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【OSAL】5


『僕は、アルフォンス・エルリックが意図せず作ったプログラミングの集合体だよ』

アルの口から語られる自身の生い立ちを、エドワードはまるでSFかファンタジーのように聞いていた。――いや、確かにコイツは存在自体がSFだけど…。

結局のところ、アルというOSはOSでもなくて、アルフォンスが作ったプログラムの一部が勝手に足りない部分を補充して自己完成したプログラム――という事になるのだろうか。プログラムがすべて勝手にやっている事だから、アルフォンスもその存在を認知していなかった。
機械的な事で考えると訳がわからなくなりそうだが、化学的に考えれば、物質が観測者の意識しない所で勝手に他の物質と化学反応を起こして変質するという現象は無い事ではない。それぐらい、物質間の影響力というのは複雑で繊細だ。

「で、お前はバグなの?」

アルが鉱石や化合物だったなら何らかの化学反応で済んだかもしれないが、生憎アルはエドワードの専門外の機械なのだ。結局エドワードが一番気にしているところは「アルはバグか否か」なのだが、アルの生い立ちの説明もエドワードの物質的検証もその答えにはその答えにはなっていない気がする。

『僕がバグだったら、エドは嫌なの?』

逆に聞き返されて、エドワードはぐっと詰まった。

「だって、バグはそのままにしとくとヤバイんだろ?PCが暴走したり、データ吹き飛んだりするって聞いたこと、あるし…」

友人の中にはバグが原因でPCがお陀仏になってしまったと言う奴もいる。そんな話を聞いているから、バグはPCの悪性腫瘍――みたいなイメージがあった。
戦々恐々のエドワードに、PCの中のアルは穏やかな表情で優しく話し続ける。

『僕が来てから、PCの調子が悪くなった?』
「…いや……どっちかっていうと、逆に調子、いい…」
『データはバックアップを取るように、っていつも言ってるよね』
「うん……」
『エドはネットでも何でも不用意にクリックするから、いつも注意してるよね?』
「………」

あれ? とエドワードは首を傾げた。これではまるでPCを不用意に危険に晒しているのはエドワードの方で、アルはエドワードの暴挙からPCを守ってるみたいじゃないか。
確かに、思い返せば思い返すほど、アルが来てからはPCの状態は良くなっていた。エドワードが無関心だったセキュリティもアルがいつの間にかやってくれているし、定期的にデータのバックアップも取るようになった。エドワードがほったらかしてごちゃごちゃと乱雑なフォルダもアルが整理してくれているし――悪性腫瘍どころか母親のようにあれこれ世話を焼いてくれている。

そうか、お前、バグじゃなかったんだな――エドワードが思わず笑顔になったのを、アルは真剣な表情で遮った。

『でも、僕は確かにバグだよ。今は正常でも、エドのPCの他のシステムに後々どんな影響が出るかはわからない』

そう言われ、エドワードは固まる。
アルもそれ以上は口を開かず、ふたりの間に重苦しい沈黙が流れた。


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