nearly equal

(http://nanos.jp/nearlyequa1/)

newmain1/2memo


【OSAL】6



「…わかんねえ…オレ、本当にわかんねえんだよ…」
『…うん…僕も、解んないんだよねぇ…』

どれくらい黙り込んでいただろう。長い沈黙をエドワードが重々しい声で破ると、アルもまた乾いた声を上げた。

「…PCは、壊れちまったらまた買えばいいし」
『…うん』
「データはお前がバックアップ取ってくれてるから、問題ねーし…」
『うん』

ぽつぽつと言葉を続けるエドワードに、アルは静かに相槌を打って先を促す。エドワードは先程から項垂れっぱなしで、モニターに映るアルの姿を見る事も出来なくなっていた。

そうなのだ。安いPCなんていくらでも見つかる。データだって、もし吹き飛んでもまた打ち込めばいい。それなのに何がこんなに怖いのか。それほど考えなくても、エドワードにはもう解ってしまっていた。エドワードのPCにもデータにも代えられない物はひとつしかないのだから――

段々と熱くなってくる頬と目頭に力を込めて堪えつつ、エドワードは声を絞り出した。

「お前がいなくなっちまうのは、嫌だ」






『ありがとう、エド――僕はもう充分、しあわせだ』








笑うとも嘆くともつかない声で、アルがそう呟いた。驚いてエドワードが顔を上げると、これ以上ないくらい優しい顔で笑っているアルフォンスが、一瞬だけ――そして、すぐにモニターから消えた。


「……アル…?」

エドワードが目を瞬かせているうちに、モニターの電源が落ちる。

「アル!」

慌てたエドワードは思わずPCを抱え上げたが、フェードアウトして真っ暗になったモニターにはもうアルの姿はどこにもなくて、そこに映るのはエドワードの情けない顔だけだった。

どうしていいかも分からずPCを見つめていると、電源の落ちたPCから起動音が上がる。立ち上がりの短い時間が、いつもの何倍も長く感じられた。じりじりしながらモニターを見つめ、ようやく起動したPCのウィンドウ――そこに映ったのは、随分久し振りに目にする窓のイラストだった。








――それきり、アルがエドワードのPCに現れる事は、なくなってしまった。


prev next

←text top































人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -