華は揚羽蝶に溶かされ2 「ちょっと試したい事があるんだけど、付き合ってくれる?」 撮影に使った機材を片付けて荷物を纏めていると、アルフォンスから声をかけられた。 「この後、何か予定ある?」 「や、なんもねぇけど」 「じゃあ、いいよね」 「…いいけど…」 予定がないのは本当だし断る理由もない。それに、アルフォンスの言う「試したい事」と云うのはおそらく新しい緊縛の事だろう。という事は…つまりはそういう事をするって事で…。 みるみる赤くなっていくエドワードに、アルフォンスは柔らかく微笑んでみせた。 「シャワー浴びてくる?それとも一緒に入ろうか」 「ひ、ひとりでいいっ」 逃げるように風呂に走っていくエドワードの後ろ姿を見送ってアルフォンスは小さく笑っていた。 頭のてっぺんから足の爪先まで念入りに洗い上げ、バスタオルを腰に巻いて戻ってきたエドワードは、スタジオに入るなりアルフォンスにローションをぶっかけられた。 「ぶわっ…!」 「わぁ、ピンクローションがいい感じにエロいね!」 「縛るんじゃなかったのかよ!」 「誰も縛るとは言ってないよ」 ヌルヌルのねとねとにされて、ついでに緊縛プレイを期待していたのを自ら暴露して、エドワードはまた顔を真っ赤に染めた。 「ね、触ってもいい?」 「……」 嫌だと言っても触るくせに、いちいち確認してくるのも気に入らない。 沈黙を肯定と取ったのか、アルフォンスの指先がエドワードの胸元を掠めた。期待して勝手に色付いて硬くなり始めていた胸の飾りを擽られ、痺れに似た感覚が背筋を駆け上がる。 「んっ」 「可愛いね。艶々して美味しそうだ」 「ぁあっ…!」 エドワードの胸で震えていた赤い実は、言いながら胸元に唇を寄せてきたアルフォンスに食べられてしまった。 震えが止まらなくなって、屈み込んだアルフォンスの肩に縋りつく。 「ローション、付いてるのに…」 「口に入れても大丈夫なやつだから平気だよ。プルプルして、美味しい…」 「やぁ…っ」 こうなるとエドワードの口から出るのは女の子のような甘ったるい声だけだ。正気に戻ると恥ずかしくて死にそうな思いをする事になるのだが、出そうと思って出している声ではないからどうやっても止められない。 痺れは背筋から全身にまで広がり、エドワードの膝がかくりと抜けた。 倒れ込みそうになる体をアルフォンスに支えられ、スタジオのフローリングのスペースに置かれたソファまで運ばれる。 火照った体に合皮の冷たさが心地良かったが、それ位では体の内側をチロチロと焼いていくような熱は冷めない。 「…一体、何する気だよ…」 エドワードが若干の――いや、過大な期待を込めて見上げると、アルフォンスはいつの間にかエドワードのポラロイドカメラを構えている。 「今日はね、僕がエドを撮ろうと思って」 「…撮るって…?」 「いつもエドが撮ってる側でしょ?だからたまには撮られる方に回ってみるのも新鮮でいいよ、きっと」 「撮るって、オレの?何を?」 紅潮していたエドワードの頬から一気に熱が逃げた。アルフォンスに攻められてあはんうふんな期待が次元の歪みに吹き飛んで消えていく。 まさか、と青くなるエドワードと対象的に、アルフォンスは頬を染めて楽しそうに微笑んだ。 「ハメ撮りとか、楽しそうじゃない?」 「……」 …うふふとか笑ってるけど絶対やだ有り得ないつうか勘弁!とエドワードは心の中で絶叫したが、アルフォンスには全く伝わらなかったようだ。 「あああアルフォンスさんオレそういうマニアックプレイはちょっと」 「普段してる事の方が絶対マニアックだと思うけど」 「ふ、普段のじゃだ、駄目なのか」 「駄目じゃないけど、今日は新しい事にチャレンジしてみたい」 アルフォンスに強く出られると逆らえなくなるのは、エドワードがMであるが故だろうか。 「可愛くお強請りして、エドワード」 こうなるとエドワードは頷くしかない。新しいプレイにも少しだけ興味があった。 アルフォンスに促されて、表面上は渋々と、しかしその内心はやはり期待に胸を膨らませているのだ。 少しだけ赤くなって、上目使いでアルフォンスを見上げながらエドワードがお強請りの言葉を口にする。以前は恥ずかしくて顔を上げる事も出来なかったが、最近漸く出来るようになったお強請りの仕方。 「お願い、アル……」 オレをいっぱい虐めてください。 ←text top |