第一問を最初に解答した土方が語尾にお通語を付け忘れるという失態を犯し不正解となって、罰として角度がほぼ90度まで移動し落下し失格になった為に条件はイーブンとなる。

「オイ、今のちゃんと見たな。あのバカが身体張って俺らにお通語付けろってご親切に教えてくれたんだ。これから答える時は絶対ェ語尾にお通語だゾンビ伯爵!」
「うぃーっ雀百まで踊り忘れず」
「了解ネ!……クロマンサー!」
(不安しかねェェェェ!!お通ちゃんの事知ってるの誰一人としていねーだろ!!)

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