nearly equal

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出逢うために必要な勉強

東洋文化より西洋文化に長く浸かっているとは言え、初めて訪れる文化圏ではその国の母国語に慣れるまで、的確な意思疎通が出来ない不便な生活を強いられるのは毎度の事だった。

留学期間中リンはホテルに滞在する事になるのだが、国家予算と云う大きな財布があるから毎回一流ホテルを惜しげもなく使うので、空港からタクシーに乗り込んで一言ホテルの名前を告げればリンの片言のアメストリス語でも迷う事無く当分の住まいに辿り着く事が出来た。

ホテルマンには外国語が堪能な者が多いから、ホテルでの生活には不便はない。しかし留学という名目で国外に脱出しているので、リンはホテルに篭っているばかりではいられない。第一飽きる。
幸い頭の方はそれなりに優秀だったから、外国語辞書片手に一週間も学習すれば一通りは話せるようになる自信はあった。

しかし母の元に帰っている間の時間をその学習に充てるつもりが今回は急な暗殺者の訪問で出発が一週間早まった為、挨拶もろくに覚えて来られなかった。

「えーと、アナタが好きでス…結婚は無理だけド、愛人になってくださイ、不自由な生活はさせませン…っと」

最上階のスイートルームで、外国語辞書を片手に身も蓋も無い口説き文句ばかり学習しているのには理由があった。

今回の留学先には、母の友人の娘でリンの幼馴染みでもある少女の文通友達がいる。それだけならリンには何の関わりも無いのだが、何かの時に、その幼馴染みがこの国に留学した時の写真を見せてもらった事がある。リンはその写真を見るなり友人に写真の焼き増しを頼んでいた。その写真には運命が写っていたからだ。

写真に写っていたのは幼馴染みとその文通友達、そして文通友達の兄。
金色の髪、金色の瞳、白く透き通るような肌に血色の良い唇。吊り上った大きな瞳は野性的で、不敵に歪んだ唇は今にも悪態を吐きそう。幼馴染みの友人の兄という人は、総合すると美人なのにいかにも性格の悪そうな顔立ちの少年。それがリンの運命――一目惚れしてしまうほど、運命的に好みの容姿だった。
今回の留学は、その少年が在学する学校で交換留学生制度を実施していると聞きつけて無理やり捩じ込んだ。留学に託けて一目惚れした相手を口説きに来たのだ。胡散臭い言葉ばかり重点的に学習しているのはその為だった。

「キミの望む物は何でもあげル、俺の物になってくレ」

勿論、見てくれだけ好みの相手に本心から求愛などはしない。リンが望む関係はこの国に留学している間だけの愛人契約。揉め事は嫌いなので、後腐れないように留学が終わった後も相手が望めばリンは出来る限りの援助をするつもり。リンは第二皇子と云う立場上、自由に出来る資産が膨大にあったから、一時の遊びにでもそれ相応の対価を払うことが出来る。以前の留学先でも同じように複数の人間と愛人契約をしていたが、リンはその全員に望む以上の報酬を与えてきたし、相手もリンの立場や資産が目的だっただろうから、納得の上だった。

幼馴染みに焼き増してもらった写真はしおり代わりに外国語辞書に挟んである。それに目をやりながら、リンは小さく喉を震わせた。

「ニヶ月、精々俺を楽しませてくれよな」



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