nearly equal

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出逢いほど危険と発見に満ち溢れるイベントはない

アメストリス学園が設けている交換留学生制度というのは、姉妹校として提携している各国の学園が数名の生徒を交換し、主に文化交流を目的としている。留学が行われる期間は学園が夏休みの間だけなので、留学生として学園に来ても学園で授業を受けるという事は特に無い。だから思いっきりフリーダム、異国でバカンス、素敵な出会いを求めても文句を言われる事は無い。


アメストリスに到着した二日後、リンはとある住宅街に出没した。

「三丁目の壁が白で屋根が青い二階建てのおうち〜…あ、ここかナ」

表札を確認して、呼び鈴を鳴らす。暫く待っても応答が無かったので連打してみる。それでも反応が無いので、某生物を踏んじゃった軽快なリズムで呼び鈴を鳴らした。すると二階の窓が乱暴に開かれ、そこから罵声が飛んできた。

「ぃやっかましいぃぃぃっ!どこの糞ガキだぁぁっ!」
「あ、スイマセーン、来客でース」

窓から顔を出したのは寝乱れてボサボサになった金髪を振り乱した少年。
昼過ぎだというのにまだ寝ていたらしい様子で、外交用の笑いを顔に貼り付けたリンを射殺す勢いで睨み、小さな声で何やら呟いているのは表情から察すると眠りを妨げた来客に向けて呪詛を放っているようだった。

「うち、いま親居ないんで」
「訪問販売とかじゃないですヨ、ちょっと貴方に用事があるんだけド」
「帰ってください」
「せめて話だけでモ」
「帰れ」

そのままぴしゃりと窓を閉められた。しかし目当ての少年に出会えたのにおめおめ帰るのは勿体無くて、リンは再度呼び鈴を連打した。折角如何わしい文句を覚えてきたのに、まだ一言も発していない。

「お願いだから出てきてヨー」

ピンポーン。ピンポーンピンポーンピンポーン。
ピンピポピンポン、ピンポーン。

「だから喧しいわっ!消えろ!」
「あ、出てきタ」

怒声を上げながら今度は玄関から顔を覗かせた少年に、リンは満面の笑みを向けた。
おそらく寝巻きにしているTシャツにハーフパンツ姿のまま素足にサンダルをつっかけて、頭をがりがりと掻き毟りながら胡散臭げにリンを睨んでいる。

「消えないと警察呼ぶぞ」
「怪しい者じゃないんでス。ほら、交換留学生!話聞いてなイ?」
「…交換留学生?」
「そうそう、メイチャンの知り合イ!」
「あー…あの豆女の…」

確かに幼馴染みのメイチャンは発育不良気味で幼女体型だった。しかし少年も人の事を言えるほど優良な体躯はしていない気がする。そう考えたのが顔に出ていたのか、少年は眉間に深い皺を刻んで更に凶悪な目付きでリンを睨んできた。

「てめぇ、今なに考えた…?」
「何にモ。ところで、玄関先で立ち話もなんだから、良かったら一緒に朝ご飯でもどウ?」

そう言うと、絶妙なタイミングで少年の腹の虫が盛大に鳴いた。




着替えを済ませた少年に連れられて入ったファーストフードで、リンはハンバーガーを山盛り注文して連れを盛大に呆れさせた。

「一人で全部食うの?」
「うン、全部食うヨ?」

元から人の三倍は食べる大食漢なので、大体どこに行っても驚かれるので気にしない。少年の方はハンバーガーひとつにドリンクM。育ち盛りでその量で足りるのかと逆に心配になった。

「――で、メイチャンの友達ってアンタ?」
「正確には幼馴染みってヤツだネ。リン・ヤオでス、ハジメマシテ」
「あー…オレはエドワード、エドワード・エルリック」

行儀悪くストローを噛みながら話すエドワードを見て、リンは小さく笑った。噛み癖は口寂しい証拠。無性にその唇に齧り付きたくなった。

「アンタと交換で、オレの弟がシンに行ってんの。前にメイチャンがうちにホームステイしたから、今度は弟がホームステイ」
「メイチャンから聞いタ。オレはホームステイは希望しなかったからホテル暮らしだけド、これから何かと世話になル、ヨロシク」
「……世話?」

露骨に嫌な顔をしたエドワードに、リンはハンバーガーを頬張りながら首を傾げて見せた。

「まさかエドワード、異国の地にひとり訪れた留学生を放置するつもりなノ?言葉も文化も違う国で頼れる人はエドワードしかいない俺ヲ」
「う……」
「お兄さんが面倒見てくれるって弟さんも言ってたのニ、この国の人は嘘吐きなノ?冷血漢なの?ひとでなしなノ?」
「そこまで言うか」

リンが悲嘆に暮れてさめざめ泣き出すフリをして食べ終えたハンバーガーの包み紙を丸めて放り出すと、エドワードは慌てて席を立ってリンが投げ捨てたゴミを拾いに行く。なるほど面倒見は良さそうだ。

「ああ、今日からどうやって暮らしていけばいいんダ…知らない土地でひとりきりなんテ、俺もう孤独すぎて死にそウ。でも留学期間中は余程の理由がないと帰国できないシ…そうダ、学園の担当者に相談してみよウ。頼りにしていたエドワードさんがめんどくさいからって理由で俺を見捨てたっテ」
「待て待て待て、誰も世話しないなんて言ってねぇだろ」
「じゃあヨロシク、エドワード」

席に戻ってきたエドワードの右手を捕まえてぎゅっと握手。男だから決して柔らかではないが、白く肌目細やかな感触は悪くない、合格。

「勿論、御礼もするシ」
「…御礼?」

御礼と聴いてエドワードの目付きが変わった。何とも訝しげな表情だったが、それもまたよくある反応だったのでリンは気にしなかった。

「…ところでお前、留学の目的は?」
「ん?語学留学だヨ?」

若干イントネーションに問題があるが明確なアメストリス語でそう答えると、エドワードは今度こそ胡散臭い物を見るように、リンに露骨に不信感丸出しの眼差しを向けた。


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